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投稿日:2026年10月2日

受入検査の結果を紙の記録表から移す——仕入先×品目の時系列で読み返せる形に

この記事のポイント(結論先出し)

紙の受入検査記録は、その 1 ロットの合否を残すには足りるが、仕入先×品目ごとの時系列として読み返すことができない。JIS Z 9015-1 の抜取検査では、連続 5 ロット以内の初検査で 2 ロットが不合格になればきつい検査に移るなど、次のロットの検査の厳しさが過去の結果で決まるので、初検査か再提出かまで区別した並びが要る。紙から移すときは、検索と集計に使う項目(発注・品目・仕入先・ロット・検査方式・サンプル数・不適合数・判定・初検査か再提出か・判定者・測定機器)を欄にし、測定値の一覧や写真や仕入先の成績書は添付に回す。過去の紙は全部を打ち込まず、いまの検査の状態と直近のロットの結果だけを移して始める。

紙の検査記録表に、いま何が書かれているか

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受入検査の記録を紙で残している工場では、品目ごとに作った記録表に、受入日、仕入先、品番、ロット番号、受入数量、抜き取った数、測定値、判定、検査者の印を書き込み、月ごとや仕入先ごとにファイルに綴じていることが多い。測定項目の多い品目は、図面の寸法を並べた別紙に測定値を記入している。

紙の記録は、その場で書けて、印を押せて、誰でも読める。1 つのロットについて「検査した」「合格した」という事実を残す道具としては、よくできている。困るのは、記録を後から使おうとしたときである。

受入検査の位置づけそのものは、JIS Z 8141 が「物品を受け入れる段階で、受入の可否を一定の基準の下で行う検査」と定義しており[3]、工程検査との役割の分け方は受入検査と工程検査の違いで扱っている。この記事は、検査の結果をどう記録し、紙からどう移すかに絞る。

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紙のままだと答えられない問い

次のロットを、どの厳しさで検査すればよいか

計数値の抜取検査を JIS Z 9015-1 で運用している場合、次のロットの検査の厳しさは過去のロットの結果で決まる。規格は、なみ検査で連続 5 ロット以内の初検査で 2 ロットが不合格になればきつい検査に移り、きつい検査で連続 5 ロットが初検査で合格すればなみ検査に戻ると定めている[1]。なみ検査からゆるい検査に移るには、切替えスコアの最新の値が 30 以上で、生産が安定しており、所管権限者がゆるい検査を望ましいと考えた場合という条件が付く[1]。きつい検査のもとで初検査の不合格ロットの累計が 5 に達したら、規格による合否判定検査を停止する[1]。

この判断には、仕入先×品目ごとに、ロットの結果を受け入れた順に並べた記録が要る。しかも規格は、切替えの判定で再提出ロットを無視するとしているので[1]、初検査の結果なのか、不合格のあと選別して出し直された再提出の結果なのかを区別して残す必要がある。月別に綴じた紙のファイルからこれを数えるのは、ロットが増えるほど難しくなる。切替えルールの考え方は抜取検査の有効性と方法で解説している。

誰が合格にしたのか

JIS Q 9001 は、製品及びサービスのリリースについて文書化した情報を保持し、その中に合否判定基準への適合の証拠と、リリースを正式に許可した人(又は人々)に対するトレーサビリティを含めることを求めている[2]。これは製品・サービスを次の段階へ出すときの要求で、受入検査の合格判定を名指しした規定ではないが、同じ考え方を受入れに当てはめると、誰が合格にしたかを追える形にしておくことになる。紙の記録表では検査者の印がこれに当たるが、印が読めない、代理で押した、という事態は珍しくない。移すなら、判定した人を名前の欄ではなく利用者として記録できる形にしたい。

どの測定機器で測ったのか

同じ規格は、測定のトレーサビリティが要求事項となっている場合などに、測定機器を定められた間隔で又は使用前に校正又は検証することを求め、測定機器が意図した目的に適していないことが判明した場合は、それまでに測定した結果の妥当性を損なうものであるか否かを明確にし、必要に応じて適切な処置をとるよう求めている[2]。ノギスやマイクロメータの校正切れが見つかったとき、そのノギスで測ったロットを探せるかどうかは、記録に機器の番号が残っているかで決まる。紙の記録表に機器の欄がなければ、遡れない。

受け取った日と、検査を終えた日はいつか

取適法の対象になる製造委託では、支払期日の起算日になる受領日は、給付の目的物を検査の有無にかかわらず受け取り自己の占有下に置いた日である[4]。検査を終えた日とは別の日になることがある。7 条記録には、検査をした場合はその検査を完了した日、検査の結果、検査に合格しなかった給付の取扱いを記録することとされている(記録規則第 1 条第 1 項第 3 号)[5]。どの日付をどの帳票に残すかの整理は納品と検収の記録をどう残すかにまとめているので、ここでは「紙の記録表の日付欄が受領日なのか検査完了日なのか」を、移す前に決めておくことだけを強調しておく。

何を「欄」にし、何を「添付」にするか

紙から移すときにいちばん迷うのが、測定値を全部入力するかどうかである。判断の軸は、その情報を検索や集計に使うか、証拠として見るだけかである。前者は欄にし、後者は添付にする。

情報 欄にするか添付か 理由
発注番号・品目・仕入先 欄 仕入先×品目の時系列を作る鍵になる
ロット番号・受入数量 欄 不具合が出たとき、同じロットの残りを探す
検査方式(全数・抜取・省略)と、抜取ならなみ・きつい・ゆるいの別 欄 切替えの判定と、返品できる範囲の判断に使う
サンプル数・不適合品の数 欄 不適合率の推移を仕入先ごとに出せる
判定と、初検査か再提出か 欄 切替えの判定は初検査の結果で数える
検査完了日・判定した人 欄 7 条記録と、リリースを許可した人の記録
使った測定機器の番号 欄 校正切れが見つかったときに遡る
寸法ごとの測定値の一覧 添付(傾向を見る重要寸法だけ欄にしてもよい) 全部を欄にすると入力が重く、移行が止まる
外観の写真・仕入先の検査成績書 添付 証拠として見るだけで、集計しない

測定値をすべて欄にしたくなる気持ちは分かるが、図面の寸法が数十あるような品目でそれをやると、入力の負担で紙に戻る。まず判定と不適合の数を欄にし、傾向を追いたい重要寸法を数個だけ欄に足す、という順で広げるほうが続く。

不合格だったときに何を決め、どう書くかは、受入検査の記録とは別の紙(不適合報告書)で扱うことが多い。その欄の作り方は不適合報告書(NCR)に何を書くかにある。受入検査の記録には、不適合報告書の番号を引ける欄を 1 つ置いておけば足りる。

紙から移す順番

1. 様式をそろえる
品目ごと、仕入先ごとに別々の様式で書かれている記録表を、上の表の欄を持つ 1 つの様式にそろえる。移す前に紙の上でそろえておくと、移した後の入力がそのまま続く。

2. 過去の紙は、いまの状態だけを移す
何年分もの紙を全部打ち込む必要はない。抜取検査の切替えを使っているなら、仕入先×品目ごとに「いまの検査の厳しさ」「直近のロットの初検査の結果(切替えの判定に必要な分)」「切替えスコアの現在値」だけを移す。それより前の紙は、そのまま保存して、保存場所を記録しておく。

3. 二重記入の期間を短く区切る
紙に書いてから入力する期間を長く置くと、どちらかが抜ける。期間を 1 か月などと区切り、終わったら紙の様式を回収する。

4. 入力の場所を検査の場所に近づける
検査台から離れた事務所でまとめて入力する運用は、入力の遅れと写し間違いを生む。検査台の近くに端末を置けるかどうかで、移せる欄の数が変わる。

表計算の購買業務を全体としてどの順番で移すかは表計算の購買業務をシステムに移す順番で、在庫への入庫の記録とのつなぎ方は在庫表を表計算で持つ限界で扱う。

記録を電子で持つときに守ること

取適法の対象になる製造委託で、検査の結果を 7 条記録として電子で持つ場合、記録規則はいくつかの要件を置いている。記録は、その事項に係る事実が生じ、又は明らかになったときに、速やかに行う(第 2 条第 1 項)[5]。電磁的記録で記録する場合は、訂正又は削除を行ったときにその事実及び内容を確認できること、必要に応じて画面に表示し書面に出力できること、中小受託事業者を条件に、また製造委託等をした日の範囲を指定して検索できることが求められる(第 2 条第 3 項)[5]。保存は、記録すべき事項の全部を記録した日から 2 年間である(第 3 条)[5]。

共有の表計算ファイルに検査結果を書き込む運用は、誰でも過去の行を上書きできるので、訂正の事実と内容を確認できるという要件を満たしにくい。表計算で続けるなら、訂正は行を足して行い、元の行は消さない約束にする。検査の方式(全数・抜取り・省略・相手への委任)によって返品できる範囲が変わる点は、公正取引委員会のテキストに沿って受領拒否・返品・やり直しにまとめている。

紙のままでよい場合

受け入れる品目と仕入先が少なく、全数検査か省略かのどちらかで、抜取検査の切替えを使っていない工場なら、紙の記録表で足りることも多い。その場合でも、紙の記録表に「初検査か再提出か」「測定機器の番号」「受け取った日」の 3 つの欄を足しておくと、後から問われたときに答えられる。無検査で受け入れる品目は、JIS Z 8141 が「納入先の過去の実績と信頼関係に基づき、受入検査を省略した納入方式」として定義する無検査納入方式[3]に当たるので、省略を決めた根拠と時期を別に残しておく。

よくある質問

仕入先の検査成績書を受け取っているだけで、自社では検査していません

それは受入検査の省略か、相手への検査の委任に当たる。委任するなら文書で行うことが返品の前提になる点は、納品と検収の記録をどう残すかで扱っている。記録としては、成績書を添付として残し、受け取った日と、成績書の内容を確認した人を欄に残す。

測定値は全部入力しなければいけませんか

いけないわけではないが、最初から全部を欄にすると続かない。判定と不適合の数を先に欄にし、傾向を見たい重要寸法から足していく。残りの測定値は、記入した紙やファイルを添付にして証拠として残せばよい。

検査者の印鑑はどうなりますか

印鑑の役割は「誰が判定したか」を残すことにある。電子で持つなら、判定した利用者が記録に残る形にすれば、その役割を果たせる。代理で判定した場合は、代理であることも分かるようにしておく。

再提出されたロットの結果は、どこに書けばよいですか

同じ欄に上書きせず、新しい行として「再提出」と区別して書く。規格は切替えの判定で再提出ロットを無視するとしているので[1]、上書きすると初検査で不合格だった事実が消え、きつい検査に移るべき場面を見落とす。

まとめ

紙の受入検査記録は、1 ロットの合否を残す道具としては十分だが、仕入先×品目の時系列として読み返せない。抜取検査の切替え、合格を許可した人の追跡、校正切れの機器で測ったロットの洗い出しは、いずれもその時系列が要る。紙から移すときは、検索と集計に使う項目を欄にし、測定値の一覧や写真は添付に回す。初検査と再提出は行を分け、訂正は上書きせず行を足す。過去の紙は全部を打ち込まず、いまの検査の状態と直近のロットの結果だけを移して始める。

出典・参考資料

  1. JIS Z 9015-1:2006 計数値検査に対する抜取検査手順―第 1 部:ロットごとの検査に対する AQL 指標型抜取検査方式(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2006 年 11 月 20 日改正)
  2. JIS Q 9001 品質マネジメントシステム―要求事項(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/本体 2015 年 11 月 20 日改正・追補 1 2025 年 3 月 21 日)
  3. JIS Z 8141:2022 生産管理用語(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2022 年 3 月 22 日改正)
  4. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
  5. 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第七条の書類等の作成及び保存に関する規則(e-Gov 法令検索(デジタル庁))

検査の結果を、発注に紐づけて残す

この記事で扱った項目のうち、Newji one では、発注を選んで検査依頼を作ると検査番号が採番され、検査の区分(通常・限定・特別)、検査担当者、検査日、結果(合格・条件付き合格・不合格)、所見を記録でき、検査報告を印刷できます。発注を「入庫確認」で納品済みにすると在庫に入り、「検収完了」で検収を終え、検収書や一括検収書を印刷できます。なお、検査は発注単位で記録する形で、ロット番号・サンプル数・測定値・測定機器・抜取検査のなみ/きつい/ゆるいの別を持つ欄はありません。こうした項目は、検査報告とは別に残す必要があります。

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