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アルミ合金鋳物 AC4C・AC7A(JIS H 5202)の発注——質別と鋳造法、試験片の強度、補修

この記事のポイント(結論先出し)
AC4C・AC7A は JIS H 5202(アルミニウム合金鋳物)の材料記号で、砂型鋳物にも金型鋳物にも使える[1]。発注書には記号だけでなく質別(F・T5・T6 など)と鋳造法(砂型か金型か)を書く。規格の引張強さは、同じ記号・同じ質別でも金型か砂型かで違い、AC4C の T6 なら金型 230 N/mm² 以上、砂型 210 N/mm² 以上である[1]。しかもこの値は、特に指定のない限り鋳物と一緒に別に鋳込んだ試験片の値で、製品から切り出した試験片の値ではない[1]。AC7A は規格の表に F(製造のまま)しかない[1]。埋金・溶接・ろう付けによる補修は、注文者の承認なしにはできない[1]。
この記事は、ポンプやバルブのハウジング、機械のカバーやブラケットなど、工業用のアルミ合金鋳物を発注するときの話を扱う。アルミ合金のダイカスト(ADC12 など)は別の規格 JIS H 5302 で、JIS H 5202 の対象から外れている[1]。ダイカストの材料はADC12(JIS H 5302)の発注、鋳物一般の欠陥の受入基準は鋳物の発注で決める材質と内部欠陥の受入基準に書いた。ここでは、よく使われる AC4C と AC7A を例に、JIS H 5202 で何を指定し、何を確かめるかに絞る。
目次
JIS H 5202 の材料記号と、AC4C・AC7A の位置
JIS H 5202 は、金型鋳物、砂型鋳物などのアルミニウム合金鋳物の規格である。種類は、従来から JIS で決めてきた合金(表 1)と、ISO 3522 に定められた合金(表 2)の 2 系統が並んでいる[1]。AC4C・AC4CH・AC7A は表 1 にあり、いずれも砂型鋳物と金型鋳物の両方に使える。一方、AC8A・AC8B・AC8C・AC9A・AC9B は金型鋳物だけである[1]。
成分で見ると、AC4C はけい素 6.5〜7.5 %、マグネシウム 0.20〜0.4 % を含む Al-Si-Mg 系、AC7A はマグネシウム 3.5〜5.5 % を含む Al-Mg 系である[1]。AC4CH は AC4C と同じけい素量で、マグネシウムの範囲が 0.25〜0.45 %(AC4C は 0.20〜0.4 %)とずれており、銅を 0.10 % 以下、鉄を 0.20 % 以下に抑え、表にない元素も個々に 0.05 % 以下・合計 0.15 % 以下とした、不純物の少ない合金である[1]。
規格の附属書 JA(参考)には、JIS の合金に近似する ISO の合金が並んでいる。AC4C は Al Si7Mg、AC4CH は Al Si7Mg0.3、AC7A は Al Mg5 に近似するとされている[1]。海外の鋳造工場に出すときの手がかりにはなるが、「近似」であって同じ成分の範囲ではない。置き換えるなら、表 3 と表 4 の成分を並べて確かめ、設計部門の承認を取る。
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質別を書かないと、強度の基準が決まらない
アルミ合金の質別記号は JIS H 0001 が定めている。F は製造のままのもの、T5 は鋳物や押出材のように高温の製造工程から冷却したあと人工時効硬化処理したもの、T6 は溶体化処理後に人工時効硬化処理したもの、である[2]。O は、鋳物については伸びの増加や寸法安定化のために焼なましたもの、と定義されている[2]。
JIS H 5202 の機械的性質は、記号・質別・鋳造法の組合せごとに表で決まっている。主な値を並べる。
| 記号 | 質別 | 金型試験片:引張強さ(N/mm²)・伸び(%) | 砂型試験片:引張強さ(N/mm²)・伸び(%) |
|---|---|---|---|
| AC4C | F | 150 以上・3 以上 | 140 以上・2 以上 |
| AC4C | T5 | 170 以上・3 以上 | 150 以上・規定なし |
| AC4C | T6 | 230 以上・2 以上 | 210 以上・1 以上 |
| AC4CH | T6 | 250 以上・5 以上 | 230 以上・2 以上 |
| AC7A | F | 210 以上・12 以上 | 140 以上・6 以上 |
出典: JIS H 5202 の表 5(金型試験片)・表 7(砂型試験片)[1]。表には参考としてブリネル硬さも載っているが、規定値ではない。
表から読み取れることは三つある。第一に、同じ AC4C でも F と T6 では引張強さの下限が 1.5 倍ほど違う。図面に「AC4C」とだけ書くと、どの質別で納めてよいかが決まらず、受入で比べる値も決まらない。第二に、同じ記号・同じ質別でも、金型試験片と砂型試験片で値が違う。鋳造法を書かないと、どちらの表で判定するかが決まらない。第三に、AC7A は表に F しかなく、熱処理した質別の値は規格に無い[1]。AC7A に「T6」と書いた図面を受け取ったら、規格の外の指定なので、設計部門に確かめる。
表のブリネル硬さは参考値で規定値ではない、と規格は注記している[1]。受入で硬さだけを測って熱処理の合否を判断するなら、硬さの判定値は別に協定する。硬さは JIS Z 2243 によって鋳物の表面で測り、必要なら断面で測る[1]。
規格の強度は「別に鋳込んだ試験片」の値
JIS H 5202 は、機械的性質を、特に指定のない限り金型試験片・砂型試験片などで代表させる、としている[1]。試験片を作る供試材は、特に指定のない限り 1 溶解ごとに 1 個以上採り、鋳物を鋳造するときに鋳込む。金型の場合は鋳鉄製の鋳型、砂型の場合は原則として鋳物と同じ鋳型材料を使う[1]。つまり、成績書に載る引張強さは、製品そのものではなく、同じ溶湯から規格の形に鋳込んだ試験片の値である。
製品は肉厚も冷え方も試験片と違うので、製品の中の強度は試験片より低くなりうる。規格の注記は、鋳物全体から切り出した試験片で引張試験をする指定があった場合、金型鋳物は表 5、砂型鋳物は表 7 の値に対して、引張強さで 75 % 以上(AC7A・AC9A・AC9B は 65 % 以上)、伸びで 25 % 以上であることが望ましい、と書いている[1]。製品から切り出した試験片で引張試験をするかどうか、するならその判定値は、受渡当事者間の協定である[1]。
購買の立場では、強度が設計上効く部品ほど、「規格どおり」では製品の強度を保証したことにならない点を押さえておく。製品から試験片を採るなら、採取位置・試験片の形・判定値を図面か仕様書に書く。引張試験の指定の仕方は引張試験(JIS Z 2241)を発注で指定するで扱った。
成分は溶湯分析で決まる
非鉄金属材料の検査通則 JIS H 0321 は、化学成分は特に規定のない限り溶湯分析で決定し、注文者の要求があるときは製品分析を行える、としている[3]。JIS H 5202 も、表に記載のない元素の化学成分は注文者の要求があった場合に限り分析を行う、と書いている[1]。成績書の成分は、とくに指定しなければ溶湯で測った値である。
AC7A では、この成分の管理が品質に効く。岩手県工業技術センターの研究報告は、AC7A は広く使われている Al-Si 系合金と比べて溶解時に酸化の傾向が強く溶湯品質が低下しやすいこと、鋳造現場では湯口や湯道を戻り材として新塊と一緒に再溶解するため、戻り材にけい素がわずかに混入して伸びを低下させる傾向があることを報告している[4]。同じ報告の試験では、けい素量が増えると結晶粒界に金属間化合物が晶出し、延性の低下など機械的性質に影響を及ぼす、という結果だった[4]。JIS H 5202 の AC7A のけい素は 0.20 % 以下である[1]。
AC7A を伸びや靱性のために選んでいるなら、ロットごとの成績書でけい素の値を確かめる。戻り材の使い方は鋳造工場の工程の話だが、成分の値が規格の上限に寄っていないかは受入側で見られる(提案)。
寸法と抜けこう配
JIS H 5202 は、形状と寸法は図面または図面を基にして作った模型によるとし、寸法許容差は注文者の指定による、特に指定のない部分には JIS B 0403 を適用する、と定めている[1]。図面に普通公差の等級を書かずに発注すると、どの等級で判定するかが決まらない。等級の選び方と削り代は鋳造品の普通許容差(JIS B 0403)の指定で扱った。
抜けこう配も、図面に書かなければ普通許容値が使われる。JIS B 0403 は、アルミニウム合金鋳物の抜けこう配の普通許容値を、砂型・金型鋳物とも外側 2 度・内側 3 度とし、こう配部の長さ 400 mm 以下に適用するとしている[5]。抜けこう配の分だけ形状が肉厚側に変わるので、勾配のない面が要る箇所は図面に書いて、削り代を見込むか鋳造工場と相談する。
補修は承認なしにはできない
JIS H 5202 は、鋳物には埋金・溶接・ろう付けなどの補修を施してはならない、ただし注文者の承認を得て、欠陥部分の補修または漏れ止めの処理を施すことができる、と定めている[1]。品質についても、鋳物には使用上問題となるきず・鋳巣・介在物などがあってはならないとしたうえで、注文者と協議して具体的な規定を設けることができる、としている[1]。
ここから、発注時に決めておくことが二つ出てくる。一つは、補修と漏れ止め(含浸など)を認めるかどうか、認めるならどの部位にどの方法までか。もう一つは、鋳巣などの欠陥を何で検査し、どこまでを合格とするか。どちらも、決めていなければ「承認していない補修」「使用上問題となる鋳巣」をめぐって受入で揉める。気密が要る部品なら、試験の方法と判定も書く。気密試験の指定は気密試験・リークテストを仕様に入れるときで扱った。
表示と、表面処理をするとき
JIS H 5202 の表示は受渡当事者間の協定によるもので、協定すれば、鋳物または出荷表に種類の記号と質別の記号、製造番号、製造業者名を表示する[1]。協定しなければ、鋳物に記号が付いていなくても規格には反しない。熱処理品と非熱処理品が混ざる工程なら、製造番号と質別の表示を発注書で求めておく(提案)。
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鋳物にアルマイトをかける場合は、展伸材と同じ硬さや外観は出にくい。硬質アルマイトの規格で鋳造材の扱いが分かれていることは硬質アルマイト JIS H 8603 の発注に書いた。表面処理を前提にするなら、材料の記号を決める段階で処理業者の確認を入れる。
発注書に書くことと、受入で確かめること
1. 規格と材料記号
JIS H 5202 と記号(AC4C・AC4CH・AC7A など)。
2. 質別
F・T5・T6 など。AC7A は表に F しかないことに注意する。
3. 鋳造法
砂型か金型か。判定に使う機械的性質の表が変わる。
4. 機械的性質の確かめ方
規格どおり別鋳込みの試験片で確かめるか、製品から切り出した試験片でも確かめるか。後者なら採取位置と判定値。
5. 寸法
図面の寸法公差、普通公差の等級、抜けこう配、削り代。
6. 品質と補修
欠陥の検査方法と合格の基準、補修・漏れ止めを認めるか。
7. 成績書と表示
溶湯分析の成分、試験片の機械的性質、熱処理の記録。製造番号と質別の表示。JIS H 0321 は、注文者の要求があったときに製造業者が試験の成績などを記載した明細書を提出する、としている[3]。求めなければ来ないので、発注書に書く。
注文書の書き方の例を示す。「材料:JIS H 5202 AC4C-T6、金型鋳物。機械的性質は表 5 の金型試験片による(溶解ごとに 1 個)。成績書:溶湯分析の化学成分、引張強さ・伸び、熱処理の条件。寸法:図面による。指示のない寸法は JIS B 0403 の CT○(図面の注記による)。補修・含浸は事前承認。鋳物に製造番号を表示。」
よくある質問
AC4C と AC4CH は、どう使い分けますか
AC4CH は不純物を抑えた合金で、金型試験片の T6 では引張強さ 250 N/mm² 以上・伸び 5 % 以上と、AC4C の T6(230 N/mm² 以上・2 % 以上)より高い値が規定されている[1]。伸びや靱性が要るなら AC4CH を検討するが、選ぶのは設計部門である。購買としては、図面の記号と見積の記号が一致しているかを確かめる。
T5 と T6 は、成績書のどこで見分けますか
T5 は高温の製造工程から冷却後に人工時効、T6 は溶体化処理のあとに人工時効である[2]。溶体化処理の有無が違うので、熱処理の記録で確かめる。引張強さの下限も違う[1]。
海外の工場から ISO の記号で見積が来ました
JIS H 5202 には ISO 3522 の合金も表 2 として入っており、附属書 JA に JIS の合金と近似する ISO の合金の対応がある[1]。ただし近似であって同じではない。成分と機械的性質の表を並べて確かめ、図面の材料を変えるなら設計部門の承認を取る。アルミの質別記号の体系の違いはアルミは合金番号と質別で指定するで扱った。
まとめ
AC4C・AC7A は JIS H 5202 の記号で、発注書には質別と鋳造法まで書く[1]。規格の機械的性質は記号・質別・鋳造法の組合せで決まり、特に指定しなければ別鋳込みの試験片の値である[1]。製品から切り出した試験片で確かめるなら判定値を協定する[1]。成分は溶湯分析が原則で[3]、AC7A はけい素の混入が伸びに効く[4]。寸法の指示のない部分は JIS B 0403 による[1][5]。補修は注文者の承認なしにはできない[1]。
同じ束では、O リング JIS B 2401 の呼び番号と溝の指定、ホースバンド・ホースクランプの指定、突合せ溶接式管継手の指定、ゴムシート・ゴム板の発注も書いた。砂型鋳造の模型と鋳型の決め方は砂型鋳造の発注を参照してほしい。
出典・参考資料
- JIS H 5202:2010 アルミニウム合金鋳物(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2010 年 3 月 23 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
- JIS H 0001:1998 アルミニウム,マグネシウム及びそれらの合金-質別記号(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1998 年 11 月 20 日改正)
- JIS H 0321:1973 非鉄金属材料の検査通則(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1973 年 3 月 1 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
- 岩清水康二・池浩之・黒須信吾「アルミニウム合金 AC7A の減圧凝固試験と K モールド試験に及ぼす Si 量の影響」岩手県工業技術センター研究報告 第 19 号(岩手県工業技術センター/2017 年)
- JIS B 0403:1995 鋳造品-寸法公差方式及び削り代方式(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1995 年 2 月 1 日改正)
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