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投稿日:2026年10月17日

制御盤の製作を外注する仕様書——JIS B 9960-1 の調査書、IP 等級、検証と残留電圧

この記事のポイント(結論先出し)

機械の制御盤を外注するときの共通の土台は JIS B 9960-1(IEC 60204-1 と一致)で、附属書 B の「調査書」が、使用者が供給者に渡すべき条件の一覧になっている[1]。電源の電圧・相数・周波数・接地系統、設置場所の環境、扉を開ける人、エンクロージャの保護等級、色やマーキングの言語、技術文書の言語と形式などを、ここに沿って書けば漏れが減る。エンクロージャの保護等級は少なくとも IP22で、一般産業用の例として IP32・IP43・IP54 が挙がっている[1]。検証は、技術文書との一致、保護ボンディング回路の導通、機能試験が必須で(電源自動遮断で故障保護する設計なら電源自動遮断の条件も必須)、絶縁抵抗試験(直流 500 V で 1 MΩ 以上)と耐電圧試験は製品規格が無ければ選択項目なので、やるかどうかを契約で決める[1]。インバータなどで電源を切っても 60 V を超える電圧が 5 秒以上残る部品には、放電時間を示す警告の表示が要る[1]。

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この記事は、自社の機械・設備に載せる制御盤(電源の入口からモーター・センサー・制御機器へつなぐ盤)の設計・製作を外部に発注するときに、仕様書に何を書き、受け取るときに何を確かめるかを扱う。建物の分電盤や受変電設備、家庭の配線の話ではない。

機械の電気装置の要求事項を定める JIS B 9960-1 は、稼働中には手で運搬できない機械に用いる電気・電子・プログラマブル電子の装置に適用され、公称電源電圧が交流 1,000 V 以下・直流 1,500 V 以下、公称周波数 200 Hz 以下で作動する電気装置を対象にしている[1]。規格は機械の電気装置の電源接続点から内側を扱い、電源設備側の要求は JIS C 60364 規格群にある、としている[1]。屋外で使う機械、爆発性の雰囲気で使う機械、巻上機械などには追加の要求があり、この規格だけでは足りない[1]。JIS B 9960-1:2019 は IEC 60204-1:2016 を技術的内容を変えずに JIS にしたもので[1]、2023 年に IEC の追補 1(2021 年)に合わせた追補が出ている[2]。

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仕様は附属書 B の「調査書」に沿って渡す

JIS B 9960-1 の附属書 B(参考)は「機械の電気装置のための調査書」で、基本条件と使用者の追加要求事項について使用者と供給者の情報交換に役立つとし、現場の条件が一般に予想される条件から外れる可能性がある場合に特に有用だと書いている[1]。発注する側から見ると、これは「制御盤メーカーに聞かれる前に渡しておく項目」の一覧である。主な項目と、書かないと何が起きるかを並べる。

調査書の項目(附属書 B) 仕様書で決めること 決めないと起きること(実務の見立て)
1. 特別条件 屋外使用、可燃性物質、爆発性雰囲気の有無 一般の盤として作られ、使えない場所に置かれる
2・4. 電源 公称電圧、相数、周波数、予想短絡電流、接地系統(TN・TT・IT) 短絡電流に耐えない機器が選ばれる、接地のやり方が合わない
3. 環境 電磁環境、周囲温度・湿度、高度、腐食性雰囲気・ほこり、振動 盤内温度が部品の許容を超える、腐食する
5. 感電保護 運転中に扉を開ける人(電気取扱者か)、扉の錠と誰が付けるか 開けてよい人の想定がずれ、保護の作りが合わない
8. 操作機器 押しボタンなどの色(既存機械に合わせる等) 工場内で同じ操作の色が機械ごとに違う
9. コントロールギヤ エンクロージャの保護等級 切削液や粉じんの入る場所に低い等級の盤が来る
10. 配線 導体の識別に特別な方法を使うか 社内標準の色・番号と違う配線になる
12. マーキング 機能表示、刻印、言語、適合が必要な地域の法規制 輸出先で表示や認証が足りない
13. 技術文書 媒体・言語・ファイル形式、輸送の寸法と質量の制限、試験証明書の要否 図面が使える形で来ない、搬入口を通らない

接地系統について、規格の国別の違いの欄は、日本では TN システムは使われておらず TT システムが国の標準である、と書いている[1]。海外の規格書を前提にした仕入先や、輸出先の工場に据え付ける盤では、設置場所の接地系統を必ず書く。輸出の場合は、同じ欄に米国の違い(保護接地の端子の表示、制御回路の最大電圧が交流 120 V など)が並んでいるので[1]、仕向け地を早い段階で伝える。北米向けの部品認証の確かめ方はUL 認定部品の確かめ方で扱った。

エンクロージャと盤内の配置

JIS B 9960-1 は、コントロールギヤのエンクロージャを少なくとも IP22 の保護等級をもつものとし、適用例として、その他の装置を収納する換気式エンクロージャ IP32、一般産業用 IP32・IP43・IP54、ホースによる低圧の洗浄水がかかる場所 IP55、細かな粉じんに対して保護する場所 IP65 を挙げている[1]。ここで参照されている JIS C 0920 は、2026 年に制定された JIS C 60529 に置き換えられた[3]。IP の二つの数字の意味と、部品に指定するときの注意はIP 等級を買う部品に指定するときで扱った。注意したいのは、水以外の液体(切削液・油)に対しては追加の保護方策が必要になる場合がある、と規格が注記していることである[1]。IP の数字だけで、油の多い場所に置けると判断しない。

盤内の配置について、規格は次のような要求と推奨を置いている[1]。

1. 保全のしやすさ
通常の保全や調整でアクセスする機器は作業面から 0.4〜2.0 m の高さに置かなければならない。端子は作業面から 0.2 m 以上の高さが推奨されている(11.2.1)。

2. 熱
エンクロージャ内の温度上昇は、構成品の製造業者が指定する周囲温度を超えてはならない(11.2.3)。周囲温度の上限を仕様書に書かないと、盤メーカーは冷却を見積れない。

3. 扉
扉は垂直に丁番を付け、幅 0.9 m 以下、95° 以上開くことが推奨されている。扉・カバーの止め金具は脱落防止形が望ましい(11.4)。

4. 液体の入る区画との仕切り
電気装置を収納するエンクロージャと、冷却剤・潤滑油・作動油の入っている区画などとの間に開口部を設けてはならない(11.4)。油圧ユニットと一体の盤を発注するなら、ここを確かめる。油圧機器側の指定は同じ束の油圧シリンダの仕様書に書くことで扱う。

電源断路器と配線

電源断路器は、オフとオンの位置を「○」と「|」で明示し、オフの位置にロックできる手段(例えば南京錠)を備え、ロック中は手元操作でも遠隔操作でも閉路できないようにしなければならない、とされている(5.3.3)[1]。操作手段はエンクロージャの外に付け、作業面から 0.6 m 以上 1.9 m 以下の手が届く位置に設ける(上限は 1.7 m を推奨)(5.3.4)[1]。保守のときに錠を掛けて作業するのが前提の作りなので、錠を掛けられない断路器が付いて来たら受け入れない。

導体の色について、規格は次のように定めている(13.2)[1]。

  • 保護導体を色で識別する場合は全長にわたって緑と黄の 2 色の組合せとし、この組合せは保護導体と保護ボンディング導体に限る
  • 中性線を色だけで識別する場合は青とし、ライトブルーを推奨する
  • 色分けを使う場合の推奨は、交流・直流の電力回路が黒、交流制御回路が赤、直流制御回路が青、規格が定める例外回路がオレンジ

推奨色の電線が無い場合(多芯ケーブル内の導体など)は推奨によらなくてもよい、ともある[1]。社内標準で別の色や線番号の付け方を決めているなら、調査書の項目 10 に当たる内容として仕様書に書く。エンクロージャの外へつながる制御用配線には端子台またはプラグ・ソケット対を使い、非金属製のダクトは難燃性の絶縁材料のものとする(13.3)。ケーブルを引き込む手段はエンクロージャの保護等級を低下させてはならない(13.4.1)[1]。端子台とケーブルグランドの選び方は同じ束の端子台の選び方とケーブルグランドの選び方で扱う。盤の外の電線の種類は電線・ケーブルの種類と選び方を参照してほしい。

残留電圧:電源を切っても危ない部品がある

制御盤で最も見落とされやすい危険がここにある。JIS B 9960-1 は、電源を切り離したときの残留電圧が 60 V を超える充電部品は、放電が速すぎることが装置の正常な機能に影響しない限り、5 秒以内に 60 V 以下に放電しなければならない、としている(蓄積電荷が 60 μC 以下の部品を除く)。5 秒以内の放電が機能に影響する場合は、その部品を収納するエンクロージャか近くのよく見える場所に、感電の警告と、エンクロージャを開ける前に必要な放電時間を示す警告文を、恒久的に消えない方法で表示しなければならない[1]。規格の注記は、周波数変換器(インバータ)と直流バス電源の放電時間は通常 5 秒より長くなる、と書いている[1]。

インバータを載せた盤では、放電時間の警告表示があるかを受入のときに確かめる。使用する側の義務として、労働安全衛生規則は、電路を開路して点検・修理などの電気工事の作業を行うときは、開路に用いた開閉器に作業中施錠するか通電禁止の表示をするか監視人を置くこと、電力ケーブルや電力コンデンサなどを有する電路で残留電荷による危険のおそれがあるものは安全な方法で確実に放電させることを、事業者に求めている(第 339 条)[4]。感電の危険がある充電部分には囲いか絶縁覆いを設けることも求めている(第 329 条)[4]。盤の作りで錠と放電時間の表示を備えておくと、受け入れた後の作業がこの規則に沿いやすくなる。

表示と技術文書

受電するエンクロージャには、据え付けた後もはっきり見えるように、消えない方法で、供給者名または商標、該当する場合の種類の表記またはモデル、製造番号、基本文書番号、各入力電源の定格電圧・相数・周波数(交流の場合)・全負荷電流をマーキングしなければならない(16.4)[1]。2019 年版のこの一覧には「要求される場合,認証済みの表示,又は国内の法律又は地域の規制で要求され得るその他のマーキング」もあったが、2023 年の追補 1 で削除された[2]。輸出先の法規制で求められる表示は、調査書の項目 12 で別に確かめる[1]。感電のリスクがある電気装置を内蔵していることを別の方法で明示していないエンクロージャには、ISO 7010-W012 の図記号を扉かカバーに表示する(16.2.1)[1]。全てのエンクロージャ・電気装置・制御機器・部品には、技術文書と同じ略号を付ける(16.5)[1]。銘板の材質や付け方は同じ束の銘板(ネームプレート)の発注で扱う。

技術文書として提供すべき情報には、据付けと電源接続の説明、各入力電源の電気装置の短絡電流定格、電源の定格と接地系統の種類、撤去やサービスに要るスペース、保全の手順と頻度、交換用機器の接続の詳細、予備品の情報などが挙がっている(17.2)[1]。短絡電流定格は、設置場所の予想短絡電流(調査書の項目 4)と突き合わせる数字なので、両方がそろっているかを見る。

検証:何を必須にし、何を契約で決めるか

JIS B 9960-1 の箇条 18 は、その機械の製品規格が無い場合、次の a)・b)・c)・h) を検証に含めなければならず、d)〜g) のいくつかを含めてもよい、としている[1]。

a) 技術文書との一致(必須)
b) 保護ボンディング回路の導通(必須)
c) 電源自動遮断による保護の条件(電源自動遮断で故障保護する場合は必須)
d) 絶縁抵抗試験:実施する場合、相導体と保護ボンディング回路の間を直流 500 V で測り 1 MΩ を下回ってはならない(ブスバーなど特定部分は 50 kΩ 以上)
e) 耐電圧試験:実施する場合、最大試験電圧は定格供給電圧の 2 倍か 1,000 V の大きい方で、1 秒間以上加える
f) 残留電圧に対する保護の検証
g) 保護ボンディングの関連要求の検証
h) 機能試験(必須)

規格はこの順序で行うことを推奨し、検証結果は文書化しなければならないとしている[1]。2023 年の追補は、検証を順序どおりに行えない場合でも a) と b) は最初に行わなければならない、を加えている[2]。絶縁抵抗と耐電圧は製品規格が無ければ選択項目なので、「規格どおりに検証すること」とだけ書くと、やるかどうかが仕入先の判断になる。やるならそう書き、試験電圧に耐えない部品やサージ保護機器は試験中に取り外す(18.3・18.4)[1]ことも含めて手順を出してもらう。二つの試験の違いと条件の決め方は絶縁抵抗試験と耐電圧試験を仕様に入れるときで扱った。

どの検証を仕入先の工場で行い、どれを据付け後に現場で行うかも分けておく。現場で組立・接続する機械では、保護ボンディング回路の導通(試験 1)を組立後に確かめる必要がある、と規格の表 9 は整理している[1]。機械や電気装置を変更・改造したときは、再検証が必要かを考慮する(18.7)[1]。

注文書の書き方の例

決まった様式は無い。発注側として書いておきたい内容を一つの例にまとめる。

「○○機用制御盤の設計・製作。JIS B 9960-1(2019 年版に 2023 年の追補 1 を反映したもの)による。電源 交流 200 V 3 相 60 Hz、接地系統 TT、受電点の予想短絡電流 ○ kA。設置場所 屋内、周囲温度 0〜40 ℃、切削液の飛まつあり。エンクロージャ保護等級 IP54 以上、切削液に対する追加の保護方策を提示すること。電源断路器はオフ位置で南京錠によりロックできること。導体の色は JIS B 9960-1 の 13.2.4 の推奨による。表示は日本語、技術文書は日本語の PDF と回路図の CAD データ。出荷前に a)・b)・h) の検証(電源自動遮断で故障保護する設計なら c) も)に加え絶縁抵抗試験を実施し、記録を提出すること。残留電圧が 5 秒以内に 60 V 以下にならない部品には放電時間の警告を表示すること。設計の変更・部品の代替は事前承認を要する。」

よくある質問

IEC 60204-1 で指定された場合、JIS B 9960-1 でよいですか

JIS B 9960-1:2019 は IEC 60204-1:2016 を技術的内容を変更せずに作成した規格である[1]。どちらの版を基準にするか(追補を含めるか)を注文書に書いておくと、仕入先の解釈がそろう[2]。輸出先で別の規格や認証を求められるなら、それは別に書く。

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絶縁抵抗試験は必ずやってもらえますか

機械の製品規格が無い場合、JIS B 9960-1 では絶縁抵抗試験と耐電圧試験は「含めてもよい」項目である[1]。必要なら注文書に書く。実施する場合の判定は、直流 500 V で 1 MΩ 以上である[1]。

盤のエンクロージャに後から穴をあけてもよいですか

エンクロージャに開口部や取付け孔を設ける場合は、必要な保護等級を確実にする手段が要るとされている[1]。現場で穴を追加するなら、ケーブルグランドなどで保護等級が下がらないようにする。

まとめ

機械の制御盤を外注するときは、JIS B 9960-1 の附属書 B の調査書に沿って、電源(電圧・相数・周波数・予想短絡電流・接地系統)、環境、扉を開ける人、保護等級、色とマーキングの言語、技術文書の形を仕様書に書く。エンクロージャは少なくとも IP22 で、油や切削液には IP の数字だけでは足りないことがある。電源断路器はオフでロックできること、保護導体は緑と黄の組合せに限ることが要求されている。インバータなど残留電圧が 5 秒以内に下がらない部品には放電時間の警告が要る。検証は技術文書との一致・保護ボンディングの導通・機能試験などが必須で、絶縁抵抗と耐電圧は製品規格が無ければ選択項目なので、やるかどうかを契約で決める。

同じ束では、油圧シリンダの仕様書に書くこと、銘板(ネームプレート)の発注、はんだ JIS Z 3282 の指定、シャフトの真直度の指定も扱う。

出典・参考資料

  1. JIS B 9960-1:2019 機械類の安全性-機械の電気装置-第 1 部:一般要求事項(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/IEC 60204-1:2016 と一致)
  2. JIS B 9960-1:2023 機械類の安全性-機械の電気装置-第 1 部:一般要求事項(追補 1)(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 3 月 25 日改正・IEC 60204-1:2016/AMD1:2021 と一致)
  3. JIS C 60529:2026 電気機械器具の外郭による保護等級(IP コード)(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2026 年 1 月 20 日制定・JIS C 0920:2003 を廃止して置き換え)
  4. 労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)(e-Gov 法令検索で閲覧/2026 年 10 月 1 日施行の版)

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