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承認の段は何段にするか——段を増やしても法令の期限は止まらない

この記事のポイント(結論先出し)
承認の段は「多い/少ない」で決めるものではなく、その段でしか止められないものがあるかで決まる。同じ人が同じ資料を見て順番に押すだけの段は、増やしても検出力は上がらず、滞留だけが増える。段を設計するときに押さえる点は四つある。①その段が見るのは金額か・仕様か・予算か・法令かを一つに絞る、②承認する人・記録する人・現物を受け取る人を分ける、③一人しか押せない段を作らない、④運用を始めたあとは段の構成を簡単に変えられないという前提で最初の並びを決める。とくに④は見落とされやすい。承認待ちの案件が残っているあいだに段を足したり消したりすると、進行中の依頼が「いま何段目か」を見失う。そして忘れてはならないのは、社内で承認が止まっているあいだも、取適法の期限は止まらないという点である。4条明示は発注の都度「直ちに」行う必要があり[1][2]、代金の支払期日は受領日から起算して 60 日以内に定めなければならない[2]。
目次
「段が足りない」と「段が多すぎる」は、同じ原因から起きる
承認について相談を受ける会社は、だいたい両極のどちらかにいる。片方は、課長・部長・本部長・管理部と四段あって、発注書が出るまでに一週間かかる会社である。もう片方は、担当者が自分で発注して誰も見ていない会社である。一見すると正反対だが、どちらも同じところでつまずいている。それぞれの段が何を見る段なのかを決めていないことである。
何を見る段かが決まっていないと、二つの方向に転ぶ。責任を負いたくない側に転べば、段はどんどん増える。「念のため部長にも」「金額が大きいから本部長にも」と足していくが、追加した段が見る観点は前の段と同じなので、二重に同じ確認をしているだけになる。逆に、速さを優先する側に転べば段は消える。「どうせ誰も中身は見ていない」という実感が正しいので、消しても何も起きない。何も起きないまま、ある日、発注済みの金型代や仕様変更の負担が問題になる。
段の数を決める前に必要なのは、段の役割を言葉にすることである。財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準は、統制活動を「経営者の命令及び指示が適切に実行されることを確保するために定める方針及び手続」と定義し、そこには権限及び職責の付与、職務の分掌等が含まれるとしている[3]。承認の段は、この「権限及び職責の付与」を目に見える形にしたものにほかならない。誰に何を判断させるかが決まっていないなら、それは統制活動ではなく、単なる回覧である。
調達現場で押さえるポイント
段を増やすかどうか迷ったら、「その段で止めた実例が過去一年にあるか」を聞いてみるとよい。止めた例が一件も出てこない段は、検出のためではなく責任分散のために置かれている。金額のしきい値をどこで切るか、誰を承認者に指名するかについては発注の承認ルールをどう設計するかで扱っている。この記事は、そこで決めた承認者をどう並べるかの話である。
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段を一つ増やすと、何が増えて何が減るか
段を増やすことには、はっきりした利点がある。同じ書類を別の立場の人が見るので、一人が見落とした誤りを次の人が拾える可能性がある。基準も、職務を複数の者の間で適切に分担または分離させること、たとえば取引の承認、取引の記録、資産の管理に関する職責をそれぞれ別の者に担当させることで相互牽制が働くとしている[3]。
一方で、増やすことの代償も明確である。同基準は内部統制の固有の限界として四つを挙げている。判断の誤り・不注意・複数の担当者による共謀によって有効に機能しなくなる場合があること、当初想定していなかった環境の変化や非定型的な取引には必ずしも対応しない場合があること、整備及び運用に際しては費用と便益との比較衡量が求められること、経営者が不当な目的のために内部統制を無視または無効ならしめることがあること、の四つである[3]。三つ目がここでは重い。段を増やす費用は承認者の時間と案件の滞留であり、それに見合う便益がなければ、増やすこと自体が統制の趣旨に反する。
次の表は、段の数を変えたときに何がどう変わるかを並べたものである。四列目は実測ではなく算術で、「各段がその日のうちに処理される割合を仮に八割とすると、全段が当日中に通る割合はどうなるか」を計算しただけの数字である。実際の処理率は会社によって違うので、自社の数字を入れて計算し直してほしい。
| 段の数 | 一件が止まりうる箇所 | 不在で完全に止まる人数 (各段に一人だけ置いた場合) |
当日中に全段が通る割合 (各段 80% と仮定した算術) |
向いている使い方 |
|---|---|---|---|---|
| 1 段 | 1 | 1 | 80% | 消耗品・単価が決まった継続品目 |
| 2 段 | 2 | 2 | 64% | 仕様を見る段と金額を見る段を分けたいとき |
| 3 段 | 3 | 3 | 51% | 予算の枠を別に確認する必要がある大口 |
| 4 段以上 | 4 以上 | 4 以上 | 41% 以下 | 取締役会の決議が必要な案件など、外に根拠があるもの |
この表で読み取ってほしいのは割合そのものではなく、段の数は滞留の確率にそのまま効くという形である。四段目を足すかどうかを議論するときは、「その段があれば止められた案件が過去にあったか」と「その段のために毎回どれだけ待つか」を同じ場で比べる。片方だけを見て決めると、必ず段は増える方向にしか動かない。
直列と並列——順番に見るのか、同時に見るのか
段の並べ方には二つの型がある。直列は、前の段が承認してから次の段に回る形である。並列は、複数の人に同時に回して全員(あるいは規定の人数)の承認をもって成立とする形である。
直列が向くのは、前の段の判断が次の段の判断の前提になる場合である。たとえば「技術が仕様の妥当性を確認する」→「購買が金額と取引先を確認する」→「管理が予算の枠を確認する」という並びでは、仕様が変われば金額も変わるので、同時に見ても意味がない。逆に並列が向くのは、判断が互いに独立している場合である。品質保証の確認と、輸出管理の該当性判定は、互いの結論に依存しない。順番に回すと待ち時間が単純に足し算になるだけである。
実務では、直列に並べた段のうち一つが実質的に並列でよい、という形がよくある。見分け方は簡単で、その段の判断が、前の段の結論を参照しているかを確認する。参照していないなら、その段は前に出しても後ろに回しても結果が変わらない。結果が変わらない段が順番待ちの列に並んでいるなら、それは待ち時間を生むためだけに直列になっている。
もう一点。並列にすると「全員が見た」ことにはなるが、誰が最終的に責任を負うのかがぼやける。並列で三人が承認した案件に問題が起きたとき、三人とも「他の二人も見ている」と考える。並列を使うなら、最後に一段だけ直列の段を置いて、そこを責任の所在にするのが分かりやすい。
段の一番上はどこか——社内規程で決められない天井がある
段の数は社内の判断で決められるが、一番上だけは法律が決めている部分がある。会社法第 362 条第 4 項は、取締役会は重要な業務執行の決定を取締役に委任することができないとし、その例として重要な財産の処分及び譲受け(第 1 号)と多額の借財(第 2 号)を挙げている[4]。金額の大きい設備や資材の購入がこれに当たる場合、社内の承認フローを何段組もうと、取締役会の決議を代替することはできない。
同じ条文の第 6 号は、取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他の業務の適正を確保するために必要な体制の整備を挙げ、第 5 項は、大会社である取締役会設置会社においては取締役会がこの事項を決定しなければならないとしている[4]。その「体制」の中身は会社法施行規則第 100 条第 1 項が定めており、五つが並ぶ。情報の保存及び管理に関する体制、損失の危険の管理に関する規程その他の体制、職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制、使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制、企業集団における業務の適正を確保するための体制の五つである[5]。
ここで見落とされやすいのが三つ目である。「効率的に行われることを確保するための体制」も、整備すべき体制として並んでいる。承認の段を増やすことは四つ目(法令適合の確保)に効くかもしれないが、増やしすぎて業務が回らなくなれば三つ目を損なう。「統制のためだから遅くてもよい」という理屈は、この条文の並びからは出てこない。
承認が止まっているあいだも、法令の期限は止まらない
段の数を増やすときに、社内の都合だけで考えてはいけない理由がここにある。取適法が定める期限は、社内の承認が終わったかどうかとは無関係に進む。次の表は、発注から支払までにかかる期限を、根拠となる条文とともに並べたものである。
| やること | 起算点 | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 4条明示(発注内容等の明示) | 製造委託等をしたとき | 直ちに(発注の都度) | 第 4 条第 1 項[1][2] |
| 未定事項の補充の明示 | その事項の内容が定められた後 | 直ちに | 第 4 条第 1 項ただし書[2] |
| 書面の交付(電磁的方法で明示した場合) | 交付を求められたとき | 遅滞なく | 第 4 条第 2 項[2] |
| 支払期日を定める | 受領日(受領日を算入) | 60 日以内、かつできる限り短い期間内 | 第 3 条第 1 項[1][2] |
| 支払期日を定めなかった場合のみなし | — | 受領日が支払期日とみなされる | 第 3 条第 2 項[2] |
| 60 日を超えて定めた場合のみなし | 受領日 | 60 日を経過した日の前日が支払期日とみなされる | 第 3 条第 2 項[2] |
| 遅延利息 | 受領日から 60 日を経過した日 | 年率 14.6% | 第 6 条第 1 項および率を定める規則[1] |
| 7条記録の保存 | 記載・記録すべき事項の全部を記載・記録した日 | 2 年間 | 記録規則第 3 条[7] |
八つのうち、承認の滞留と直接ぶつかるのは一行目である。取適法テキストは違反行為事例として、急を要するため口頭(電話)で発注し、その後4条明示をしない場合を挙げている[1]。承認が三段あって書面が出せないので、とりあえず電話で「動いておいて」と伝える——現場でいちばん起きやすい形が、そのまま事例に載っている。段の数を決めるときは、「その段数で、発注の都度、直ちに明示を出せるか」を必ず確かめる。出せないなら、段が多すぎるか、承認を待たずに作業を頼む運用が常態化しているかのどちらかである。
支払側も同じである。同テキストは、委託事業者が社内の手続上、中小受託事業者からの請求書が必要である場合について、請求額を集計し通知するための十分な期間を確保しておくことが望ましく、提出が遅れる場合には速やかに提出するよう督促して支払遅延とならないように代金を支払う必要があるとしている[1]。社内の承認が回らなかったことは、支払が遅れてよい理由にならない。支払期日と起算日の実務は支払期日は受領日から 60 日に、明示すべき 12 項目は発注書の 4 条明示 12 項目にまとめてある。条番号がどう動いたかをまとめて確認したい場合は、NEWJI総研の法令改訂対応パック 中小受託取引適正化法(本編 19 ページ・全 5 章)に、2026 年 1 月施行で発注のどこを直すのかを整理してある。
誰も見ていない段の見つけ方
形だけの段を減らしたいとき、多くの会社は「誰か止めたことある?」と会議で聞く。それでは出てこない。誰も自分の段が形式的だとは言わないからである。ここは印象ではなく手続で確かめる。
基準は、業務プロセスに係る内部統制の運用状況の評価について、関連文書の閲覧、当該内部統制に関係する適切な担当者への質問、業務の観察、内部統制の実施記録の検証、各現場における内部統制の運用状況に関する自己点検の状況の検討等により確認するとしており、実施に際しては原則としてサンプリングにより十分かつ適切な証拠を入手するとしている[3]。この五つを購買の承認に当てはめると、次の表になる。
| 基準が挙げる方法 | 承認の段に当てはめると | 形式的な段に出る兆候 |
|---|---|---|
| 関連文書の閲覧 | その段が見るはずの資料(見積・仕様・予算)が、承認の時点で添付されていたか | 添付がないまま承認された件がある |
| 担当者への質問 | 承認者に「この段では何を見て可否を決めているか」を聞く | 答えが前の段の観点と同じになる |
| 業務の観察 | 実際に承認する場面を横で見る | 一覧画面から中身を開かずに通している |
| 実施記録の検証 | 申請から承認までの間隔と、差戻し・却下の件数を数える | 一年間で却下ゼロ、間隔がほぼ即時 |
| 自己点検の状況の検討 | 部門ごとの点検結果を突き合わせる | 点検表の記入が毎回同じ文言 |
五つのうち、いちばん手早く効くのは四つ目である。却下と差戻しの件数がゼロで、申請から承認までの間隔が数分という段は、資料を読んでいない可能性が高い。ただし、そこで即断してはいけない。前の段で十分に詰めてあるから短時間で済んでいる、という健全な形もありうる。数字は候補を絞るために使い、最後は質問と観察で確かめる。地方公共団体向けのガイドラインも、内部統制の評価に当たって、統制内容を示す資料、決裁権者、日付(適用開始日、実施日等)、所管部署等を把握したうえで不備の有無を判断するとしており、監査委員の側は評価が形骸化していないかという観点から検討を行うとしている[6]。誰が決裁したかと、いつ実施されたかを記録として持っていることが、この点検の前提になる。
そして、段を見直す作業は一度きりでは終わらない。基準の評価項目には「統制活動は、その実行状況を踏まえて、その妥当性が定期的に検証され、必要な改善が行われているか」という問いが置かれている[3]。組織変更や人事異動のたびに承認者は変わるので、段の妥当性も変わる。
運用中に段を変えると、何が壊れるか
ここが、承認フローの設計でいちばん軽く扱われている論点である。段の並びは、いったん動き出すと簡単には変えられない。
理由は仕組みの側にある。多段階の承認は、進行中の依頼が「いま何段目か」という番号を持ち、その番号と段の番号を突き合わせて「次に押すのは誰か」を決めている。ここで段を途中に足したり消したりすると、進行中の依頼が指している番号と、実際の段がずれる。二段目の承認待ちだった依頼が、二段目が消えた結果、存在しない段を指したまま止まる。あるいは、番号が繰り上がった別の段に化けて、本来の承認者を飛ばして通る。どちらも、承認の記録としては成立しているように見えるのが厄介なところである。
Newji one では、この事故が起きないように、承認待ちの案件が一件でも残っているあいだは、段の追加も削除もできない作りになっている。試みると「承認待ちの案件が◯件あります。先に処理してから承認の段を変更してください」と表示されて止まる。ワークフロー自体を無効にする操作も同じで、承認待ちが残っていれば止まる。段を消したときは、残った段の番号が 1 から順に詰め直されるので、欠番のまま「承認も却下もできない依頼」が生まれることもない。
この制約は、運用の手順に置き換えるとこうなる。
- 承認フローを変更する日を先に決め、その日までに承認待ちを空にする(承認するか、却下して申請し直してもらう)
- 承認待ちがゼロになったことを確認してから、段を追加・削除する
- 変更後の最初の一件は、意図した順番で回っているかを実際に流して確かめる
基準も、ITを高度に取り入れた情報システムは手作業による情報システムと異なり、稼働後の大幅な手続の修正が困難であるという問題を指摘し、システムの仕様によっては実施した手続や情報の変更等が適切に記録されず、事後の検証が困難となる場合があるとしている[3]。承認フローはまさにこれに当たる。だからこそ、最初に組む段は後から足したくならない程度に必要十分であることが重要になる。迷ったら少なく始めるほうが安全である。段を足すのは承認待ちを空にすれば必ずできるが、増やしすぎた段を減らすときには「なぜこの段を外したのか」を説明する手間が別にかかる。
不在と代理——一人しか押せない段を作らない
承認が止まる原因の大半は、設計の失敗ではなく不在である。出張、休暇、繁忙、体調不良。段を三つ置いたなら、止まる可能性のある人が三人いる。
基準は、適切に職務を分掌させることについて、業務を特定の者に一身専属的に属させることにより、組織としての継続的な対応が困難となる等の問題点を克服することができると述べている[3]。分掌は不正防止のためだけの仕組みではなく、一人に依存しない体制を作るための仕組みでもある、という整理である。承認者を一人に固定した段は、統制としては強く見えて、継続性の面では弱い。
この弱点への手当ては二通りある。一つは、その段の承認者を個人ではなく役割で指定する形である。Newji one の承認の段では、承認者の指定のしかたを二種類から選べる。ひとつは特定のユーザーを名指しする形、もうひとつは「管理者承認」——承認の権限を持つロールのユーザーなら誰でも承認できる形である。後者を使えば、承認権限を持つ人が複数いる限り、誰か一人が不在でもその段は止まらない。ただし、誰でも押せる段には副作用がある。アプリ内の通知は名指しした承認者にしか届かないため、役割で指定した段は「◯◯さんに承認依頼が来ました」という通知が飛ばない。承認者はダッシュボードの受信箱に並ぶ発注の承認待ちを見て、いま自分の番かどうかを確かめて拾う形になる。役割で指定するなら、受信箱を毎日見る運用がセットで要る。
もう一つの手当ては、滞留そのものを検知して上げることである。基準は、ITを利用した情報伝達の例として、「必要な承認や作業完了が一定期間に実施されないと、その旨が担当者の上司に伝達される機能」を業務プロセスに組み込むことができると述べている[3]。督促を人の記憶に頼らず、経過日数で拾う考え方である。仕組みとして持っていない場合でも、承認待ちの一覧を期間で並べ替えて、一定日数を超えたものを毎朝見る運用にすれば、同じことは手作業でできる。
代理承認を認めるときの線
不在時に他の人が代わりに押す運用そのものは、珍しくない。問題は、代理で通した記録が代理として残らないことである。承認者のアカウントを借りて押せば、記録上は本人が承認したことになる。そうなると、後から「誰が判断したのか」を追えなくなり、承認の記録としての価値が消える。代理を認めるなら、代理として承認できる仕組みを使うか、役割で承認できる段にするかのどちらかにする。アカウントの貸し借りだけは、承認の段を置いた意味を根こそぎ失わせる。
よくある質問
結局、何段が正解ですか
法令で決まった段数はない。判断の順序としては、まず「その段でしか止められないもの」を書き出し、書き出せた数だけ段を置くのがよい。仕様・金額・予算のうち二つを同じ人が見ているなら、その二つは一段でよい。段を増やす前に、いまの段の却下件数を数えることを勧める。ゼロが続いている段があるなら、増やす議論より先にその段を見直すほうが効く。
金額によって段の数を変えたいのですが
規程としてはよくある形である。Newji one では、承認が必要かどうかは金額のしきい値で判定し(対象は購買の発注のみ)、必要と判定された案件は会社に設定した承認の段を通る。しきい値の切り方と承認者の決め方は発注の承認ルールをどう設計するかで扱っている。
途中の段で却下されたら、前の段からやり直しですか
Newji one では、どの段で却下されてもその依頼は却下として終わり、申請者に通知が届く。前の段に差し戻して途中から再開する形ではない。運用としては、却下の理由をコメントに残し、申請者が直して出し直す流れになる。理由を書かずに却下すると、同じ内容で再申請されて往復が増える。
承認の段は誰が作り替えられるようにすべきですか
申請する当事者が段を作り替えられる状態は避ける。承認者を自分に付け替える、段を消す、といった操作が当事者の手でできるなら、承認は形式でしかない。Newji one では、承認の段とワークフローの編集は管理者の権限を持つ人だけに限られている。基準も、職務の分掌を明確化し、権限や職責を担当者に適切に分担させているかを評価項目に挙げている[3]。
承認の記録はどれくらい残せばよいですか
社内の承認履歴を何年残すかは会社が決める部分が大きいが、取引の記録の側には法令上の期限がある。取適法の7条記録は、記録した日から 2 年間の保存が必要である[1]。何を書いて 2 年どう残すかは取適法が求める記録にまとめてある。承認の履歴は、単価をいつ誰が決めたかを説明する材料にもなるので、取引の記録と同じ期間は残しておくほうが安全である。
システムを入れずに段を設計できますか
できる。段の設計は規程の話であって、道具の話ではない。ただし、申請から承認までの間隔や却下件数を数える段になると、紙とメールでは集計が難しい。何が変わるかは購買管理システムで何が変わるかで扱っている。
まとめ
承認の段は、責任を分けるための装置ではなく、特定の誤りを止めるための装置である。止める対象を書き出せない段は、増やしても検出力は上がらない。基準が統制活動を「権限及び職責の付与、職務の分掌」を含む方針及び手続と定義し[3]、同時に費用と便益との比較衡量を内部統制の限界として挙げている[3]のは、この二つを同じ天秤に載せろという意味である。
そのうえで、三つのことを最初に決めておく。一つ目、段の一番上は社内では決められない場合がある。重要な財産の譲受けや多額の借財に当たる案件は取締役会の決議事項であり、取締役に委任できない[4]。二つ目、社内で承認が止まっているあいだも、4条明示の「直ちに」も、受領日から 60 日という支払期日の枠も止まらない[2]。段の数は、この期限に間に合う範囲でしか組めない。三つ目、運用を始めたあとで段を入れ替えるのは、承認待ちを空にしてからでないと危ない。最初に組む段は、後から足さなくて済むところから始めるのがよい。
出典・参考資料
- 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
- 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
- 財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準(金融庁 企業会計審議会/令和 5 年 4 月 7 日改訂)
- 会社法(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
- 会社法施行規則(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
- 地方公共団体における内部統制制度の導入・実施ガイドライン(総務省/平成 31 年 3 月)
- 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第七条の書類等の作成及び保存に関する規則(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
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