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投稿日:2026年10月2日

焼結部品を発注するとき指定すること——密度・含油・寸法の許容差

この記事のポイント(結論先出し)

焼結部品の材料は JIS Z 2550(2016 年改正)の記号で指定するが、規格の機械的特性は規定の試験片で測った値で、硬さから換算したり実製品から切り出した試験片で求めたりしてはならないとされている[1]。部品そのものの強さを保証させたいなら、実製品で試験することを図面や材料仕様書に書く必要がある[1]。密度は構造部品用では参考値で[1]、含油軸受は含油率が開放気孔率の 90 % 未満になってはならない[1]。寸法の普通許容差は JIS B 0411 にあり、圧縮方向の「高さ」はそれに直角な「幅」より許容差が大きい[2]。旧規格の記号(SMF など)は参考扱いで、次回改正で削除される予定である[1]。

焼結部品の図面は、材料記号だけでは決まらない

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焼結部品(粉末冶金で作る部品)は、金属粉を型で圧縮成形し、焼き固めて作る。粉の詰まり方と焼結の条件で、密度・強さ・寸法が決まる。切削で作る部品と同じ感覚で「材質 SMF4040、公差は図示のとおり」と書いて発注すると、何を保証してもらえるのかが曖昧なまま量産に入ることになる。

材料の規格は JIS Z 2550(焼結金属材料-仕様)である。軸受と機械部品に使う焼結金属材料の化学成分、機械的特性、物理的特性を定め、ISO 5755 を基に技術的内容を変更して作られている[1]。適用範囲の注記で、規格は「材料特性は化学成分及び密度だけではなく、製造工程に依存することを考慮することが望ましい」とし、特定の用途に適切な特性は、代替として使われる鍛造材や鋳造材の特性と必ずしも同じではないので、材料の選定は受渡当事者間の協定によって決めることが望ましいとしている[1]。

つまり、規格の材料記号は出発点であって、部品としての性能まで決めてくれるものではない。何を規格に任せ、何を図面で別に指定するかを分けて考える必要がある。焼結部品のコスト面の考え方(ネットシェイプ化や切削との損益分岐)は、焼結部品のネットシェイプ化などの記事で扱われている。この記事は、発注書と図面に何を書き、受入で何を確かめるかに絞る。

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材料記号は 2016 年の改正で体系が変わった

JIS Z 2550 の現行版は、材料の記号を附属書 A の記号体系で表す。焼結金属を表す文字「P」、規格番号「JIS Z 2550」、そのあとに個別項目ブロックを続ける形で、個別項目ブロックは主成分と合金の作り方(F:純鉄粉又は鉄粉に合金添加物を混合、FD:拡散合金化、FL:プレアロイ鋼粉、C:銅粉など)、結合炭素量と主な合金元素、強さ(耐力、熱処理体なら引張強さ、軸受用なら圧環強さ)の順に並ぶ[1]。

規格の例では、「-F-08C2-620H」は 0.8 % 炭素・2 % 銅を添加した鉄系材料で、熱処理体の引張強さが 620 MPa 以上のものを表す[1]。購買文書や材料仕様書では、記号ブロック・識別ブロック・個別項目ブロックのすべてを記載することが望ましいとされ、例として「P-JIS Z 2550-FLA-08N2M-C2-480SH」が挙げられている[1]。

古い図面に多い「SMF4040」のような記号は、2000 年版の附属書に規定されていた機械構造部品用焼結材料のものである。現行版はこれを附属書 JA に参考として載せているが、旧規格では移行期間として規定されていたため参考として記載し、次回改正時に削除すると明記している[1]。旧記号の図面を流用して新しい仕入先に出すときは、どの現行記号に対応させるのかを設計部門と決め、図面を改訂する時期を計画しておく。対応は一対一とは限らず、規定値の項目(旧記号は引張強さ・伸び・衝撃値・密度、現行の構造部品用は耐力または引張強さ)も違うので、購買だけで読み替えない。

規格の強さは、部品の強さではない

焼結部品の発注でいちばん誤解が多いのはここである。JIS Z 2550 は、機械的特性は規定の方法で試験して表の規定に適合しなければならないとしたうえで、「この機械的特性は、硬さから換算したり、実製品から切り出した試験片で試験を行って、求めてはならない」と定めている[1]。焼結体の引張試験は、機械加工を行わない規定の形状の試験片を、規定の形状のダイで成形して行う[1]。

規格の値は、その材料を規定の試験片にしたときの値であって、複雑な形をした実際の部品のどこを測ってもその値が出るという意味ではない。部品は形によって場所ごとに密度が違いうるからである。規格はこの点について、実製品試験で機械的特性を必要とする場合は、受渡当事者間の協定によって、材料を記載した製品図上又は使用者の技術文書(例えば材料仕様書)に、実製品で試験することを指定する、としている[1]。

したがって、部品の強さを保証させたいなら、次のどれで保証するのかを図面か仕様書に書く。

  • 材料記号の規定値(規定の試験片による。部品の強さは保証されない)
  • 実製品での試験(圧壊荷重、ねじり強さ、破断トルクなど部品の機能に合わせた試験。方法と合否値を指定する)
  • 指定した部位の密度や硬さ(後述の測り方で)

密度が強さに与える影響は大きい。日本金属学会の会報に載った技術資料は、焼結材の引張強さは見掛け密度に対してほぼ直線的に上がるのに対し、衝撃値と伸びは見掛け密度と指数関数的な関係にあり、密度 7.5 g/cm³ 以上で急激に改善されると書いている[4]。衝撃や伸びが効く部品では、「規格の材料で作っています」だけでは足りない。

密度と硬さは、測り方まで指定する

構造部品用の材料について、JIS Z 2550 は密度を参考値として示しており、規定値ではない[1]。部品の密度を管理したいなら、発注側が値と測り方を指定する。密度の試験は JIS Z 2501(焼結金属材料-密度、含油率及び開放気孔率試験方法)により、表に示す密度は乾燥密度だとされている[1]。

JIS Z 2501 は密度を 2 通りに定義している。脱脂後の質量を体積で割った「乾燥密度」と、含浸後の質量を体積で割った「含油密度」である[3]。体積は空中質量と液中質量の差から求める[3]。含油部品をそのまま量って計算すると、どちらの密度でもない値になる。仕様には「乾燥密度 ○ g/cm³ 以上(JIS Z 2501 による)」のように、どちらの密度かを書く。規格は、試験片は通常は全体を試験するが、できない場合は切断・破壊して小片にしてもよく、部品の代表部分だけの試験にも適用できるとしているので[3]、部位を指定することもできる。

硬さも同じである。JIS Z 2550 の附属書 JC は焼結材の「見掛硬さ」の試験方法を定め、見掛硬さは密度の影響を受け、試験箇所によっても変化するため、試験箇所は受渡当事者間の協定によるとしている[1]。測定は試験片の 3 か所以上で行い、その算術平均を見掛硬さとする[1]。図面に「硬さ HRB 60 以上」とだけ書くと、どこを何点測るかで結果が変わる。測る位置と点数を図面に書く。熱処理した焼結部品では、表面だけを硬くする処理をした場合の硬化層の指定も必要になる。硬化層深さの指定は有効硬化層深さの指定と測り方で、硬さの試験方法の一般は硬さの試験方法と測定条件の指定で扱う。

含油軸受は、油と気孔の条件を書く

焼結含油軸受は、焼結体の気孔に潤滑油を含ませ、自己給油の状態で使うすべり軸受である。粉体および粉末冶金協会の会誌に載った解説は、容積比で 10〜40 % の潤滑油を含浸させて使うものとし、焼結体では気孔の量(多孔率)と材料の強さが互いに相反する関係にあるので、使用目的に応じて両者の兼ね合いをどうするかが製造の基準になると述べている[5]。同じ解説は、経験上 18 vol% 以上あるべきとされる多孔率を、摺動音を抑える特殊な軸受では 12 vol% 付近まで下げている例を挙げている[5]。

JIS Z 2550 の軸受用材料(表 1・表 2)は、化学成分、開放気孔率、圧環強さを規定値とし、注で「焼結体の含油率は、開放気孔率の 90 % 未満になってはならない」としている[1]。圧環強さの試験は JIS Z 2507 により、試験片の形状が JIS Z 2507 と異なる場合は規定値が受渡当事者間の協定による、とされている[1]。実際の軸受は寸法が試験片と違うことが多いので、圧環強さで受け入れるなら、どの形状で試験した値を判定に使うかを決めておく。

含浸する油の種類は、軸受の性能を左右する。発注書には、油の種類(銘柄または粘度などの性能)を指定し、変更は事前連絡の対象にする。潤滑剤の指定の考え方は潤滑油・グリースの指定で、軸受を型番で調達する場合は軸受を調達するときの指定で扱う。

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組立側の工程にも注意がいる。JIS Z 2501 は含油率を測る手順として、溶剤に浸して気孔の油を取り除き、一定質量になるまで抽出を続けるとしている[3]。逆にいえば、溶剤による洗浄は含浸した油を抜く方向に働く。組立前の洗浄工程に含油軸受を通す設計になっていないか、通すなら再含油が必要かを、受入の前に社内で確かめておく。

寸法の普通許容差は「幅」と「高さ」で違う

焼結品の普通許容差は JIS B 0411(金属焼結品普通許容差)にある。1978 年に改正され、2023 年 10 月 20 日に確認されている[2]。この規格は、焼結機械部品と焼結含油軸受の加工寸法に適用し、削り加工のような焼結品特有の加工法以外の加工による寸法は除く[2]。図面での指示は、各寸法の区分に対する数値の表を書くか、「JIS B 0411,精級」のように規格番号と等級を書く[2]。

この規格の特徴は、寸法の向きで表が分かれていることである。粉末を圧縮成形するときの圧縮方向に直角な寸法を「幅」、平行な寸法を「高さ」と呼び、等級は精級・中級・並級の 3 つがある[2]。次の表は、規格の表から小さい寸法の区分と精級・中級だけを抜き出したものである。全体は規格を参照してほしい。

寸法の区分(mm) 幅・精級 幅・中級 高さ・精級 高さ・中級
6 以下 ±0.05 ±0.1 ±0.1 ±0.2
6 を超え 30 以下 ±0.1 ±0.2 ±0.2 ±0.5

同じ区分・同じ等級なら、高さの許容差は幅の 2 倍以上ある(並級の幅は 6 以下で ±0.2 で、高さは ±0.6)[2]。幅の数値は ISO 2768 の精級・中級・粗級に一致していると規格の参考に書かれている[2]。幅の表は 315 mm まであるが、高さの表は 120 mm までで、それを超える高さは規格の表に無い[2]。

発注側にとっての意味は、図面を描いた時点では、どの寸法が「高さ」になるかが決まっていないことである。部品をどの向きで成形するかは仕入先の金型の設計で決まる。普通許容差を JIS B 0411 で指示するなら、見積の段階で成形の向きを確かめ、高さ方向になる寸法で機能上困るものが無いかを設計部門と確かめる。困る寸法には個別の公差を書く。機械加工品の普通公差との違いは普通公差(JIS B 0405)の指定を参照してほしい。

厳しい公差は、焼結のままか、サイジングか、加工か

前出の技術資料は、要因に十分注意を払えば焼結上がりの部品として呼称寸法の 0.4 % 位の公差は製作可能だと考えられる、と書いている[4]。それより厳しい寸法は、焼結後に再び型で押して寸法を矯正するサイジングで出すことになる。同じ資料は、サイジングの精度はサイジング金型の精度と焼結上がりの寸法のばらつきに加えて素材の硬度に影響され、一般に低合金鋼ほどサイジング精度が良く、高密度・高合金鋼になるほど悪くなると述べている[4]。強度を求めて硬い材料を選ぶと、寸法を出しにくくなるということである。

同じ資料はさらに、機械加工ではそれほど工数がかからないのに気軽に図面に記入したところが、焼結で作るには非常な負担になることがあると指摘している[4]。切削部品の図面をそのまま焼結化すると、公差・面取り・角の形がこの負担になりやすい。焼結のまま、サイジング、追加の機械加工のどれでその寸法を出すのかを、見積の段階で仕入先に工程ごとに示してもらい、追加工が要る寸法を把握してから単価を比べる。

気孔があることを前提に、後工程を決める

焼結部品は気孔を含む。JIS Z 2550 は化学成分を「油含浸、樹脂含浸又は水蒸気処理を行う前の材料の化学成分」としている[1]。含浸や水蒸気処理は、気孔のある材料に対して後から行う処理で、行うかどうか、行うならどれかは発注側の要求と仕入先の提案で決める。めっきや塗装をする部品、気密が必要な部品では、気孔の封止をどうするかを工程として指定しておかないと、処理液の残りや漏れの原因になる。気孔が機械的特性に及ぼす影響の考え方は、焼結部品の気孔による機械特性低下の防止も参考になる。

錆についても同じことがいえる。気孔に水分や処理液が残ると錆の原因になりうるので、保管と輸送の防錆の条件は発注時に決める。防錆の指定は輸送時の防錆の指定で扱う。

発注書と図面に書くことの一覧

項目 書き方の例 書かないとどうなるか
材料 P-JIS Z 2550-F-08C2-620H(現行記号で全ブロック) 旧記号では対応が仕入先任せになる
部品の強さ 実製品での試験方法と合否値 規定の試験片の値しか保証されない
密度 乾燥密度 ○ g/cm³ 以上、JIS Z 2501、部位 構造部品用では規格の値は参考値
硬さ 見掛硬さ、試験方法、測定位置、3 か所以上 測る位置で値が変わる
含油(軸受) 油の種類、含油率、圧環強さの試験形状 油の変更や試験形状の違いが分からない
普通許容差 JIS B 0411,中級+機能寸法の個別公差 高さ方向の寸法が想定より大きくばらつく
後工程 サイジング・追加工・含浸・水蒸気処理の有無 表面処理や気密で不具合が出る

基準は発注のときに出す

実製品の強さや部位の密度を、届いてから「足りない」と言っても、発注時に指定していなければ不合格の根拠にならない。取適法のテキストは、委託内容が明示されていなかったり検査基準が明確でなかったりしたために、給付の内容が委託内容と異なることが明らかでない場合は、受領を拒むことは認められないとしている[6]。焼結部品では、規格の材料記号を書いただけでは部品の性能は明示されていない、ということを前提に、保証してほしい項目を発注の時点で書く。

よくある質問

仕入先から材料のミルシートのような証明書をもらえば十分ですか

焼結部品の材料の機械的特性は、規定の試験片で求めた値である[1]。証明書の値は材料の値であって、部品の値ではない。部品の強さが問題になる用途なら、実製品での試験を指定し、その結果を求める。

図面に「SMF4040」とあります。そのまま発注してよいですか

現行規格では参考扱いで、次回改正で削除される予定の記号である[1]。当面は通じるとしても、どの現行記号に相当させるかを仕入先任せにしない。設計部門と対応を決め、必要なら図面を改訂する。

試作品と量産品で寸法の出方が違いました

試作を機械加工や別の型で作っていた可能性がある。焼結の寸法は成形の向きとサイジングの有無で変わるので[2][4]、試作の段階で量産と同じ工程かどうかを確かめ、違うなら量産の初品で寸法を確かめ直す。

含油軸受の回転が重いと組立工程から連絡がありました

軸とのすきま、油の種類、組立前の洗浄で油が抜けていないかを確かめる。洗浄工程を通しているなら、その溶剤と時間を仕入先に伝えて影響を確かめてもらう[3]。

まとめ

焼結部品は、材料記号(JIS Z 2550)を書いても、部品の強さ・密度・硬さまでは決まらない。規格の機械的特性は規定の試験片の値で、部品で保証させたいなら実製品での試験を図面や仕様書に指定する。密度は乾燥密度か含油密度かと部位を、硬さは見掛硬さの測定位置と点数を書く。含油軸受は油の種類と含油率、圧環強さの試験形状を決める。寸法の普通許容差は JIS B 0411 で読み、高さ方向が幅方向より大きいことを前提に、成形の向きと機能寸法を見積の段階で確かめる。旧記号は現行記号に置き換える計画を立てる。

出典・参考資料

  1. JIS Z 2550:2016 焼結金属材料-仕様(JIS 検索で閲覧)(日本産業標準調査会/2016 年 9 月 20 日改正、2021 年 10 月 20 日確認)
  2. JIS B 0411:1978 金属焼結品普通許容差(JIS 検索で閲覧)(日本産業標準調査会/1978 年 4 月 1 日改正、2023 年 10 月 20 日確認)
  3. JIS Z 2501:2000 焼結金属材料-密度,含油率及び開放気孔率試験方法(JIS 検索で閲覧)(日本産業標準調査会/2000 年 3 月 20 日改正、2024 年 10 月 21 日確認)
  4. 川北宇夫「粉末冶金法の機械部品製造への応用とその限界」日本金属学会会報 Vol.13 No.5(日本金属学会/1974 年)
  5. 渡邊恍尚「焼結含油軸受」粉体および粉末冶金 Vol.48 No.9(粉体粉末冶金協会/2001 年)
  6. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)

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