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銘板(ネームプレート)の発注——表示項目・陽極酸化の等級と光堅ろう度・粘着力の条件

この記事のポイント(結論先出し)
機械・装置に付ける銘板(ネームプレート)は、何を書くかを製品側の規格が決め、どう作るかを材料・処理・試験の規格で指定する、と分けて考えると漏れが減る。機械の電気装置なら JIS B 9960-1 が、供給者名、モデル、製造番号、各入力電源の定格電圧・相数・周波数・全負荷電流などを、据付け後もはっきり見えるように消えない方法で表示するよう求め、銘板・ラベルはさらされる物理的環境に十分耐えるものでなければならないとしている[1]。アルミの陽極酸化で作る銘板は JIS H 8601 で処理業者に渡す情報(皮膜厚さの等級、着色、封孔など)を指定でき、着色皮膜の光堅ろう度は協定で適用する場合、屋内 5 級以上・屋外 9 級以上とされる[3]。粘着で貼る銘板の粘着力の値は、JIS Z 0237 ではステンレスの試験板に貼って測るので、実際に貼る面で確かめる[5]。圧力のかかる壁に穴をあけたり溶接したりして銘板を付けない。
目次
この記事の範囲
この記事は、機械・装置・部品に取り付ける工業用の銘板(定格を示す銘板、警告の銘板、操作部の表示板など)を発注するとき、または銘板を含めて装置や部品を発注するときに、何を指定し、受け取るときに何を確かめるかを扱う。名札や記念品のネームプレートの話ではない。
銘板の材質や作り方を一つにまとめて定める JIS の製品規格は無い。表示する中身は機械・機器ごとの規格や法令が決め、作り方の品質は陽極酸化・印刷・粘着などの規格で指定する、という組み立てになる。部品そのものに打刻やレーザーで識別を入れる方法と 2 次元コードの読み取りの基準は部品の識別表示とラベルの指定で扱った。この記事は、別に作って取り付ける板としての銘板を扱う。
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何を書くかは、製品側の規格が決める
銘板の発注でまず決めるのは文面である。代表的な規格が求める表示を並べる。
| 対象と規格 | 表示する項目 | 表示のしかた |
|---|---|---|
| 機械の電気装置(JIS B 9960-1 の 16.4) | 供給者名又は商標、該当する場合のモデル・製造番号・基本文書番号、各入力電源の定格電圧・相数・周波数(交流)・全負荷電流(2019 年版にあった認証表示などの細別は 2023 年の追補 1 で削除) | 受電するエンクロージャ上に、据付け後もはっきり見えるよう消えない方法で。主入力電源の近くが推奨 |
| 油圧機器(JIS B 8361 の 7.4.1) | 製造業者又は供給者の名前・商標、製品識別、定格圧力、図記号 | 可能な場合、明瞭かつ恒久的な方法で。面積が小さければ取扱説明書・附属タグなどに表示してよい |
| 気体封入式アキュムレータ(JIS B 8361 の 5.4.3.1.1) | 製造業者名、製造日(月/年)、製造番号、ガス容積、許容温度範囲、許容最高圧力、試験圧力など | 恒久的な方法で。刻印の方法と位置は強度に影響を与えないこと。場所が足りなければ恒久的に取り付けたタグに |
表の電気装置の項目は、JIS B 9960-1:2019 の 16.4 に 2023 年の追補 1 を反映したものである[7]。JIS B 9960-1 は、警告標識、銘板、マーキング、ラベル及び識別プレートは、さらされる物理的環境に十分耐えるものでなければならない、と書いている(16.1)[1]。油圧機器の規格も「恒久的な方法」を求めている[2]。つまり文面と同じくらい、耐える年数と環境が要求の一部になっている。モーターの銘板で確かめる項目はモーターの仕様書に書くことで、制御盤の表示の全体は同じ束の制御盤の製作を外注するときで、油圧機器の表示は油圧シリンダの仕様書に書くことで扱う。
言語も文面のうちである。JIS B 9960-1 の附属書 B の調査書は、刻印・特殊マーキングの言語と、適合が必要な地域の法規制を確かめる項目を置いている[1]。輸出する装置の銘板は、仕向け地を決めてから文面を作る。
製造番号のように 1 台ごとに変わる項目
製造番号や製造年月は 1 台ごとに違う。銘板を印刷やエッチングでまとめて作り、番号だけを後から刻印するのか、番号まで入れた銘板を 1 枚ずつ作るのかで、発注の単位と納期が変わる。誰が番号を入れるのか(銘板の業者か、装置の組立先か)を注文書に書いておく。
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警告の銘板は、図記号と色を規格に合わせる
JIS B 9960-1 は、感電のリスクがある電気装置を内蔵していることを別の方法で明示していないエンクロージャに、ISO 7010-W012 の図記号を扉かカバーに表示するよう求め、危険な表面温度を警告する必要がある場合は ISO 7010-W017 を用いるとしている[1]。インバータなどで電源を切っても電圧が残る部品には、感電の警告と放電に必要な時間を示す警告文を恒久的に消えない方法で表示する(6.2.4)[1]。
安全標識の形と色の決め方は JIS Z 9101(ISO 3864-1 と一致)が定めている。この規格は安全標識と安全マーキングのデザインの原則を定めるもので、安全標識を含む規格を作るときに適用する基本原則だとしている[6]。警告の銘板を自社で作図するときは、独自の色や形にせず、こうした規格の図記号を使う。仕入先に「警告ラベル一式」と頼むだけだと、図記号の種類も大きさも仕入先任せになるので、使う図記号の番号と文言を指定する。
どう作るか:材料ごとに指定する規格がある
アルミの陽極酸化(アルマイト)の銘板
アルミ板に陽極酸化をかけ、印刷や染色で文字を入れる銘板は多い。JIS H 8601 は 2025 年 12 月に改正され、1999 年版を置き換えた(JIS マーク表示認証では 2026 年 12 月 21 日まで 1999 年版を適用してもよい)[3]。この規格は、加工業者が注文者から得る情報として、規格の番号、製品の用途、アルミ材料の仕様(材質・質別など)、有効面、前処理の種類、皮膜厚さの等級、無着色か着色か、封孔処理の有無と方法、着色方法、接点痕の位置、外観と色の許容範囲、耐食性・耐摩耗性・促進耐光性などの要求と試験方法を挙げている[3]。
皮膜の種類は等級の記号で 7 種類(AA3・AA5・AA6・AA10・AA15・AA20・AA25)に分かれ、平均皮膜厚さはそれぞれ 3.0 μm 以上から 25.0 μm 以上までである[3]。参考の用途例では、車両外装、屋外の土木・建築部材、船舶用品は AA10 以上の欄に、屋内の建築部材や家電部品は AA5・AA6 の欄に挙がっている[3]。屋外の設備に付ける銘板なら、等級は用途例の屋外の欄を見て決める。染色した銘板が日光で退色するのを避けたいなら、着色皮膜の光堅ろう度を協定で適用し、その場合の品質は屋内製品 5 級以上、屋外製品 9 級以上とされている[3]。光堅ろう度は協定で適用する項目なので、書かなければ試験されない。
陽極酸化の皮膜そのものの指定は表面処理の種類と図面の記号で、硬質の皮膜は同じシリーズの硬質アルマイトの指定で扱う。
印刷の銘板:付着性の試験の扱い
金属板や樹脂板に塗料やインクで印刷する銘板では、印刷がはがれないかが問題になる。塗膜の付着性の試験として使われることが多い JIS K 5600-5-6(クロスカット法)は、塗膜に直角の格子パターンを素地まで切り込んで、はく離に対する耐性を評価する方法で、結果は 6 段階で分類できる[4]。ただしこの規格は、この試験方法を付着性の測定手段とみなしてはならないと明記し、付着性が必要な場合は JIS K 5600-5-7 を参照するとしている[4]。カットの間隔は膜厚と素地で決まり、例えば膜厚 60 μm までの硬い素地では 1 mm 間隔とされ、250 μm を超える塗膜や模様塗膜には適さない[4]。
銘板の印刷で使う場合は、「クロスカットで分類 ○ 以内」のように試験方法と合否の分類を書き、試験を銘板の現物で行うのか、同じ条件で印刷した試験板で行うのかを決める(当方の提案)。
粘着で貼る銘板:粘着力の値の条件
銘板を両面テープや粘着剤付きのシートで貼る場合、仕入先の資料に粘着力の値が載っていることが多い。JIS Z 0237 の粘着力の試験は、テープやシートをステンレスの試験板に貼って 180° に引きはがす方法(方法 1)などで、特に指定のない限り温度 23 ℃・湿度 50 % の標準状態で行う[5]。両面テープをステンレス試験板に対して引きはがす方法(方法 3)や、低温での方法、90° に引きはがす方法もある[5]。
つまり資料の値は、平らなステンレスの板に、標準の温度で貼ったときの値である。実際に貼る面が塗装面、粉体塗装の凹凸のある面、樹脂の成形品、油の付いた面なら、値は同じにならない。屋外や高温になる場所に貼るなら、なおさら現物の面と使う温度で確かめる。この規格には促進耐候性処理と促進耐光性処理の附属書もあるので[5]、屋外用なら処理の後の粘着力を求めるという書き方もできる(当方の提案)。
付け方:穴をあけてよい面か
銘板をリベットやねじで留めるか、粘着で貼るかは、外れたときの影響と、相手の面に穴をあけてよいかで決まる。ここに一つ、やってはいけないことがある。
JIS B 8361 は、気体封入式アキュムレータについて、刻印の方法と位置は強度に影響を与えないようにし、表示する場所が足りなければタグに表記して恒久的な方法で取り付ける、としている(5.4.3.1.1)。さらに、アキュムレータは本体を機械加工・溶接その他の方法で変更してはならない、としている(5.4.3.3.3)[2]。圧力容器や圧力のかかる部品の壁に、銘板を留めるための穴をあけたり、銘板を溶接したりしない。銘板は支持金具やタグで付け、取付けの方法を装置の図面に書いておく。
電気のエンクロージャも同じで、JIS B 9960-1 は、エンクロージャに取付け孔がある場合、取付け後にそれらの孔が必要な保護を損なわないようにする手段が要ることもある、としている(11.4)[1]。保護等級を指定した盤の扉に、後から銘板のリベット穴をあける場合は、保護等級が保たれるかを確かめる。
版下(データ)と校正
銘板の文面と配置は、図面の注記で渡すより、版下のデータで渡す方が食い違いが少ない。決めておくことは次のとおり。
1. データの形式と、誰が作るか
発注側が作って渡すのか、仕入先が作って承認をもらうのか。
2. 文字の大きさと書体
読む距離から決める。細い文字はエッチングや印刷でつぶれることがある。
3. 色
色見本の番号か、限度見本で決める。陽極酸化の着色の色は、JIS H 8601 では受渡当事者間の協定によるとされ、標準見本や限度見本で表してもよい[3]。
4. 校正の回数と承認の記録
初回は試作品で承認し、承認した版を以後の基準にする。
受け入れるときに確かめること
1. 文面
版下と一致しているか。定格の数字や単位、製造番号の桁。
2. 見た目
文字のかすれ、色、傷。JIS H 8601 は、外観の試験を照度 500 lx 以上で目視によって行うとしているので[3]、陽極酸化の銘板を見る条件の目安にできる。
3. 耐久の試験の記録
注文書で求めた付着性・粘着力・耐光性などの試験の結果。
4. 取り付けた後
装置に取り付けた状態で、据付け後もはっきり見える位置にあるか[1]。
注文書の書き方の例
決まった様式は無い。発注側として書いておきたい内容を一つの例にまとめる。
「定格銘板。アルミ A5052P-H32、厚さ 0.8 mm、陽極酸化 JIS H 8601 等級 AA15、黒色染色・封孔処理あり、着色皮膜の光堅ろう度 9 級以上(屋外)。文面は添付の版下による。製造番号欄は空欄とし、組立時に刻印する。4 隅に Φ3.2 の穴、ステンレスのリベットで支持金具に固定(圧力のかかる壁には取り付けない)。初回は試作 2 枚で承認を得ること。版下・材料・処理の変更は事前承認を要する。」
よくある質問
銘板は貼るだけのラベルでもよいですか
規格が「恒久的な方法」「消えない方法」を求めている表示では[1][2]、使う環境で装置の寿命の間読めることが必要になる。ラベルにするなら、粘着力と耐候性を実際の面と環境で確かめる[5]。
粘着テープの資料の値が十分大きいのに、はがれました
JIS Z 0237 の粘着力は、特に指定がなければステンレスの試験板に標準状態で貼って測った値である[5]。貼る面の材質・凹凸・汚れと、使う温度が違えば値は変わる。現物の面で確かめる。
陽極酸化の銘板の色が、ロットで少しずつ違います
JIS H 8601 は、着色した皮膜の色とその許容範囲を受渡当事者間の協定によるとし、標準見本や限度見本で表してよいとしている[3]。許容範囲を見本で決めていなければ、まず見本を作って合意する。
まとめ
銘板は、何を書くかを製品側の規格(機械の電気装置なら JIS B 9960-1、油圧機器なら JIS B 8361)が決め、どう作るかを材料・処理・試験の規格で指定する。規格は表示が環境に耐え、恒久的・消えない方法であることを求めているので、耐える年数と環境も要求に含める。警告の銘板は ISO 7010 などの図記号と JIS Z 9101 の原則に合わせる。陽極酸化の銘板は JIS H 8601 の等級・着色・封孔・光堅ろう度を書き、光堅ろう度は協定で適用する場合に屋外 9 級以上となる。印刷のクロスカット試験は付着性の測定ではないことに注意し、粘着の値はステンレス試験板での値なので現物の面で確かめる。圧力のかかる壁には、穴をあけたり溶接したりして銘板を付けない。保護等級を指定した盤に穴をあけて付けるなら、保護等級が保たれるかを確かめる。
同じ束では、油圧シリンダの仕様書に書くこと、制御盤の製作を外注するとき、はんだ JIS Z 3282 の指定、シャフトの真直度の指定も扱う。
出典・参考資料
- JIS B 9960-1:2019 機械類の安全性-機械の電気装置-第 1 部:一般要求事項(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/IEC 60204-1:2016 と一致)
- JIS B 8361:2013 油圧-システム及びその機器の一般規則及び安全要求事項(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2013 年 5 月 20 日改正・2023 年 10 月 20 日確認)
- JIS H 8601:2025 アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2025 年 12 月 22 日改正)
- JIS K 5600-5-6:1999 塗料一般試験方法-第 5 部:塗膜の機械的性質-第 6 節:付着性(クロスカット法)(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 10 月 20 日確認)
- JIS Z 0237:2022 粘着テープ・粘着シート試験方法(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2022 年 1 月 20 日改正)
- JIS Z 9101:2018 図記号-安全色及び安全標識-安全標識及び安全マーキングのデザイン通則(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2018 年 4 月 20 日改正)
- JIS B 9960-1:2023 機械類の安全性-機械の電気装置-第 1 部:一般要求事項(追補 1)(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 3 月 25 日改正・IEC 60204-1:2016/AMD1:2021 と一致)
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