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請求書が発注と合わないとき——5 つの型と、踏むべき 5 段

この記事のポイント(結論先出し)
請求書の金額が発注と合わないとき、迷うのは「払うか、止めるか」だが、法律が決めているのはその手前である。取適法(中小受託取引適正化法)第 3 条第 1 項は、支払期日を検査をするかどうかを問わず、給付を受領した日から起算して 60 日以内に定めなければならないと書いている。請求書が来ない・遅れている・金額が違って処理が止まっている——どれも期日を動かす理由にならず、公正取引委員会と中小企業庁のテキストは「請求書の提出遅れや伝票処理の遅れ」を理由にした支払遅延を違反行為事例として挙げている。したがって実務の順序は、①発注時に明示した額を期日までに払う ②合わない部分の原因を型で分ける ③直すのは誰かを決めるになる。争いのある額を自分の判断で差し引いて確定させれば減額(第 5 条第 1 項第 3 号)、確定させずに払わずに置けば支払遅延(同項第 2 号)で、どちらも年率 14.6 パーセントの遅延利息が付く。止めてよい額は、原則としてゼロだと考えたほうが実態に合う。
目次
「請求が合わない」は 5 つの型に分かれる
支払を止めるかどうかの前に、何がどこで食い違ったのかを分けたい。差額の大きさは判断材料にならない。誰が直すのかと支払期日が動くのかが型ごとに違うからである。
| 型 | 食い違いの中身 | 直すのは誰か | 支払期日 |
|---|---|---|---|
| 1. 相手の請求ミス | 単価・数量・税額の転記誤り、二重請求 | 相手(修正した請求書の交付) | 動かない |
| 2. 自社の発注ミス | 明示した額が合意と違う、単価改定の反映漏れ | 自社(明示のし直しと記録) | 動かない |
| 3. 納品数量の相違 | 過納・欠品・分納分の計上ずれ | 受領記録を照合して双方で確定 | 受領した分は動かない |
| 4. 条件変更の未伝達 | 仕様変更・追加作業・やり直しが額に入っていない | 自社(協議と額の変更・記録) | 動かない |
| 5. 控除項目のずれ | 有償支給材の対価、返品分、前月の値引き | 控除の根拠ごとに分けて確認 | 動かない |
右端が全部同じであることが、この表のいちばん重要な点である。不一致がどの型であっても、いったん受領した給付についての支払期日は動かない。まずここを確定させないと、原因の調査そのものが違反を積み上げる時間になる。
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支払期日は、請求書の都合では動かない
取適法第 3 条第 1 項は、支払期日について「委託事業者が中小受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず」、給付を受領した日から起算して 60 日の期間内において、かつできる限り短い期間内において定めなければならないとしている[2]。基準は受領日であり、検収の完了日でも、請求書の到着日でも、社内の承認が下りた日でもない。
テキストの Q&A はこの点を正面から扱っている。中小受託事業者からの請求書に基づいて代金を支払っている場合に、請求書の提出が遅れたときも支払期日までに払う必要があるかという問いに対して、請求書の提出の有無にかかわらず、受領後 60 日以内に定めた支払期日までに代金を支払う必要があると答えている[1]。さらに、社内の手続上で請求書が必要な場合には、中小受託事業者が請求額を集計し通知するための十分な期間を確保しておくことが望ましく、提出が遅れる場合には速やかに提出するよう督促して、支払遅延とならないように支払う必要があるとしている[1]。請求書が来ないことは、こちらが督促すべき事柄として整理されている。
違反行為事例にも同じ型が並ぶ。板金の修理等を委託していた委託事業者が、請求書の提出遅れや伝票処理の遅れを理由に受領から 60 日を超えて支払った事例、自社の事務処理が遅れたことを理由にあらかじめ定めた支払期日を超えて支払った事例、納入されたプログラムの検査に 3 か月を要したため 60 日を超えた事例が挙げられている[1]。運用基準も、検収締切制度を採っている場合に検収に相当日数を要して受領日から 60 日目までに支払わないときは支払遅延に当たると明記している[1]。
調達現場で押さえるポイント
「金額が確定しないので支払を保留する」という社内運用は、条文の側から見ると支払遅延そのものである。保留という中間状態は法律に用意されていない。用意されているのは「期日までに払う」か「払わずに遅延利息を負う」かの 2 つだけである。
期日の起算点そのものが動く例外は、テキストが示す限り限られている。支払期日が到来する前に給付が委託内容と異なること等が発見されて返品する場合には、当初の受領日から 60 日以内に支払う必要はなく、再納品した際の受領日が起算日になる[1]。つまり動かせるのは「返して、作り直してもらう」ときであって、「金額を調べている」ときではない。締め日と期日の数え方そのものは支払期日は受領日から 60 日——起算日と遅延利息の実務で扱っている。
合意できている部分だけ先に払えるか
結論から言えば、一部だけ支払うこと自体を禁じる条文はない。取適法第 7 条に基づく記録規則は、記録すべき事項として「製造委託等代金の一部を支払い又は製造委託等代金から原材料等の対価の全部若しくは一部を控除した場合は、その後の製造委託等代金の残額」を挙げており[3]、一部の支払が起こりうることを前提にしている。
問題は残した額の扱いである。ここで結論は 2 つに分かれる。次の表は、比較のために「満額を期日までに払った場合」も 3 行目に並べている。
| 残した額をどう扱ったか | 条文 | 遅延利息の起算日 | 率 |
|---|---|---|---|
| 払わずに置いた(保留) | 第 5 条第 1 項第 2 号(支払遅延) | 受領日から起算して 60 日を経過した日 | 年 14.6 パーセント |
| 差し引いて確定させた(減額) | 第 5 条第 1 項第 3 号(減額) | 減じた日と、受領日から 60 日を経過した日のいずれか遅い日 | 年 14.6 パーセント |
| 満額を期日までに払った | — | 発生しない | — |
第 5 条第 1 項第 2 号は「製造委託等代金をその支払期日の経過後なお支払わないこと」を禁じている[2]。条文は全額とも一部とも書いていないので、払わなかった額が一部であっても、その部分は支払われていない。第 6 条第 1 項は、支払期日までに支払わなかったときの遅延利息を「当該未払金額」に率を乗じて計算すると定めており[2]、一部の未払も計算の対象になる書き方になっている。
一方、差し引いて確定させると減額の側に入る。テキストは減額の規定を、発注時に定めた代金の額を減ずることを禁じるものであり、名目・方法・金額の多少を問わず、発注後いつの時点で減じても違反になると説明している[1]。第 6 条第 2 項の遅延利息は「減じた日」と「受領日から 60 日を経過した日」のいずれか遅い日から起算されるので[2]、早く差し引くほど有利になる構造にもなっていない。どういう差引きが減額と判定されてきたかは代金を後から下げる——減額に当たる行為と、当たらない行為にまとめてある。
したがって実務の答えは「合意できている部分だけ払う」ではなく、「発注時に明示した額を期日までに払い、増減はそのあと正規の手順で処理する」になる。止める額を小さくするのではなく、止める理由が本当にあるのかを先に確かめる。減額が認められるのは相手方の責めに帰すべき理由がある場合に限られ、その中身は受領拒否と返品それぞれの成立条件に紐づいている[1]。
請求額が発注額より多いとき
いちばん多い相談がこれである。押さえるべき点は 2 つある。
第一に、発注時に明示した額を払うこと自体は減額ではない。減額として禁じられているのは発注時に定めた額を減ずることなので[1]、明示した額どおりに支払っているのであれば、その行為自体が第 5 条第 1 項第 3 号に当たるわけではない。過大な請求に合わせて払う義務も当然ない。
第二に、それでも「なぜ多いのか」を先に確かめる必要がある。差額の原因が型 4(条件変更の未伝達)だった場合、支払額を発注額に揃えると別の違反に触れる。取適法第 5 条第 2 項第 3 号は、相手方の責めに帰すべき理由がないのに給付の内容を変更させ、又は受領後に給付をやり直させることによって相手方の利益を不当に害することを禁じている[2]。追加作業をさせておいて額を据え置けば、この規定と、費用の変動が生じたときに協議に応じず一方的に額を決めることを禁じる同項第 4 号[2]の両方に近づく。
そして請求書そのものは、こちらで直すものではない。消費税法第 57 条の 4 第 4 項は、適格請求書を交付した適格請求書発行事業者は、記載事項に誤りがあった場合には、交付した相手方に対して修正した適格請求書を交付しなければならないと定めている[5]。電磁的記録で提供した場合も同項が準用される[5]。国税庁の資料は、修正の交付方法として、修正点を含め全ての事項を記載した書類を改めて交付する方法と、当初に交付した適格請求書との関連性を明らかにしたうえで修正した箇所のみを明示した書類を交付する方法を挙げている[6]。買手が受け取った請求書の数字を書き換えて処理する運用は、この枠組みの外にある。
ただし買手側から動く道もある。同じ資料は、買手が作成した仕入明細書等による対応が可能であるとし、その場合に記載する登録番号は課税仕入れの相手方すなわち売手のものになること、売手の確認を受けたものに限られることに留意が必要だとしている[6]。確認を受ける方法の例として、書類上に確認済みの署名等をもらう、受発注に係るオンラインシステムで確認を受ける機能を設ける、電子メールで確認した旨の返信を受ける、が挙げられている[6]。数量と単価をこちらの記録から起こして相手に確認してもらう形は、制度として用意されている。支払通知書としての運用は支払通知書とは——請求書なしで支払を確定させる仕組みで扱っている。
請求額が発注額より少ないとき
金額が少ない側の不一致は見逃されやすいが、放置してよいものではない。正しいのは 4 条明示した額であり、請求書の額ではない。明示規則第 1 条第 1 項第 4 号は、明示すべき事項として「製造委託等代金の額及び支払期日」を挙げている[4]。少ない請求書が届いたからといって、その額を払えば足りるという整理にはならない。
実務上は次の 3 つを確かめる。請求漏れの品目があるのか、単価改定の反映が遅れているのか、こちらの明示額のほうが誤っているのか。1 つ目と 2 つ目なら、相手に修正した請求書を出してもらったうえで、明示額どおりに期日までに払う。3 つ目、つまり自社の明示が誤っていた場合は、明示のし直しと記録の側の処理になる。差額をこちらの得として黙って確定させると、記録規則が求める記録が実態と合わなくなる。
差額を次回で調整するときの注意
今月の差額を来月の支払で調整する運用は広く行われているが、根拠ごとに扱いが変わる。
独立した債権の相殺は、減額に当たらない。テキストは、代金の額を「減ずること」に当たらない場合として、中小受託事業者に販売した商品等の対価や、貸付金等の弁済期にある債権を代金から差し引くことを挙げている[1]。代金そのものを削っているのではなく、別の債権を相殺しているという整理である。逆に言えば、独立した債権と言えないものを「相殺」と呼んで差し引くと、名目にかかわらず減額として扱われる。
有償支給材の対価だけは別の規制が重なる。取適法第 5 条第 2 項第 1 号は、原材料等を自己から購入させた場合に、相手方の責めに帰すべき理由がないのに、その原材料等を用いる給付に対する代金の支払期日より早い時期に、支払うべき代金の額から対価の全部若しくは一部を控除し、又は対価を支払わせることを禁じている[2]。テキストは、この「控除」を代金から対価を差し引く事実上の行為をいい、その結果支払期日に代金を全く支払わないことも含むと説明したうえで、民法上の相殺が成立したか否かとは関係がないと明記している[1]。相殺の形をとっても、時期が早ければ規制の対象になる。
返品や値引きは、売手側に交付義務が生じる。消費税法第 57 条の 4 第 3 項は、売上げに係る対価の返還等を行う適格請求書発行事業者に、適格返還請求書の交付を義務づけている[5]。国税庁の資料は、返品や値引きなど売上げに係る対価の返還等を行う場合に交付するものであり、税込価額が 1 万円未満である場合は交付義務が免除されると整理している[6]。前月の売上げに係る値引きを当月の売上げから差し引いて請求する場合には、前月分の適格返還請求書と当月分の適格請求書を交付する必要があるが、それぞれに必要な記載事項を記載して 1 枚の請求書で交付することも可能とされている[6]。相殺後の 1 行だけを載せた請求書は、この要件を満たさない。
記録に何を残すか
不一致の処理は、そのまま第 7 条の記録の対象になる。記録規則第 1 条第 1 項が挙げる 13 号のうち、請求と発注の食い違いに直接かかわるのは次の 5 つである[3]。
| 号 | 記録する事項 | どの型で必要になるか |
|---|---|---|
| 第 3 号 | 検査を完了した日、検査の結果、検査に合格しなかった給付の取扱い | 型 3・型 5 |
| 第 4 号 | 給付の内容を変更させ、又は受領後にやり直させた場合の内容と理由 | 型 4 |
| 第 5 号 | 代金の額及び支払期日、額に変更があった場合は増減額及びその理由 | 型 2・型 4 |
| 第 11 号 | 代金の一部を支払い、又は原材料等の対価を控除した場合のその後の残額 | 一部払い・相殺をしたとき |
| 第 12 号 | 遅延利息を支払った場合の、支払った額及び支払った日 | 期日を過ぎたとき |
タイミングも決まっている。記録規則第 2 条第 1 項は、これらの記載又は記録を「それぞれその事項に係る事実が生じ、又は明らかになったときに、速やかに」行わなければならないとしている[3]。不一致の処理を月次の締めまで持ち越して、決着してからまとめて入力する運用は、この条文が求める形ではない。
電磁的記録で残す場合の要件も重い。記録した事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができることが求められている[3]。金額を上書きして直すだけの仕組みでは足りず、直した事実そのものが残る必要がある。あわせて、画面表示と書面出力ができること、相手方の識別情報と発注日の範囲指定で検索できることが要件になっている[3]。保存期間は、記載すべき事項の全部を記載した日から 2 年である[3]。
なお 4 条明示の写しを保存するだけでは足りない。テキストの Q&A は、4 条明示した内容の写しを 7 条記録の一部とすることは可能だが、7 条記録は受託取引の経緯に係る記録なので、取引開始時に定めた事項のみが明示されている写しを保存するだけでは記録規則の記録事項を全て満たすことはできず、義務違反になると答えている[1]。不一致とその決着は、まさにこの「経緯」に当たる。条文の対応関係や社内書式の改訂箇所をまとめて点検するなら、法令・規格 改訂対応パック(中小受託取引適正化法)が使える。
不一致が出たときに踏む 5 段
ここまでを実務の順序に組み直す。担当者が迷わないよう、社内の手順書にはこの順で書いておきたい。
1. 支払期日を先に確定する。受領日を起算日として、その取引に定めた支払期日がいつかを出し、その日までに何を払うかを決める。原因の調査はこの制約の中で行う。
2. 明示した額を確認する。争点は請求書の額ではなく、4 条明示した代金の額と、その後に正規の手順で変更した額である。ここが社内で一意に引けないなら、直すべきは請求処理ではなく発注の記録である。
3. 型を判定する。前掲の 5 つのどれかを決める。判定できないうちは、相手のミスと決めつけて差し引かない。
4. 直す側を動かす。相手の請求ミスなら修正した請求書の交付を求める。自社の発注ミスや条件変更の未伝達なら、協議と額の変更を先に済ませ、記録規則第 5 号の増減額と理由を残す。
5. 期日どおりに払い、記録を閉じる。一部払いになった場合は残額を、遅延利息が生じた場合は額と支払日を記録する。ここまでを 1 件ずつ閉じることで、次の照合が軽くなる。
受発注システムで何ができるか
不一致の処理が重くなるのは、発注・受領・検収・帳票が別々の場所にあり、どれが正しいかを人が毎回組み立て直しているからである。突き合わせの仕組みそのものについては発注・入庫・請求の 3 点照合を実務でどう回すかで扱う。ここでは、不一致が出たあとの処理として何が用意できるかだけを書く。
Newji one には照合の機能がある。発注に対して、検収の結果があるか、送付した発注書に受領の確認が返っているか、発行済みの帳票(いま発行できるのは納品書である)の金額・数量が現在の発注内容と一致しているかを見て、合っている・一部だけ合っている・合っていない・対象外の 4 つに分ける。合っていない発注は一覧に集まり、既定ではまだ決着していないものだけが並ぶ。
決着のさせ方は 3 通りに分かれている。確認したは、見て把握したという状態で、誰がいつ確認したかが残る。解消したは、処理が終わった状態で、どう決着させたかのメモを添えられる。対象外にしたは、照合の対象として扱わないという判断で、こちらは理由の入力が必須になっている。理由を書かずに閉じることができない設計は、記録規則が「増減額及びその理由」「変更の内容及びその理由」を求めていることと向きが同じである。新しく不一致が出たときは、管理者と発注の担当者に画面上の通知が届く。
できないことも書いておく。支払を自動で止めたり、金額を自動で書き換えたりはしない。どの型かを判定するのも、相手に修正を求めるのも人の仕事である。システムが受け持つのは、どの発注のどこが合っていないかを毎回同じ基準で出すことと、誰がいつどう決着させたかを残すことまでである。
よくある質問
金額が確定するまで支払を保留してよいですか
支払期日は受領日から起算して 60 日以内に定めることが義務づけられており、検査をするかどうかを問わないとされています[2]。テキストは、請求書の提出の有無にかかわらず支払期日までに支払う必要があるとし、請求書の提出遅れや伝票処理の遅れ、自社の事務処理の遅れを理由にした支払遅延を違反行為事例として挙げています[1]。保留という状態は、条文の側から見れば支払期日を過ぎた時点で支払遅延になります。
相手の請求額のほうが多い場合、発注額どおり払うと減額になりますか
減額として禁じられているのは、発注時に定めた代金の額を減ずることです[1]。明示した額どおりに支払っているのであれば、その行為自体が減額に当たるわけではありません。ただし差額の原因が仕様変更や追加作業であれば、額を据え置くこと自体が第 5 条第 2 項第 3 号や第 4 号の問題になりえます[2]。原因の判定を先に行ってください。
請求書の数字が明らかに間違っています。こちらで直して処理できますか
適格請求書を交付した事業者は、記載事項に誤りがあった場合には、交付した相手方に対して修正した適格請求書を交付しなければならないとされています[5]。修正の交付方法は、全ての事項を記載した書類を改めて交付する方法と、当初の請求書との関連性を明らかにしたうえで修正箇所のみを明示した書類を交付する方法があります[6]。買手側から進めるなら、仕入明細書等による対応が用意されていますが、売手の確認を受けたものに限られます[6]。
今月の過大請求分を来月の支払から引く形でもよいですか
独立した債権の相殺であれば減額には当たりません[1]。一方、有償支給した原材料等の対価の控除は、支払期日より早い時期に行うと第 5 条第 2 項第 1 号の問題になり、テキストは民法上の相殺が成立したか否かとは関係がないと明記しています[1]。また値引きや返品にあたる部分は、売手側に適格返還請求書の交付義務が生じます[5]。相殺後の金額だけを載せた請求書では要件を満たさないため、当月分と前月分の記載事項をそれぞれ残す必要があります[6]。
不一致を処理したこと自体は、どこまで記録に残すのですか
記録規則は、検査を完了した日と結果および不合格の取扱い、給付内容の変更ややり直しの内容と理由、代金の額に変更があった場合の増減額と理由、一部を支払った場合の残額、遅延利息を支払った場合の額と日を記録事項として挙げています[3]。記載は事実が生じ又は明らかになったときに速やかに行うこととされ、電磁的記録では訂正・削除の事実と内容を確認できることが要件です[3]。保存は 2 年間です[3]。
まとめ
請求と発注が合わないときにいちばん多い誤りは、金額を決着させてから払おうとすることである。取適法の設計はその逆で、期日は受領日で固定され、検査も請求書も社内処理も期日を動かさない[1][2]。止めた額には支払遅延として、差し引いた額には減額として、それぞれ年 14.6 パーセントの遅延利息が付く[1][2]。払うか止めるかを判断する裁量は、思っているよりずっと小さい。
やるべきことは、判断を早くすることではなく、判断の材料を早く揃えることである。明示した額が一意に引けること、受領と検収の記録が発注に紐づいていること、変更と決着の理由が事実の発生時点で残ること。この 3 つが揃っていれば、不一致は「調べる案件」ではなく「型を当てはめて閉じる作業」になる。記録規則が求めている項目は、そのまま社内の照合の設計図として読める[3]。
出典・参考資料
- 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
- 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
- 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第七条の書類等の作成及び保存に関する規則(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
- 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
- 消費税法(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
- 適格請求書等保存方式の概要 ー インボイス制度の理解のために ー(国税庁/令和 8 年 4 月)
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