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投稿日:2026年10月1日

溶接を含む部品の発注で指定すること——施工要領・資格・検査

この記事のポイント(結論先出し)

溶接部の品質は、出来上がった後の検査では確かめきれない。だから溶接を含む部品を発注するときは、作り方(溶接施工要領)、作る人(溶接技能者の資格)、作り方を管理する人、確かめ方(外観試験と非破壊試験)の 4 つを指定する。国土交通省の公共建築工事標準仕様書は、溶接技能者には JIS に従う工事に相応した試験に基づく能力を、施工管理には JIS Z 3410 に基づく溶接管理の能力を求め、溶接部の試験は製作工場に属さない試験機関の技能資格者に行わせている。一般の部品ではここまで求めなくてよいが、誰が、どの資格で、何を、どの方法で、どこまで検査するかを発注書か仕様書に書く。非破壊試験の追加や合否基準の変更を発注後に持ち出すと、費用の負担とやり直しの問題になる。

溶接は「検査で品質を確かめにくい」工程である

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溶接部には、表面からは見えない欠陥がある。溶込み不足、融合不良、内部のブローホールや割れは、外観がきれいでも中に残っていることがある。破壊すれば確かめられるが、破壊した物は納められない。溶接学会誌の連載講義で冨田は、溶接部の品質は試験・検査の段階でこれを満足させることは困難であり、品質は製作工程中に作り込まれるもので、試験・検査はこれを確認する手段だと書いている[4]。溶接後の試験・検査は性能を代表する特性値を調べるもので、性能品質に関するすべての特性を試験するのは実用上不可能なので、検査の厳しさよりも溶接部の生い立ち、つまり作り方が適切であるほうがよい溶接部につながる、とも述べている[4]。

発注側にとっての意味ははっきりしている。受入検査で外観を見て、必要なら一部を非破壊試験にかけるだけでは、溶接部の品質を保証したことにはならない。作り方と作る人を、発注の段階で指定しておく必要がある。

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指定する 4 つのこと

国土交通省の公共建築工事標準仕様書(建築工事編、令和 7 年版)は、鉄骨工事の溶接接合について、発注者が施工者に何を求めるかを具体的に書いた公的な仕様書である。建築鉄骨のためのものなので、部品の溶接にそのまま当てはまるわけではないが、項目の立て方は参考になる。仕様書の項目と、一般の部品を発注するときの読み替え(当方の提案)を並べると次のようになる。

指定すること 公共建築工事標準仕様書の書き方 [1] 一般部品での最小限(提案)
作り方 開先の形状は特記、溶接方法・予熱・エンドタブ・余盛り・気温による措置などを規定 継手の種類と溶接記号を図面に、溶接方法と条件は仕入先の施工要領書で出させる
作る人 手溶接は JIS Z 3801、半自動溶接は JIS Z 3841 に従う工事に相応した試験に基づく能力。自動溶接は十分な工事経歴も 作業する溶接技能者の資格の種類と有効期限を示させる
管理する人 施工管理技術者を配置し、JIS Z 3410 に基づく溶接管理を行う能力を持つ者とする 溶接の管理責任者を決めさせ、名前を出させる
確かめ方(検査する人を含む) 着手前・作業中・完了後の確認と記録の提出。外観試験と超音波探傷試験。割れの疑いには浸透探傷か磁粉探傷。試験は製作工場に属さず、品質管理の試験も行っていない試験機関の技能資格者が行う。非破壊試験は JIS Z 2305 に従う試験に基づく能力 外観の判定基準と、非破壊試験の有無・方法・範囲・合否基準を書く。第三者の試験は重要部品だけに求め、それ以外は仕入先の自主検査の記録

仕様書は、溶接作業を技能資格者が行うこと、能力に疑いが生じた場合は工事に相応した試験を行って適否を判定し監督職員の承諾を受けることも定めている[1]。以下、4 つを順に見ていく。

1. 作り方を指定する——溶接施工要領

冨田は、実際の工事と同じ材料、溶接方法、溶接条件で前もって試験材を溶接し、その溶接部を機械試験や非破壊試験で調べて性能を確認することを溶接施工方法の試験と呼び、その確認方法は溶接構造物の種類や用途によって各種の規格や基準で決められていると説明している[4]。圧力容器やボイラーのように法令や規格で施工方法の確認が求められる製品では、この確認を経た施工要領で溶接することが前提になる。日本の規格では JIS Z 3420(金属材料の溶接施工要領及びその適格性確認-一般原則)とその関連規格が施工要領と確認の枠組みを定めている。米国の ASME の体系についてはASME IX の溶接施工法認証の記事で扱っている。

法令や顧客の規格で施工方法の確認が求められない一般の部品でも、発注側が仕入先に出させたいのは溶接施工要領書(どの材料を、どの方法・条件・順序で溶接するかを書いた書類)である。成田は、溶接前の外観検査の判定は規格、仕様書、溶接施工要領書などに基づくが、詳細は溶接施工を具体的に規定した要領書によるとし、要領書は関連規格や仕様書と整合している必要があると述べている[5]。要領書がない仕入先では、どの条件で溶接したかが記録に残らず、不具合が出たときに原因を追えない。

図面には、継手の種類(完全溶込み、部分溶込み、すみ肉)、開先の形状、脚長やのど厚を溶接記号で書く。これが書かれていないと、仕入先はコストの低い溶け込みの浅い溶接を選んでも図面違反にならない。

2. 作る人を指定する——溶接技能者の資格

日本溶接協会は、JIS や WES(日本溶接協会規格)などの検定試験規格にもとづく評価試験を全国で行い、溶接技能者の資格を認証している。協会の説明では、溶接技能者の資格は溶接する材料や対応する業界によって大きく 9 種類(手溶接、半自動溶接、ステンレス鋼溶接、チタン溶接、プラスチック溶接、銀ろう付、すみ肉溶接、石油工業溶接、基礎杭溶接)に分かれ、どれを受験するかは実際の溶接作業と同じか近い内容で選ぶか、発注元からの要求に応じるのが基本だとしている[2]。手溶接は JIS Z 3801、半自動溶接は JIS Z 3841、ステンレス鋼溶接は JIS Z 3821 が適用規格である[2]。

資格には有効期間がある。協会の制度では、適格性証明書の有効期間は 1 年で、満了前の申請によるサーベイランス(継続の確認)を経て 1 年ずつ延び、登録後 3 年を経過して資格を更新するときは、有効期間の満了前 8 か月から 2 か月の間に再評価を受けなければならない[2]。

日本溶接協会の溶接技能者制度 [2] 内容 発注側が確かめること
資格の種類 大きく 9 種類。材料と溶接方法で区分 部品の材料と溶接方法に合う種類か
級 手溶接・半自動溶接などに基本級と専門級 溶接姿勢や板厚が実作業に合うか
証明書の有効期間 1 年(サーベイランスで 1 年ずつ継続) 納期の時点で有効か
再評価 登録後 3 年。満了前 8 か月〜2 か月の間に受ける 失効が近い場合の交代要員

実務では、発注書か仕様書に「溶接は○○に従う資格を持つ者が行う」と書き、量産を始める前に、実際に作業する技能者の適格性証明書の写しを出してもらう。会社に有資格者が 1 人いても、その人が作業するとは限らない。公共建築工事標準仕様書が溶接着手前の確認項目に「完全溶込み溶接を行う技能資格者の識別」を入れているのは、この点を押さえるためと読める[1]。

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3. 作り方を管理する人を指定する

技能者が資格を持っていても、要領書どおりの条件で溶接されているか、材料が取り違えられていないかを見る人がいなければ品質はそろわない。冨田も、溶接士と溶接施工方法が確認されていても、実際にはその実施の管理が十分でなければ製品の品質は確実なものにならないと述べている[4]。公共建築工事標準仕様書は、溶接作業に施工管理技術者を配置し、その者は JIS Z 3410(溶接管理-任務及び責任)に基づく溶接管理を行う能力を持つ者とすると定めている[1]。

一般の部品でこの資格を条件にするかどうかは、部品の重要度で決めればよい。少なくとも、仕入先に溶接の管理責任者を決めてもらい、要領書の承認、技能者の割り当て、溶接条件の記録の確認を誰が行うのかを聞いておく。

4. 確かめ方を指定する——外観試験と非破壊試験

外観は「溶接前・溶接中・溶接後」で見る

公共建築工事標準仕様書は、溶接の着手前、作業中、完了後に確認する項目を挙げ、結果の記録を提出させている。着手前は隙間や食い違い、ルート間隔、開先角度、組立溶接、清掃、予熱など、作業中は溶接順序や姿勢、溶接電流、アーク電圧、入熱、パス間温度など、完了後はビード表面の整否、ピット、アンダーカット、クレーターなどの外観と表面欠陥、溶接部の寸法、内部欠陥などである[1]。

成田は、溶接中の外観検査は主に施工者の責任で行われ、溶接作業者自身による自主検査が大きな割合を占めるので、作業者が責任を持って溶接と自主検査を行うよう教育し管理することが重要だと述べている[5]。発注側が完成品を見て分かるのは完了後の外観だけなので、溶接前と溶接中の確認は仕入先の記録で確かめることになる。量産の前に、どの段階で何を記録しているかを聞いておくとよい。

非破壊試験は「方法・範囲・合否基準・誰が」をそろえて書く

内部の欠陥を見るには非破壊試験を使う。主な方法は放射線透過試験(RT)、超音波探傷試験(UT)、表面の割れを見る磁粉探傷試験(MT)と浸透探傷試験(PT)である。各方法の原理は非破壊試験の基礎の記事に任せ、ここでは発注書に何を書くかに絞る。

「非破壊検査を行うこと」とだけ書くと、どの継手を、どの方法で、何か所、どの基準で合格とするのかが決まらない。公共建築工事標準仕様書は、完全溶込み溶接部の超音波探傷試験について試験の規準を日本建築学会の規準とし、試験箇所数の数え方やロットの大きさ、抜取りの合否判定、不合格のロットは残りを全数試験すること、不合格箇所は補修して再試験することまで定めている[1]。工場溶接の場合の数字を抜き出すと次のとおりで、どの水準を使うかは特記で選ぶ形になっている[1]。

項目(工場溶接・完全溶込み溶接部の超音波探傷試験) レベルⅠ レベルⅡ(特記がなければこちら)
AOQL(平均出検品質限界) 2.5% 以下 4.0% 以下
ロットの大きさ(第 6 水準) 190 箇所 220 箇所
サンプルの大きさ 20 箇所 20 箇所
1 回目の判定(不合格箇所数) 0 で合格、1 で再試験、2 以上で不合格 0 で合格、1 又は 2 で再試験、3 以上で不合格
不合格ロットの扱い 残りの全ての箇所を試験する

これは建築鉄骨のための仕組みで、部品にそのまま使うものではない。ただ、抜取りで試験するなら、ロットの決め方、抜く数、合否の線、不合格のロットをどうするかまで決めておかなければ抜取りとして機能しない、ということはこの表からよく分かる。抜取検査の考え方は抜取検査の記事で扱っている。部品の発注でも、少なくとも次の 4 点を書く(当方の提案)。

1. 方法
RT、UT、MT、PT のどれか。表面の割れなら MT か PT、内部なら RT か UT。

2. 範囲
どの継手を、全数か抜取りか、抜取りなら何の何割か。

3. 試験方法と合否基準
どの規格の試験方法で行い、どの等級・基準を合格とするか。試験方法の規格と合否の基準は別のものとして書く。

4. 誰が行うか
仕入先の自主検査か、第三者の試験機関か。試験者の資格。

検査する人の独立性と資格

公共建築工事標準仕様書は、溶接部の試験を行う技能資格者を、その工事の鉄骨製作工場に所属せず、その工事の品質管理の試験も行っていない試験機関に所属する者とし、試験機関の組織体制、探傷機器、技能資格者、実績の資料を出させて承諾している[1]。非破壊試験を行う者には JIS Z 2305(非破壊試験技術者の資格及び認証)に従う試験に基づく能力を求めている[1]。

試験機関を選ぶ目安として、日本溶接協会は溶接構造物の非破壊検査を行う事業者を認定する制度(CIW)を運営している。WES 8701 にもとづき、放射線、超音波、磁気、浸透、渦電流、ひずみゲージの 6 つの検査部門の数で A 種から D 種に分け、検査技術管理者や上級検査技術者の人数、設備を審査し、認定の有効期間は 3 年としている[3]。第三者の試験を求めるときは、どの部門の認定を持つ事業者か、試験者がどのレベルの資格かを確かめる。

非破壊試験の追加は、発注の前に決める

溶接部の検査でよく起きるのが、量産が始まってから「念のため全数に浸透探傷をかけてほしい」「合否は今後この等級で」と求めることである。非破壊試験には費用と日数がかかり、合格の線を変えれば不合格になる物も変わる。

取適法(中小受託取引適正化法、2026 年 1 月施行)の適用を受ける取引では、公正取引委員会のテキストが、検査基準が明確でないために給付の内容が委託内容と異なることが明らかでない場合や、発注後に検査基準を恣意的に厳しくして従来の基準で合格とされたものを不合格とする場合には、受領を拒めないとしている[6]。テキストの不当なやり直しの違反行為事例には、従来の基準では合格していた金型について検査基準を一方的に変更し、無償でやり直しを求めた例も載っている[6]。溶接部の試験についても同じで、追加の試験や基準の変更が必要になったら、次の発注分から適用するか、費用と納期を合意してから行う。受領拒否・やり直しの範囲は受領拒否・返品・やり直しの記事で整理している。

補修の扱いも書いておく

不合格の溶接部をどう直すかも、先に決めておかないと揉める。公共建築工事標準仕様書は、外観が不良な場合は修正する、割れがある場合は溶接金属を全長にわたり除去して再溶接する(適切な試験で割れの範囲を明らかにした場合は、割れとその端から 50 mm 以上の範囲を除去して再溶接する)、超音波探傷試験で不合格の部分は除去して再溶接する、補修したすべての溶接部は確認と試験をやり直して記録を出す、といった扱いを定めている[1]。部品の発注でも、補修溶接を認めるか、認めるなら何回までか、補修した箇所をどう記録し再試験するかを書く。補修を認めない部品なら、そのことを明記する。基準を外れた溶接部を条件付きで使う判断は特別採用の記事で扱っている。

溶接を含む部品の発注チェック

1. 図面
継手の種類、開先、脚長・のど厚を溶接記号で書いたか。

2. 材料
母材の規格と、溶接材料を指定するか仕入先任せにするか。材料証明の範囲はミルシート区分の記事を参照。

3. 施工要領
溶接施工要領書を出させるか。施工方法の確認試験が必要な製品か。

4. 技能者
求める資格の種類と、実際に作業する人の証明書の写し。

5. 管理
溶接の管理責任者は誰か。

6. 外観
完了後の外観の判定基準(アンダーカット、ピット、余盛りなど)。

7. 非破壊試験
方法、範囲、試験方法の規格、合否基準、実施者。

8. 補修
補修溶接の可否と、補修後の再試験。

9. 記録
何を、いつ、どの形で提出させるか。

溶接後に熱処理を行う部品は、熱処理の指定も合わせて書く。指定の仕方は熱処理の指定の記事で扱う。量産を始める前の承認で何を出させるかは量産承認の記事、溶接構造の代わりに鋳物を検討する場合の指定は鋳物の材質と欠陥基準の記事にまとめた。

よくある質問

Q. 社内に溶接の専門家がいない。何から指定すればよいか。
A. まず図面の溶接記号と、技能者の資格の種類、完了後の外観基準の 3 つを書く。非破壊試験は、壊れたときの影響が大きい継手から順に、方法と範囲を仕入先と相談して決める。仕入先に溶接施工要領書があるかどうかを聞くことが、仕入先の管理水準を知るいちばん手早い方法でもある。

Q. 海外の仕入先で、日本溶接協会の資格を持つ人がいない。
A. 資格の名前ではなく、何に従う試験に合格しているかで判断する。ISO や各国の規格に基づく資格であれば、その規格名と試験の範囲(材料、方法、姿勢、板厚)を証明書で確かめ、部品に合うかを見る。どの資格を同等とみなすかは発注側が決めて、仕様書に書いておく。

Q. 外観だけで合格にしてよい部品はあるか。
A. 法令や顧客の規格が、溶接部の試験の方法・範囲・合否を定めている製品では、その定めが優先し、発注側の判断だけで外観に絞ることはできない。そうした定めのない部品なら、ある。強度に関わらない継手や、壊れても安全に影響しない部品なら、外観と寸法で足りることが多い。ただし、その判断を誰がしたかを図面か仕様書に残しておく。

まとめ

溶接部の品質は工程で作り込まれ、検査はそれを確認する手段にすぎない。だから溶接を含む部品の発注では、溶接施工要領、溶接技能者の資格、溶接の管理責任者、外観試験と非破壊試験の 4 つを指定する。資格は種類と有効期限を、実際に作業する人の証明書で確かめる。非破壊試験は方法、範囲、試験方法と合否基準、実施者をそろえて書き、補修の扱いも決めておく。追加の試験や基準の変更は発注前に決め、後から持ち出すときは費用と納期を合意してから行う。

出典・参考資料

  1. 公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和 7 年版(国土交通省大臣官房官庁営繕部/令和 7 年 3 月 21 日制定・令和 7 年 5 月 12 日最終改定)
  2. 溶接技能者 制度紹介(一般社団法人日本溶接協会)
  3. 非破壊検査事業者等の認定(CIW)制度紹介(一般社団法人日本溶接協会)
  4. II. 溶接工程と溶接検査―3. 溶接施工方法の確認試験(冨田真己/溶接学会誌 50 巻 9 号/1981 年)
  5. 外観検査(技術資料)(成田圀郎/溶接学会誌 57 巻 1 号/1988 年)
  6. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)

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