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ケーブルグランドの選び方と発注——適合ケーブル外径・IP コード、防爆用は機器の検定条件から

この記事のポイント(結論先出し)
ケーブルグランドは、制御盤や機器の箱にケーブルを引き込み、ケーブルを固定してすき間をふさぐ部品である。一般用のケーブルグランドには JIS の製品規格が見当たらず、船用には JIS F 8801、防爆用には JIS C 60079-0 の附属書がある[4][2]。選ぶ軸は、使うケーブルの外径(公差を含む)が適合範囲に入るか、箱に付けるねじ、引き込んだ後の保護等級、ケーブルを引っ張ったときに接続部に力が伝わらないかである。機械の電気装置の JIS は、グランドなどでケーブルを引き込む手段がエンクロージャの保護等級を低下させてはならないとしている[1]。爆発の危険のある場所では防爆構造の電気機械器具を使わなければならず[5]、防爆構造電気機械器具は型式検定の対象である[6]。防爆機器のグランドは自分で選ばず、機器の検定・認証の条件に合ったものを機器メーカーに確かめる。
目次
この記事が扱う範囲と、規格の置かれ方
この記事は、工場の制御盤、機械の端子箱、屋外や洗浄のかかる場所の機器に使う、工業用のケーブルグランドを発注するときの話である。家庭向けの配線材の話は扱わない。
まず規格の状況を押さえておく。一般の工業用のケーブルグランドを対象にした JIS の製品規格は、日本産業標準調査会の JIS 検索で見当たらない(2026 年 10 月時点、当方の確認)。用途を限った規格としては、船内の防水を要する箱に用いる電線貫通金物を規定した JIS F 8801 があり、箱にナット締めする A 形・AM 形の保護等級を IP66 としている[4]。爆発性雰囲気で使う機器のケーブルグランドは、JIS C 60079-0 の附属書 A が構造・試験・表示の補足要求事項を定めている[2]。
つまり一般用は、製造業者ごとの仕様(適合ケーブル外径、ねじ、保護等級、材質)で比べることになる。この記事では、防爆用の規格に書かれている考え方のうち、一般用の発注にも当てはまるもの(適合外径の決め方、引留め、引込部の角)を取り出して使う。防爆の規格をそのまま一般用の要件にするという意味ではない。
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ケーブルの外径から選ぶ:公差を含めて範囲に入れる
ケーブルグランドの型番は、通常、取り付けるねじの大きさと、締め付けて固定できるケーブルの外径の範囲で決まる。JIS C 60079-0 の附属書 A は、引込部に適合するケーブルの最小直径は製造業者が指定し、使用者はケーブルグランドの中で使うために選定したケーブルの最小寸法が、公差を考慮に入れてこれらの指定値と等しいかそれ以上になるよう配慮する必要がある、と注記している[2]。防爆用の規格の注記だが、考え方は一般用でも同じである。ケーブルの外径は呼びの値ではなく、ケーブルの仕様書にある外径の範囲(公差)で見る。
発注で起きやすいのは、ケーブルの銘柄を後から替えて外径が変わる場合である。同じ心数・同じ断面積でも、シースの材料やシールドの有無で外径が違う。グランドの適合範囲の下限近くで使えば締付けが甘くなり、上限近くでは入らないか、シールが無理に押しつぶされる。仕様書には「使用ケーブル:品名・心数・断面積・外径の範囲」を書き、ケーブルを替えるときはグランドの適合範囲を確かめ直す手順にしておく(当方の提案)。ケーブルの品名と規格の指定はVCTF・VCT・CV ケーブルの違いと選び方で扱った。
シールと引留め:何でふさぎ、何で引っ張りを受けるか
JIS C 60079-0 は、ケーブルグランドの構成部品として、ケーブルの引張力やねじりが接続部に伝わらないようにする引留め機能装置、シールリングを圧縮して機能を果たす圧縮エレメント、引込部とケーブルの間を確実にシールするシールリングを定義している[2]。ケーブルとグランド本体の間のシーリングは、弾性体のシールリング(パッキン)、金属製または複合体のシールリング、充てんコンパウンドのいずれかによるとし、関連するケーブルの形状に適したものでなければならない、としている[2]。
引留めについて、同じ附属書は、ケーブルグランドはケーブルを引き留めることで、それに加わる引張りやねじりの力が接続部に伝わらないようにする、と定める[2]。そのうえで、グループ II または III の電気機器のケーブルグランドについて、規定の値の 25 % に減じた引留め試験に合格するだけのグランドは、十分な引留め機能を備えないかもしれず、使用者は引張りやねじりの力が接続部に伝わらないようにケーブルに追加の引留めをしなければならないことを文書に明記し、記号「X」を表示する、としている[2]。
一般用のグランドでも、ケーブルが動く場所(可動部の近く、振動する機械、引っ張られやすい通路)では、グランドだけで引っ張りを受けられるかを製造業者の資料で確かめ、足りなければ箱の外でケーブルを固定する。引っ張りが端子に伝わると、ねじ式の端子が緩んだり、電線が抜けたりする。端子側の指定は同じ束の端子台の選び方で扱う。
引込部の角でケーブルを傷めない
JIS C 60079-0 の附属書 A は、ケーブルグランドにはケーブルを傷付けるような鋭い縁があってはならないとし、可とうケーブルの場合は、引込部の先端を 75 度以上の角度で丸みをもったエッジとし、その半径は引込部に適用できる最大ケーブル直径の 1/4 以上(ただし 3 mm を超える必要はない)とする、としている[2]。これは防爆用の規定だが、ケーブルが曲げられたり動いたりする用途で、グランドの出口の形を製品ごとに比べるときの物差しになる。
引き込んだ後の保護等級:グランドで箱の IP を下げない
機械の電気装置の JIS B 9960-1 は、個別のグランドやブッシングを用いてケーブルやダクトをエンクロージャ内に引き込む手段は、エンクロージャの保護等級を低下させてはならない、としている[1]。同じ規格は、エンクロージャにケーブルを通すための開口部を設ける場合は、装置に必要な保護等級を確実にする手段を提供しなければならないとし[1]、配線用の接続箱などには、開けたまま未使用のノックアウトやその他の開口部があってはならない、としている[1]。
箱の保護等級(IP コード)が IP65 でも、そこに付けるグランドの保護等級が低ければ、引き込んだ状態の等級は下がる。IP コードの JIS は 2026 年に JIS C 60529 として制定された[3]。箱とグランドを別々の仕入先から買う場合は、グランドの保護等級が箱の等級以上であることと、その等級がどの取付け条件(締付けトルク、パッキンの有無、適合外径の範囲内のケーブル)で得られる値なのかを確かめる。IP コードの読み方と試験条件の決め方はIP 等級を買う部品に指定するときで扱い、グランドの型番が変わったら防水性が変わりうることもそちらで書いた。
IP コードは水と固形物の侵入に対する保護で、油や薬液に対する耐性は表さない。JIS B 9960-1 も、水の浸入に対する保護等級は JIS C 0920 に規定されているとしたうえで、水以外の液体には追加の保護方策が必要となる場合がある、と注記している[1]。切削液や洗浄剤がかかる場所では、シールリングとグランド本体の材質がその液に耐えるかを製造業者に確かめる。ゴムの材質の指定はゴム部品の材質と硬さの指定で扱った。
ねじ:箱の穴とグランドのねじを合わせる
ケーブルグランドは、箱のねじ穴にねじ込むか、穴に通してナットで締める。ねじの規格は製品によってメートルねじ、管用ねじなどがあり、同じ「16」「20」の呼びでも規格が違えば合わない。発注書には、箱側の穴の仕様(ねじの種類と呼び、または通し穴の径と板厚)を書く。
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防爆の分野では、ねじのかみ合いの長さまで決まっている。JIS C 60079-14 は、耐圧防爆構造の容器とケーブル引込装置の間について、平行ねじの場合のかん合は通常、完全ねじ山 5 山以上または 8 mm 以上のいずれか大きい値とし、取り付けた後でもねじで十分な締付けができればシーリングワッシャを使ってもよい、としている[7]。一般用ではこの数値は要件ではないが、薄い板金の箱に直接ねじ込むと、かみ合う山の数が足りないことがある。板厚が薄い箱では、ナットで締める形にするか、箱の製作の段階で穴まわりを決めておく(当方の提案)。
防爆の場所では、グランドを自分で選ばない
労働安全衛生規則第 280 条は、引火性の物の蒸気や可燃性ガスが爆発の危険のある濃度に達するおそれのある箇所で電気機械器具を使うときは、その蒸気やガスに応じた防爆性能を有する防爆構造電気機械器具でなければ使用してはならない、と定めている[5]。第 281 条は可燃性の粉じんについて同じ趣旨を定めている[5]。労働安全衛生法施行令第 14 条の 2 は、型式検定を受けるべき機械等に防爆構造電気機械器具を挙げている(船舶安全法の適用を受ける船舶に用いられるものを除く)[6]。
ケーブルの引込みは、防爆性能の一部である。JIS C 60079-0 は、ケーブルグランドを「防爆構造を維持するために使用するもので、1 本以上のケーブル及び/又は光ファイバケーブルを電気機器に引き込むためのデバイス」と定義している[2]。JIS C 60079-14 は、ケーブル引込方式は機器の規格の要件に適合し、使うケーブルの種類に適したもので、該当する保護方式を維持することが重要だとし、耐圧防爆構造の機器への引込みについては、指定されたケーブルを使った試験を行い電気機器の一部として認証されたものなどを選ぶ、としている[7]。
ここから、発注で守ることがはっきりする。防爆機器のグランドを、外形やねじが合うからという理由で一般用の製品や別の型番に替えてはならない。替える、追加する、ケーブルを替える場合は、どのグランド・どのケーブルの組合せで検定や認証を受けているかを機器メーカーに確かめ、その範囲で選ぶ。防爆の場所の区分や機器の選定そのものは、事業者の設備側の判断で、部品の発注だけでは決まらない。
| 用途 | よりどころ | 発注での扱い |
|---|---|---|
| 一般の工業用(制御盤・機器の箱) | JIS の製品規格は見当たらない。製造業者の仕様と、引込みで IP を下げない要求[1] | 適合外径・ねじ・IP・材質を仕様書で指定 |
| 船内の防水を要する箱 | JIS F 8801(ナット締めする A 形・AM 形は IP66)[4] | 形式と保護等級を規格で指定 |
| 爆発の危険のある場所 | 安衛則第 280 条・第 281 条[5]、型式検定[6]、JIS C 60079 規格群[2][7] | 機器メーカーに検定・認証の条件を確かめ、その範囲で選ぶ |
発注書・仕様書に書く項目
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| ケーブル | 品名・心数・断面積、外径の範囲(公差を含む)、シールドの有無 |
| 箱側の取付け | ねじの種類と呼び、または通し穴の径と板厚 |
| 保護等級 | 必要な IP コードと、その値が得られる取付け条件(締付けトルクなど) |
| 環境 | かかる液の種類(切削液・洗浄剤)、温度、屋外か、紫外線 |
| 引留め | ケーブルが動くか・引っ張られるか、箱の外での固定の要否 |
| 防爆 | 防爆の場所で使うか。使うなら機器の検定・認証の条件に合う型番を機器メーカーに確かめる |
| 変更 | グランドの型番・シール材の変更は事前に連絡 |
受け入れるとき、組み付けるときに確かめること
受入では、型番が注文どおりか、シールリングなどの付属品が揃っているかを見る。組付けを外注する場合は、製造業者が示す締付けトルクで締めること、適合範囲外のケーブルにテープを巻いて太らせるような使い方をしないこと、使わない引込み穴は適合する栓でふさぐことを仕様に入れる(当方の提案)。B9960-1 は、開けたまま未使用のノックアウトがあってはならないとしている[1]。
制御盤として受け取るときは、引込み部をケーブルごと軽く引っ張ってもケーブルが動かないか、グランドの位置で水がたまる向きになっていないかを目で確かめる。機械の可動部に付くセンサーやスイッチへの配線を引き込む場合は、部品側の保護等級も合わせて見る。可動部の位置を検出するスイッチの指定は同じ束のリミットスイッチの選び方で扱う。
注文書の書き方の例
一般工業用で切削液がかかる場所を例に、書いておきたい内容を並べる。様式に決まりは無い。
「品名:ケーブルグランド(一般工業用、防爆の場所では使用しない)、形式:○○。適合ケーブル:○○(4 心 1.25 mm²、外径 8.5〜9.5 mm)。取付け:箱側 M20 のねじ穴(板厚 2.0 mm)、ロックナット付き。保護等級:IP66 以上(製造業者が示す締付けトルクで取り付けた状態)。使用環境:水溶性切削液がかかる。シールリングの材質と耐液性を記載した資料を添付すること。型番・シール材の変更は事前承認を要する。」
よくある質問
手持ちのケーブルが、グランドの適合範囲より少し細いのですが
適合範囲は製造業者が指定するもので、ケーブルの最小寸法は公差を含めて指定値以上になるよう選ぶ、というのが防爆用の規格の考え方である[2]。一般用でも、範囲に合うグランドに替える。テープを巻いて太らせると、シールと引留めが製造業者の想定と違う状態になる。
箱が IP65 なら、どのグランドを付けても IP65 ですか
そうはならない。引込みの手段はエンクロージャの保護等級を低下させてはならないとされており[1]、グランドの等級と取付けの条件が合っていることが前提になる。
防爆モーターの端子箱のグランドが傷んだので、一般用で交換してよいですか
してはならない。爆発の危険のある箇所では防爆性能を有する電気機械器具を使わなければならず[5]、ケーブルグランドは防爆構造を維持するための部品である[2]。どのグランドで検定・認証を受けているかを機器メーカーに確かめ、その型番で交換する。
まとめ
一般の工業用ケーブルグランドには JIS の製品規格が見当たらないので、適合ケーブル外径・ねじ・保護等級・材質を仕様書で指定して比べる。ケーブルの外径は公差を含めて適合範囲に入れ、銘柄を替えるときは確かめ直す。シールと引留めの仕組みを確かめ、ケーブルが動く場所では箱の外でも固定する。グランドで箱の保護等級を下げないこと、未使用の穴を開けたままにしないことは、機械の電気装置の JIS が求めている。爆発の危険のある場所では防爆構造の電気機械器具を使う義務があり、グランドも防爆性能の一部なので、機器の検定・認証の条件に合うものを機器メーカーに確かめて選ぶ。
同じ束では、端子台の選び方、リミットスイッチの選び方、ステッピングモーターの選び方、電解コンデンサの寿命の見方も扱う。
出典・参考資料
- JIS B 9960-1:2019 機械類の安全性-機械の電気装置-第1部:一般要求事項(追補 1:2023 を含む)(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 3 月 25 日改正)
- JIS C 60079-0:2010 爆発性雰囲気-第0部:電気機器-一般要件(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2010 年 7 月 25 日改正・2025 年 10 月 27 日確認)
- JIS C 60529:2026 電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2026 年 1 月 20 日制定)
- JIS F 8801:2002 船用電線貫通金物-箱用(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2002 年 5 月 7 日改正・2022 年 10 月 25 日確認)
- 労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)第 280 条・第 281 条(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
- 労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号)第 14 条の 2(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
- JIS C 60079-14:2008 爆発性雰囲気で使用する電気機械器具―第14部:危険区域内の電気設備(鉱山以外)(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2008 年 2 月 25 日制定・2024 年 10 月 25 日確認)
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