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投稿日:2026年8月28日 | 更新日:2026年8月31日

見積比較表の作り方——価格以外に並べるべき 8 項目と評価基準の決め方

この記事のポイント(結論先出し)

見積比較表を単価の一覧にしてしまうと、比較したつもりで条件の違いを見落とす。公的調達の側には、価格だけで決めない方式が制度として用意されており、会計法は価格及びその他の条件が国にとつて最も有利なものを選べる場合を定め、地方自治法施行令は総合評価一般競争入札について落札者決定基準をあらかじめ定めて公告することを義務づけている。民間の相見積でも考え方は同じで、評価の観点は見積を集める前に決める。並べるべき項目は、取適法の 4 条明示 12 項目と対応させると漏れが出にくい。

価格だけで決めない、と制度が言っている場所

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見積比較表の作り方を考える前に、そもそも最安値を選ぶことが唯一の正解なのかを確認しておきたい。この点について、官公庁の契約を定めた法令には明確な答えがある。

会計法第 29 条の 6 第 1 項は、競争に付する場合には予定価格の制限の範囲内で最高または最低の価格をもって申込みをした者を契約の相手方とするのが原則だとしている。ただし同項ただし書は、国の支払の原因となる契約のうち政令で定めるものについて、相手方となるべき者の申込みに係る価格によってはその者により当該契約の内容に適合した履行がされないおそれがあると認められるとき、または、その者と契約を締結することが公正な取引の秩序を乱すこととなるおそれがあって著しく不適当であると認められるときは、次に低い価格の者を相手方とすることができると定めている[1]。安すぎる金額は、そのまま採用しなくてよいと条文に書かれている。

さらに同条第 2 項は、その性質または目的から第 1 項によりがたい契約については、価格及びその他の条件が国にとつて最も有利なものをもつて申込みをした者を契約の相手方とすることができるとしている[1]。価格以外の条件を評価に入れる余地が、法律の本文に置かれている。

地方公共団体はさらに具体的である。地方自治法施行令第 167 条の 10 の 2 は、価格その他の条件が最も有利なものをもって申込みをした者を落札者とする方式を総合評価一般競争入札と呼び、これを行おうとするときはあらかじめ落札者決定基準を定めなければならないとしている。定めようとするときは学識経験を有する者の意見を聴かなければならず、公告をするときは総合評価一般競争入札の方法による旨と落札者決定基準についても公告しなければならない[2]

この条文から読み取れる実務の原則は 2 つある。評価の基準は見積を集める前に決めることと、その基準を参加者に開示することである。集まった数字を見てから重み付けを決めれば、それは評価ではなく後付けの理由になる。

なお同令第 167 条の 10 第 2 項は、契約の内容に適合した履行を確保するため特に必要があると認めるときは、あらかじめ最低制限価格を設けて、それを下回る申込みをした者を落札者としないことができるとしている[2]。下限を先に決めておくという発想も、比較表の設計に取り込める。

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比較表に並べる、価格以外の 8 項目

ここからは民間の相見積を前提に、単価の隣に何を置くかを整理する。

1. 数量条件(最小発注数量とロット単位)
単価は数量の関数である。同じ 100 個の見積でも、最小発注数量が 100 個の会社と 500 個の会社では、次回以降の実質単価が変わる。ロット単位が 50 個刻みなら、120 個必要なときに 150 個買うことになる。この欄がないと、単価が最も安い会社が最も高くつく事態を検知できない。

2. 納期(初回と量産、そして起算点)
「納期 2 週間」の起算点が、注文書を受け取った日なのか、材料を確保した日なのか、図面を承認した日なのかで実際の到着日は変わる。初回と量産で条件が違う場合も多い。比較表には日数だけでなく、何を起点とした日数かを書く。

3. 支払条件
支払サイトが 30 日か 60 日かは、単価の数%に相当する資金負担の差になる。ここには法令上の上限がある。取適法テキストによれば、委託事業者は給付の内容について検査をするかどうかを問わず、受領日から起算して 60 日以内、受領日を算入する、のできる限り短い期間内で代金の支払期日を定める義務がある[3]。相手が取適法の中小受託事業者に当たる場合、60 日を超える条件はそもそも選べない。

4. 検査と証明書
材料証明書、寸法検査成績書、外観検査の基準をどこまで出すかは、価格に直結する。ある社の単価が安いのは検査を含めていないだけ、という状況は珍しくない。比較表では、証明書の種類と提出タイミングを列にする。

5. 型・治具・初期費用の扱い
金型代を初期費用として計上する会社と、単価に上乗せして償却する会社では、単価の見え方が正反対になる。数量が計画どおり出なかったときの差も大きい。型の所有権と保管責任をどちらが持つかも、この欄で確認する。

6. 有償支給の条件
こちらから材料を支給する場合、その品名、数量、対価、引渡しの期日、決済期日、決済方法が条件になる。これは後述する 4 条明示の項目でもある[3]。支給材の値決めを比較表に入れないと、加工賃だけを比べて総額を見誤る。

7. 見積有効期限と価格改定の条件
材料相場が動く品目では、有効期限が 2 週間の見積と 3 か月の見積を同じ土俵に載せられない。価格改定の申し出をどういう条件で受けるかも、あらかじめ書いてもらう。取適法テキストは、コストの上昇分の反映について協議することなく従来どおり据え置くことが買いたたきに該当するおそれがあるとしている[3]ため、改定の経路は先に決めておくほうが運用しやすい。

8. 前提条件と未確定事項
各社が自社の標準的な前提を置いて回答してくるため、その前提を並べないと差の原因が分からない。表面処理の膜厚、梱包仕様、輸送手段、検収場所といった項目は、書かれていないだけで見積には織り込まれている。比較表の末尾に、各社が自分で補った前提を書く欄を設ける。

4 条明示 12 項目と対応させると、漏れが出にくい

この 8 項目は思いつきで並べたものではなく、発注時に明示しなければならない事項から逆算している。取適法テキストによれば、委託事業者は製造委託等をした場合、直ちに次の事項を書面または電磁的方法により明示しなければならない[3]

4 条明示の項目 見積比較表の対応する列 抜けたときに起きること
給付の内容 仕様・材質・表面処理・前提条件 仕様違いの数字を並べて比較したことにしてしまう
給付を受領する期日 納期(初回・量産・起算点) 発注後に納期が合わず、再交渉で単価が動く
給付を受領する場所 受渡条件・輸送費の負担 工場渡しと指定場所渡しの差が単価に埋もれる
検査を完了する期日 検査項目・証明書・検収の時期 検査費用の有無で単価差が生まれる
代金の額 単価・初期費用・数量条件 最小発注数量の違いで実質単価が逆転する
代金の支払期日 支払条件(受領日から 60 日以内) 資金負担の差が比較から落ちる
有償支給の条件 支給材の品名・数量・対価・決済 加工賃だけを比べて総額を見誤る
未定事項と予定期日 未確定事項と、確定させる期日 確定後に金額を見直す経路がなくなる

明示事項にはこのほか、委託事業者と中小受託事業者の名称、委託をした日、一括決済方式や電子記録債権で支払う場合の条件が含まれる[3]。比較表の列を 4 条明示に寄せておくと、発注段階で書き写すだけで済み、見積時と発注時で条件が食い違う事故が減る。

未定事項については、テキストが書き方まで定めている。内容が定められないことについて正当な理由があり記載しない事項がある場合は、その理由と、内容を定めることとなる予定期日を明示することとされている[3]。比較表の段階でも同じ形にしておけば、後から金額を見直す根拠が残る。

評価基準は、見積を集める前に決める

総合評価一般競争入札で落札者決定基準をあらかじめ定めることが義務になっているのは[2]、集まった数字を見てから基準を作れば、望む相手を選べてしまうからである。民間でも同じ問題が起きる。

実務では、次の順で決めると破綻しにくい。まず、絶対に外せない条件を先に切り出す。認証の有無、対応可能な寸法、量産能力といった項目は、点数化せずに満たす・満たさないで判定する。次に、点数化する項目と配点を決める。価格の配点を何割にするかを先に固めておかないと、価格差が大きかったときに配点のほうを動かしたくなる。最後に、同点だったときの決め方を決めておく。

評価に使った資料の扱いにも注意がいる。公正取引委員会のガイドラインには、相手に社外秘の原価計算資料や労務管理の資料を出させ、その分析をもとに値下げを求めて、著しく低い納入価格を一方的に決める、という想定例が置かれている[4]。原価の内訳を比較表に載せる場合、その使い道は評価であって交渉材料ではない、という線を社内で共有しておく必要がある。集めた見積を交渉に使うときの線引きは相見積を他社に見せるのは違法かで詳しく扱っている。

比較できない見積が返ってきたとき

集めてみると、そもそも横に並べられない回答が混じる。よくあるのは次の 3 つである。

単位が違う。1 個あたりで出す会社と、1 ロットあたり、あるいは 1 キログラムあたりで出す会社が混ざる。比較表では最小の共通単位に換算し、換算前の数字も併記する。換算だけ残すと、後から検算できなくなる。

含まれる範囲が違う。輸送費、梱包費、検査費、型費のどれが入っているかが各社で異なる。1 社ずつ問い合わせて揃えるのが正攻法だが、依頼段階で「この費用は含める・含めない」を明示しておけば大半は防げる。

前提が書かれていない。数量、納期、支払条件のいずれかについて、こちらの提示と違う前提で計算されている。この場合、金額の差の何割が前提の違いによるものかを先に切り分けないと、価格交渉の入口を間違える。

いずれも原因は比較表ではなく依頼書の側にある。依頼段階で条件を揃える方法は相見積の運用と取適法の関係に、依頼文の具体的な書き方は見積依頼メールの書き方と例文にまとめている。ここで決めた評価の観点を依頼の時点で相手へ伝えておく理由は相見積を依頼するときに伝えることで説明している。

比較表と見積書そのものの保存

集めた見積は、比較が終われば役目を終えるわけではない。国税庁のパンフレットが挙げる電子取引データの例には、注文書や請求書と並んで見積書が明記されている[5]。帳簿・書類の保存義務がある者がこれらに相当するデータをやりとりした場合、そのデータを保存しなければならない。受け取った側だけでなく、送った側も対象になる[5]

保存の要件は、改ざん防止のための措置をとること、日付・金額・取引先で検索できること、ディスプレイやプリンタ等を備え付けることの 3 つである[5]。専用のシステムがなくても、表計算ソフト等で索引簿を作る方法か、ファイル名に規則性をもって日付・金額・取引先を入力して特定のフォルダに集約する方法で対応できるとされている[5]。改ざん防止についても、事務処理規程を定めて守る方法が示されている[5]。保存するファイル形式は問わず、PDFに変換したものやスクリーンショットでも問題ないと明記されている[5]

採用しなかった見積も、電子データでやりとりしたものであれば同じ扱いになる。比較表そのものは自社で作成した資料なので電子取引データには当たらないが、どの見積を根拠に決めたかを後から説明するには、比較表と見積の現物が同じ場所に残っているほうが早い。

よくある質問

比較表は何社分まで作るべきか

列が増えるほど作る手間が増え、精査が浅くなる。公的調達では、随意契約でもなるべく二人以上から見積書を徴すこととされており、下限の考え方は制度に示されているが上限はない。実務では、条件を揃えて精査できる範囲で決めることになる。

最安値を選ばなかった場合、社内でどう説明するか

会計法第 29 条の 6 は、価格によっては契約の内容に適合した履行がされないおそれがあると認められるときに次に低い価格の者を選べるとし、性質または目的によっては価格及びその他の条件が最も有利な者を選べるとしている[1]。民間に同じ条文はないが、事前に決めた評価基準と、その基準に沿った採点結果が残っていれば、説明の形は同じになる。

総合評価の配点は何割が適切か

法令に一律の割合の定めはない。地方自治法施行令は落札者決定基準を定める際に学識経験者の意見を聴くことを求めているが[2]、これは配点の水準ではなく基準の妥当性を確保する手続きである。民間では、価格以外の項目で本当に差がつくのかを先に確認し、差がつかない項目に配点を割かないほうが実務的である。

比較表をエクセルで作り続けても問題はないか

問題はない。国税庁も、専用のシステムを導入していなくても表計算ソフト等で索引簿を作る方法で検索要件を満たせるとしている[5]。課題が出るのは、品目が増えて過去の単価との比較ができなくなったときや、担当者ごとに列の定義が変わったときである。

安すぎる見積はどう扱えばよいか

公的調達では、低い価格では契約の内容に適合した履行がされないおそれがあるときに落札者としないことができ、地方公共団体では最低制限価格をあらかじめ設ける方法もある[1][2]。民間でも、原価の積み上げから見て説明のつかない金額は、理由を確認してから採否を決める。公正取引委員会のテキストは、総合評価落札方式を含む一般競争入札も入札談合の対象になるとしており[6]、極端な数字の並びは競争の実質が失われている兆候でもある。見積合わせが入札と同じ扱いを受ける理由は相見積・見積合わせ・入札の違いで整理した。

まとめ

見積比較表は、単価を横に並べる表ではなく、条件を横に並べる表である。会計法と地方自治法施行令は、価格以外の条件で選ぶ方式と、そのために評価基準を事前に定めて開示する手続きを制度として持っている。民間の相見積でも、評価の観点は見積を集める前に固める。並べる列は、数量条件・納期・支払条件・検査と証明書・型と初期費用・有償支給・有効期限と価格改定・前提条件の 8 つを起点に、取適法の 4 条明示 12 項目と対応させておくと、見積時と発注時で条件が食い違わない。集めた見積は電子取引データとして保存義務がかかるため、比較が終わった後の置き場所まで含めて設計する。

出典・参考資料

  1. 会計法(昭和 22 年法律第 35 号)(e-Gov 法令検索・デジタル庁)
  2. 地方自治法施行令(昭和 22 年政令第 16 号)(e-Gov 法令検索・デジタル庁)
  3. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
  4. 優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(公正取引委員会/平成 22 年 11 月 30 日・令和 8 年 6 月 17 日改正)
  5. 電子帳簿保存法 電子取引データの保存方法をご確認ください【令和 6 年 1 月以降用】(国税庁/令和 5 年 7 月)
  6. 入札談合の防止に向けて 独占禁止法と入札談合等関与行為防止法(令和 7 年 10 月版)(公正取引委員会事務総局/令和 7 年 10 月版)

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