標準原価と実際原価の違い | newji
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投稿日:2024年9月20日 | 更新日:2026年9月14日

標準原価と実際原価の違い

この記事のポイント(結論先出し)

標準原価と実際原価の違いは、定義を並べるだけでは購買の仕事に使えない。購買価格の管理に使うときに決めることは 3 つある。1 つ目は標準単価を何で置くか。原価計算基準は標準価格を「予定価格又は正常価格」とし、余裕を許さない理想的な水準の標準原価は制度としての標準原価ではないと明記している[1]。2 つ目は価格差異をどの時点で取るか。受け入れた時点で取る材料受入価格差異は、標準と実際の単価差に実際の受入数量を掛けて計算するので、まだ使っていない在庫の分まで含めて、受け入れた期に購買の結果として見える[1]。3 つ目はいつ改定するか。基準は、材料価格等に重大な変化が生じた場合には現状に即するよう改訂するとしている[1]。そして、標準単価との差を取引先への支払から後で差し引くことや、標準単価を理由に単価を一方的に決めることは、取適法の減額や買いたたきの論点に直結する[6]。標準単価は社内で差異を読むための物差しであって、取引先と決める単価の根拠ではない。

はじめに

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製造業において、コスト管理は非常に重要な要素です。
製造コストを正確に把握することで、利益の最大化や効率向上が図れます。
このコスト管理には、標準原価と実際原価という二つの重要な概念があります。
この記事では、標準原価と実際原価の定義から、その違い、そして具体的なメリット・デメリット、現場での活用方法まで詳しく解説します。

あわせて本記事では、購買部門が標準原価を購入単価の管理にどう使うかを扱う。標準単価の置き方、価格差異の見方、改定の時期の 3 点を、原価計算基準の定めと計算例で確かめる。材料費・労務費・経費の分け方や直接費と間接費の区別といった原価の基礎は原価管理とは——材料費・労務費・経費をどう分けて、何に配るかで整理しているので、ここでは繰り返さない。

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標準原価とは

定義

標準原価とは、企業が理想的な条件のもとで製品を製造した場合の理論的なコストです。
これは、過去のデータや現在の市場状況に基づいて設定され、自社の製造プロセスにおける最適なコストを反映しています。

ここでいう「理想的な条件」には注意が要る。企業会計審議会が昭和 37 年に公表した原価計算基準は、標準原価を「財貨の消費量を科学的、統計的調査に基づいて能率の尺度となるように予定し、かつ、予定価格又は正常価格をもつて計算した原価」と定義し、標準原価計算制度で用いる標準原価は現実的標準原価又は正常原価であるとしている[1]。現実的標準原価とは、良好な能率のもとでその達成が期待されうる標準原価で、通常生ずると認められる程度の減損、仕損、遊休時間等の余裕率を含むものである[1]。

一方で、減損や仕損、遊休時間に対する余裕率を許容しない理想的水準の標準原価を、基準は理想標準原価と呼び、原価管理のために時として用いられることはあっても「この基準にいう制度としての標準原価ではない」と書いている[1]。原価計算研究に「『原価計算基準』の解明」を著した諸井勝之助は、理想標準原価が制度としての標準原価になりえないのは、実際原価との距離が大きく、正常性の範囲から逸脱した高能率を前提とするからだと説明している[2]。差異を読むための標準は、達成が見込める水準で置くのが基準の立場である。

設定方法

標準原価の設定には、いくつかのステップがあります。
まず、過去の生産データを分析し、適切な基準を見つけます。
次に、現場の工程や機械の性能、人員配置などを考慮して、最適な条件下でのコストを算出します。
最後に、これを標準として設定し、後続の生産活動の指標とします。

標準原価のメリット

標準原価には、多くのメリットがあります。

1. コストの明確化
標準原価を設定することで、製造コストの目標を明確にすることができます。
これにより、生産効率の向上と原価管理が容易になります。

2. 業績評価の基準
標準原価を用いることで、実際の生産活動と標準原価との差異を比較し、効率性や問題点を明確にすることができます。
これにより、生産現場の改善活動に役立ちます。

3. コスト削減の指針
標準原価を基にした分析を行うことで、不必要なコストや無駄を排除し、コスト削減の具体的な指針を得ることができます。

実際原価とは

定義

実際原価とは、製品を製造するために実際にかかったコストの総額です。
これは、材料費、労務費、経費などをすべて含み、実際の支出を基に計算されます。

購買の立場で押さえておきたいのは、実際原価が「実際の購入単価で計算した原価」に限られないことである。原価計算基準は、実際原価は厳密には実際の取得価格をもって計算した原価の実際発生額であるが、原価を予定価格等をもって計算しても、消費量を実際によって計算する限り、それは実際原価の計算である、としている[1]。予定価格とは、将来の一定期間における実際の取得価格を予想して定めた価格のことである[1]。基準は材料の消費価格や購入原価についても、必要ある場合には予定価格等で計算できるとし、そこで生じる差を材料受入価格差異・材料消費価格差異として算定するとしている[1]。実際原価計算の会社でも、材料を予定価格で扱い、実際の購入単価との差を別に取る形は珍しいことではない。

計算方法

実際原価は、製造過程で発生した全てのコストを集計します。
材料費、労務費、間接費などの各要素を詳細に記録し、それらを合算して製品ごとのコストを算出します。
この方法により、企業は製品ごとの実際のコストを把握できます。

実際原価のメリット

実際原価にも、多くのメリットがあります。

1. 実態の反映
実際原価は、製造過程で実際に発生したコストをすべて反映します。
これにより、現場のコスト管理が非常に正確になります。

2. 予算管理の基準
実際原価を基に予算と実績を比較分析することで、より正確な予算管理が可能になります。
これにより、将来的なコスト予測の精度も向上します。

3. 問題点の明確化
実際原価は現場の実態を反映しているため、コストが過剰にかかった要因や改善点を明確にすることができます。

標準原価と実際原価の違い

目的の違い

標準原価と実際原価の最大の違いはその目的にあります。
標準原価は目標となる製造コストとして設定され(達成が見込める水準で置くのが基準の立場)、企業が生産効率を向上させるための指標として使われます。
一方、実際原価は実際にかかったコストを正確に把握するために使われ、現場の実態を反映します。

計算方法の違い

標準原価は理論値に基づき計算され、過去のデータやモデルに基づいています。
これに対して、実際原価は実際の支出を基に計算されるため、リアルタイムのコストを反映します。

メリットの違い

標準原価のメリットとしては、コスト削減の指針となり、効率向上のための基準が設定できる点が挙げられます。
実際原価のメリットとしては、現場の実態を反映し、正確なコスト管理が可能となる点が挙げられます。

デメリットの違い

標準原価のデメリットとしては、理論値に基づいているため実際の変動には対応できない場合がある点が挙げられます。
一方、実際原価のデメリットとしては、リアルタイムのデータ収集が必要であり、手間やコストがかかる点が挙げられます。

標準原価の「実際の変動に対応できない」という弱点は、基準の側でも前提として手当てされている。基準は、標準原価は原価管理のためにも、予算編成のためにも、たな卸資産価額と売上原価の算定のためにも現状に即した標準でなければならないとして、機械設備や生産方式などの基本条件ならびに材料価格、賃率等に重大な変化が生じた場合には改訂するとしている[1]。また諸井は、基準の定義どおりに比べると、実際原価と現実的標準原価の差はごく軽微だと述べている[2]。どちらも正常な状態を前提にした原価で、「理想」と「現実」の対立として読むと、この点を見落とす。

購買で使う標準単価は、何で置くか

標準原価を購買価格の管理に使うときの中心は、材料や部品の標準単価である。原価計算基準は、標準直接材料費を、直接材料の種類ごとに製品単位当たりの標準消費量と標準価格とを定めて両者を乗じて算定するとし、標準価格は予定価格又は正常価格とすると定めている[1]。購買部門が主に扱うのは、この式のうち価格の側である。

標準原価計算制度を採っていない会社でも、標準単価は持てる。基準は実際原価計算制度についても、原価管理上必要ある場合には、必要な原価の標準を勘定組織のわく外において設定し、実際との差異を分析し、報告することがあるとしている[1]。帳簿の仕組みを変えずに、購買の管理表として標準単価を置くやり方は、基準の枠組みの中に収まっている。

予定価格と正常価格は、決め方が違う。予定価格は将来の一定期間の実際の取得価格を予想して定める価格で、正常原価は、比較的長期にわたる過去の実際数値を統計的に平準化し、これに将来のすう勢を加味した正常価格などに基づいて決める原価である[1]。基準は正常原価について、経済状態の安定している場合にたな卸資産価額の算定のために最も適するとしている[1]。これを購買の品目に当てはめると、次のように整理できる。

置き方 基準での決め方 実務での使い分けの目安 決めておかないと起きること
予定価格 将来の一定期間における実際の取得価格を予想して定める 市況や為替で購入単価が動く材料・部品 予想の前提(市況の水準・想定為替・ロット)を書き残していないと、差異が出たときに前提が外れたのか購買の結果なのか判断できない
正常価格 正常原価の定義では、比較的長期の過去の実際数値を統計的に平準化し、将来のすう勢を加味した正常価格等に基づいて決める(経済状態が安定している場合に最も適するとされる) 購入単価が長く安定している標準品・定番部品 価格が一方向に動く局面では、差異が同じ向きに出続ける
理想標準(制度では用いない) 余裕率を許容しない理想的水準 制度としての標準原価には含まれない 差異が不利側に出続け、標準の問題か購買の結果かを区別しにくい

標準単価に何を含めるかを先に決める

標準単価の中身も決めておく必要がある。基準は、材料の購入原価を、購入代価に買入手数料、引取運賃、荷役費、保険料、関税等の引取費用を加算した金額とするか、さらに購入事務、検収、整理、選別、手入、保管等に要した費用まで加算した金額(基準は引取費用と合わせてこれを材料副費と呼ぶ)とするとしている[1]。購入した材料について値引や割戻を受けたときは、購入原価から控除する[1]。

見積書の単価だけで標準単価を置いておき、実際の購入原価には運賃や関税が乗っていれば、その分は取引先との単価が動いたわけではないのに価格差異として出てくる。材料副費を予定配賦率で購入原価に算入している場合は、その配賦額と実際額の差を材料副費配賦差異として別に算定する定めもある[1]。標準単価の表には、単価の欄と並べて「含めている費用の範囲」を 1 列持たせておくと、差異を読むときに迷わない。

品目の原価を単価と数量に割って、届いた見積の妥当性を判定する方法はコストテーブルの作り方と使い方で扱っている。本記事では、そうして決めた単価を標準として置いたあとの、差異の読み方と改定に絞る。

価格差異は、受け入れた時点で取るか、使った時点で取るか

基準は標準原価計算制度における材料の差異を、次のように算定するとしている[1]。

1. 材料受入価格差異
標準受入価格と実際受入価格との差異に、実際受入数量を乗じて算定する。

2. 直接材料費の価格差異
標準消費価格と実際消費価格との差異に、実際消費数量を乗じて算定する。

3. 直接材料費の数量差異
標準消費数量と実際消費数量との差異に、標準消費価格を乗じて算定する。

違いは掛ける数量にある。受け入れた時点で取るか、使った時点で取るかで、同じ単価差でも金額が変わる。また数量差異は標準単価で評価するので、購入単価の上下は数量差異に混ざらない。価格の結果と使い方の結果が、式の段階で分かれている。

計算例で見る

日本商工会議所 1 級工業簿記・原価計算の問題を用いて差異の把握と処理を解説した町惇彦の論文に、次の数値の例がある[3]。材料の標準単価は 1kg あたり 850 円、実際の購入単価は 924 円、購入量は 16,500kg、消費量は 16,000kg、製品 2,200 個分の標準消費量は 15,400kg(1 個 7kg)である。この例の会社は、材料を購入した時点で標準価格により受け入れ、材料受入価格差異を把握している[3]。

差異 計算 金額 何を映すか
材料受入価格差異 (850 円 − 924 円)× 16,500kg −1,221,000 円 購入した全量について、標準単価と実際単価の差
うち払い出した 16,000kg 分 (850 円 − 924 円)× 16,000kg −1,184,000 円 当期に使った分の単価差
うち期末に残った 500kg 分 (850 円 − 924 円)× 500kg −37,000 円 材料として在庫に残った分の単価差
材料消費数量差異 (15,400kg − 16,000kg)× 850 円 −510,000 円 使った量の標準との差を、標準単価で評価したもの

金額の前の「−」は、実際が標準より高くついた不利差異を表す。実際の購入単価は標準より約 8.7% 高い。受け入れた時点で取ると、まだ使っていない 500kg 分まで含めて 1,221,000 円の差異がその期に確定する。発注した単価の結果が、いつ使われたかと関係なく、受け入れた期に見えるということである。

この差異の扱いにも決まりがある。基準は実際原価計算制度において、原価差異は材料受入価格差異を除き原則として当年度の売上原価に賦課し、材料受入価格差異は当年度の材料の払出高と期末在高に配賦するとしている[1]。標準原価計算制度でも、異常な状態に基づく数量差異等を非原価項目とする場合を除き、原価差異は実際原価計算制度の処理に準じて処理する[1]。上の表で 1,221,000 円を払い出した分と期末に残った分に分けているのは、この配賦にあたる。町の例でも、材料受入価格差異は払出材料分 1,184,000 円と期末材料分 37,000 円に配分されている[3]。

価格差異が出たら、どこから確かめるか

不利な価格差異は、「購買が高く買った」と同じ意味ではない。標準単価と実際の購入原価のあいだに入る要因を、次の順に切り分ける。

1. 標準単価の前提が古くなっていないか
市況や為替の水準、発注ロットなど、標準を置いたときの前提と今の条件を比べる。前提が大きく変わっていれば、差異は購買の結果ではなく標準の問題である。

2. 購入原価に含める範囲が、標準と実際で揃っているか
標準は見積単価だけ、実際は引取費用込み、という食い違いがないか。前の節のとおり、基準は、購入原価に引取費用だけを加算するか、材料副費全体まで加算するかを選ぶ形にしている[1]。

3. 値引や割戻の計上時期がずれていないか
基準は、値引や割戻が材料の消費後に判明した場合には同種材料の購入原価から控除し、対象の材料が判明しない場合には当期の材料副費等から控除する等の方法で処理できるとしている[1]。受け取った月と計上した月がずれると、ある月は不利、翌月は有利と振れる。

4. 発注の数量や納期が、見積の前提と違っていないか
取適法のテキストは、多量の発注を前提に出させた見積単価を少量の発注の単価に使うことや、短納期の発注で相手に生じる費用増を考慮せずに通常より低い代金を定めることを、買いたたきに該当するおそれがある方法として挙げている[6]。少量や短納期で単価が上がるのは正当な上昇でありうるので、標準を量産時の数量で置いていれば、差異は発注の条件を映しているだけのことがある。

5. 仕入先や品目が替わっていないか
代替品への切り替えや仕入先の変更で、同じ品目コードのまま単価の水準が変わっていないかを確かめる。

差異を取り戻すために、支払を削らない

価格差異を取り戻そうとして、発注時に決めた代金を後から削ることはできない。取適法のテキストは、中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに発注時に定めた代金の額を減ずることは、名目や方法、金額の多少を問わず違反になるとし、これまでに違反とされた名目として「原価低減」「コストダウン協力金」も挙げている[6]。どういう場合に減額に当たり、どういう場合に当たらないかは代金を後から下げる——減額に当たる行為と、当たらない行為で整理している。

標準単価を、そのまま取引先への発注単価に当てはめる使い方も危うい。同じテキストは、発注側の予算単価だけを基準に、通常支払われる対価より低い単価を一方的に決める方法を、買いたたきに該当するおそれがあるものとして挙げている[6]。標準単価は差異を読むための社内の物差しで、単価は相手と協議して決める。要請として何をどこまで言ってよいかはコストダウン要請はどこまで言ってよいかを参照してほしい。

標準単価は、いつ改定するか

基準は標準原価の改訂について、原価管理、予算編成、たな卸資産価額と売上原価の算定のいずれのためにも現状に即した標準でなければならないから、常にその適否を吟味し、材料価格や賃率等に重大な変化が生じた場合には現状に即するよう改訂する、と定めている[1]。制度で用いる現実的標準原価そのものも、比較的短期の予定価格等を前提に決め、諸条件の変化に伴いしばしば改訂されるものとされている[1]。

ただし「重大な変化」がどの程度かは、基準に数字では書かれていない。社内で決めるしかない。決め方の軸は 3 つに分けておくと運用しやすい。

1. 前提が変わったとき
仕入先の変更、発注ロットの変更、購入原価に含める費用の範囲の変更、想定為替の見直しなど、標準を置いた前提が変わったら、その時点で見直す。

2. 差異が同じ向きに続いたとき
同じ品目で不利または有利の差異が何か月も続くなら、標準の水準がずれている。何か月・何 % で見直すかを品目群ごとに決めておく。

3. 定期の見直し
期首など決まった時期に全品目を点検する。取引先との価格協議の周期に合わせて見直す考え方はコストテーブルの作り方と使い方の中で触れている。

標準が古いと、決算の処理が重くなる

標準を放置して差異が大きくなると、会計の処理も重くなる。基準は、予定価格等が不適当なため比較的多額の原価差異が生ずる場合、直接材料費等に関する原価差異を当年度の売上原価と期末のたな卸資産に配賦するとしている(個別原価計算では指図書別又は科目別、総合原価計算では科目別)[1]。町の計算例も差異が多額と判断される設定で、材料受入価格差異を払出分と期末材料分に分けたうえで、払出分をさらに売上原価 777,000 円、期末製品 103,600 円、期末仕掛品 259,000 円、材料消費数量差異 44,400 円へ追加配賦している[3]。

税務の側にも目安がある。法人税基本通達 5-3-1 は、製造等をした棚卸資産について法人が算定した取得価額が法人税法施行令第 32 条第 1 項の取得価額に満たない場合、その差額(原価差額)のうち期末棚卸資産に対応する部分を期末棚卸資産の評価額に加算するとしている[4]。そのうえで 5-3-3 は、原価差額が少額(総製造費用のおおむね 1% 相当額以内)で、計算を明らかにした明細書を確定申告書に添付したときは、調整を行わないことができるとしている[4]。また 5-3-8 は、原材料の受入れに見積原価等を採用している場合に生じる原材料受入差額を、払出高と期末棚卸高に適正に配賦し、期末分を一括して処理することを認めている[4]。

つまり、標準単価が実際より低いまま不利差異が積み上がり、原価差額が総製造費用のおおむね 1% を超えると、5-3-3 による調整の省略は使えなくなる(工場ごとに細分して判定する扱いは 5-3-4 にある[4])。改定を期首にまとめる運用でも、期中にこの水準へ近づいていないかを経理と一緒に見ておくと、決算の直前に慌てずに済む。

もう 1 つ、誰が改定を判断するかも決めておきたい。原価計算基準の改訂論点を論じた川野克典は、日本企業における標準原価計算の役割が、本来の原価維持の観点から決算早期化等に重点が置かれつつあると指摘している[5]。標準を決算のために持っている会社では、購買価格の管理に使うための改定の判断と、その根拠の記録を誰が持つのかを、経理任せにせず決めておく必要がある。

現場での活用方法

標準原価の活用方法

標準原価は、製造現場での効率化の指標として非常に有用です。
例えば、新しい生産ラインの設計や既存ラインの改善の際に、標準原価を基に最適なコスト計算を行います。
また、コスト削減プロジェクトの際には、標準原価を基準にして改善点を特定し、具体的な行動計画を立てることができます。

実際原価の活用方法

実際原価は、現場のコスト管理や予算管理に直接役立ちます。
例えば、月次報告書や決算時のコスト分析に実際原価を用いることで、正確な経営判断が可能となります。
また、不必要なコストや無駄を排除するための基礎データとしても活用できます。

最新の技術動向

コスト管理の分野でも、最新の技術が大いに活用されています。
IoT(モノのインターネット)やビッグデータ解析、AI(人工知能)を活用することで、リアルタイムでのコスト管理が可能になっています。

IoTの活用

製造現場におけるIoTの活用により、各機械や工程の稼働データをリアルタイムで収集し、コスト管理に活かすことができます。
これにより、実際原価の精度が格段に向上し、問題の早期発見と迅速な対応が可能となります。

ビッグデータ解析

大量の生産データを分析することで、コストの変動要因やトレンドを把握することができます。
この情報を基に、標準原価の設定精度を高め、効率の良い生産計画を立てることができます。

AIの活用

AI技術を用いることで、過去のデータから未来のコスト予測を行うことができます。
これにより、より正確な予算管理が可能となり、経営判断の精度が向上します。

よくある質問

標準原価計算を採っていない会社でも、価格差異を見る意味はあるか

ある。帳簿は実際原価のまま、購買の管理表の上で標準単価と実際の購入単価を比べるだけでも、単価の動きを品目ごとに追える。基準も、実際原価計算制度で原価の標準を勘定組織のわく外に置いて差異を分析する形を認めている[1]。どこから標準を持つかという順序の考え方は原価管理システムは「どこまで細かく取るか」で決まるで扱っている。

有利差異(標準より安く買えた)なら、確かめなくてよいか

確かめたほうがよい。有利差異も、標準の前提が外れているサインである。仕様や付帯費用の範囲が変わっていないか、値引や割戻の計上時期がずれていないか[1]を見る。支払の段階で代金を削った結果として安くなっているのであれば、それは減額の論点になる[6]。

為替で単価が動く輸入材の標準単価は、どう置くか

将来の取得価格を予想して定める予定価格の考え方で置き[1]、想定した為替の水準を標準単価と同じ行に書き残す。実際の為替が想定から大きく外れたら、基準のいう「材料価格等に重大な変化」として改訂を検討する[1]。前提を残していないと、差異が為替によるのか、仕入先との単価によるのかを後から分けられない。

品目がすべて標準原価を持つ必要はあるか

ない。標準単価の保守には手間がかかるので、購入金額が大きく、繰り返し買う品目から置くのが現実的である。単発で買う品目や仕様変更の多い品目まで広げると、改定が追いつかず、古い標準が差異を作り続ける。

まとめ

標準原価と実際原価は、それぞれ異なる目的と特性を持ちながらも、どちらも製造業におけるコスト管理に欠かせないものです。
標準原価は目指すべきコストとして設定される(ここでいう「理想的」は達成が見込める水準の意味で、余裕を一切認めない理想標準原価とは別)一方、実際原価は現場の実態を反映したコストとなります。
両者を適切に活用することで、製造現場の効率向上や無駄の削減が達成できるでしょう。
最新の技術動向も取り入れることで、さらに精度の高いコスト管理が可能となります。

購買価格の管理に使う場合は、次の 3 つを決めることから始める。標準単価は予定価格か正常価格で置き、含める費用の範囲を書き残す。価格差異は受け入れた時点で取り、差異が出たら前提・費用の範囲・値引の時期・発注条件・仕入先の順に確かめる。そして、前提が変わったとき、差異が同じ向きに続いたとき、定期の点検時に改定する。標準単価はあくまで社内の物差しで、差異を取引先への支払から差し引いたり、標準単価を理由に単価を一方的に決めたりする使い方はしない。

出典・参考資料

  1. 原価計算基準(企業会計審議会/昭和 37 年 11 月 8 日・公益財団法人財務会計基準機構 会計基準検索システム掲載)
  2. 『原価計算基準』の解明(諸井勝之助/原価計算研究 23 巻 2 号/1999 年)
  3. 標準原価計算と差異分析(町 惇彦/太成学院大学紀要 14 巻)
  4. 法人税基本通達 第5章第3節 原価差額の調整(5-3-1〜5-3-9)(国税庁)
  5. 経営環境の変化と「原価計算基準」 : 「原価計算基準」改訂の論点(川野 克典/原価計算研究 28 巻 1 号/2004 年)
  6. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)

標準単価を置く前に、値段の中身を読めるようにする

標準単価を置く前提になる、原価の分け方と見積の中身の読み方を、研修テキストとして章立てで学べます。「原価のつかみ方」は、原価管理の基本、見積の中身が見えない理由、購買仕様書の書き方、MOQ と単価の関係、表計算で原価を扱う限界の 5 章で構成し、購買仕様書の様式と原価積算シートを付けています。

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