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投稿日:2026年10月16日

ポリエチレンフォーム緩衝材の指定——JIS Z 0235 の最大加速度-静的応力線図で厚さと面積を決める

この記事のポイント(結論先出し)

ポリエチレンフォーム(発泡ポリエチレン)の緩衝材は、「30 倍発泡の 20 mm」と書いても、製品が落ちたときに守れるかどうかは決まらない。守れるかは、製品の重さを緩衝材の受ける面積で割った静的応力と、厚さ、落下の高さで決まる。緩衝材の性能は JIS Z 0235 の衝撃荷重試験で求める「最大加速度-静的応力線図」で表し、標準の落下高さは等価 60 cm である[1]。製品がどこまでの加速度に耐えるかは JIS Z 0119 で求め[3]、包装貨物として何 cm から落とすかは JIS Z 0200 が質量とレベルで示す[4]。発注では材料の種類と見掛け密度に加えて、厚さと受ける面積を、製品の質量・耐えられる加速度・落下高さから決めて図面にする。長く積んで保管するなら圧縮クリープも条件に入れる[1]。

「厚さ 20 mm のポリエチレンフォーム」では、守れるかどうかが決まらない

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部品や製品を仕入先から送ってもらうとき、緩衝材は「ポリエチレンフォーム 20 mm で全面を囲う」「30 倍発泡品」のように、材料と厚さだけで指定されることが多い。ところが同じ厚さの同じ材料でも、軽い製品を広い面で受けるか、重い製品を小さな面で受けるかで、落下したときに製品にかかる衝撃は大きく変わる。柔らかすぎれば底付きし、硬すぎれば衝撃をそのまま伝える。

この記事は、工業製品の輸送梱包に使うポリエチレンフォームの緩衝材を、発注する側が何を指定し、仕入先に何を出させるかを、JIS Z 0235(包装用緩衝材料-評価試験方法)を中心に整理する。外箱の強度は段ボール箱の規格と強度の指定、パレットの大きさはパレットのサイズと規格、製品そのものに振動・衝撃試験を課す場合の決め方は振動・衝撃試験を仕様に入れるときで扱った。同じ梱包材の束では、帯電防止袋と静電シールド袋の違いと乾燥剤シリカゲルの指定を書いている。

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材料としてのポリエチレンフォーム——JIS K 6767 の試験項目

ポリエチレンを原料とする軟質・半硬質の発泡プラスチックの試験方法は JIS K 6767:1999 が定めている。基本試験として見掛け密度、圧縮応力-ひずみ、圧縮永久ひずみ、引張強さ及び伸び、熱的安定性、吸水率、燃焼性を挙げ、用途に関わる補足試験として動的緩衝性能、圧縮クリープ、熱伝導率、透湿度、繰返し圧縮永久ひずみなどを挙げる[2]。見掛け密度の測り方は JIS K 7222(ISO 845 と一致)を引いている[2]。

市場では「○倍発泡」という呼び方がよく使われるが、JIS K 6767 の試験項目にあるのは見掛け密度であり、発泡倍率という項目は無い[2]。仕様書で材料の硬さの目安を決めるなら、測り方が規格で決まっている見掛け密度で書き、仕入先の呼び方(倍率)は参考として併記するほうが、受入で確かめやすい。

ただし、見掛け密度は材料の目安であって、緩衝の性能そのものではない。どれだけ衝撃を和らげるかは、次の JIS Z 0235 の試験で求める線図で見る。

JIS Z 0235 の衝撃荷重試験——最大加速度-静的応力線図

JIS Z 0235:2002 は、包装用緩衝材料の緩衝特性試験方法と圧縮クリープ試験方法を定めた規格で、ISO 4651 を基にしている[1]。緩衝特性試験は、衝撃荷重試験方法、簡便法としての圧縮試験方法(附属書 1)、国際規格に対応する衝撃荷重試験方法(附属書 2)のいずれかで、通常は衝撃荷重試験で行う。衝撃荷重試験ができないときは受渡当事者間の協定で簡便法の圧縮試験でもよく、海外との取引などで必要なら協定で附属書 2 の方法で行ってもよい[1]。

衝撃荷重試験は、質量を変えられるおもりを試験片に落として、おもりに生じた加速度と試験片の厚さの変化を測る。おもりの等価自由落下高さは 60 cm を標準とし、同じ試験片に 60±5 秒の間隔で 5 回続けて衝撃を加える[1]。おもりの質量は、最大加速度-静的応力線図が描けるように静的応力の値を 5 点以上選び、同じ条件ごとに 3 個の試験片で行う[1]。静的応力は、おもりの荷重を試験片の荷重を受ける面の面積で割った値である[1]。

項目 衝撃荷重試験 圧縮クリープ試験
試験片の標準寸法 縦 150±5 mm・横 150±5 mm・厚さ 50±5 mm 衝撃荷重試験に準じる(使う形状でもよい)
前処置 23±2 ℃・相対湿度 50±5 % で 16 時間以上 同じ
負荷のかけ方 等価落下高さ 60 cm を標準に、60±5 秒間隔で 5 回 保管中にかかる最大の荷重を長時間
試験片の数 同じ条件ごとに 3 個、静的応力 5 点以上 同じ条件ごとに 3 個
報告の形 最大加速度・最大衝撃ひずみ・衝撃永久ひずみと静的応力の線図 圧縮クリープひずみ-時間線図

表は JIS Z 0235 の 5. と 6. の規定をまとめたものである[1]。最大加速度は、3 個の試験片の 1 回目の値の平均と、2〜5 回目の値の平均を分けて出す[1]。緩衝材は繰り返し衝撃を受けると性能が変わるので、何回目の値を使った線図かを確かめる。必要に応じて異なった厚さで試験を行ってもよいとされているので[1]、使う厚さで描いた線図かも見る。

線図の読み方——面積を決めるのは発注する側の仕事

最大加速度-静的応力線図は、横軸が静的応力、縦軸が落としたときの最大加速度である[1]。製品の質量が決まっていれば、静的応力は緩衝材が製品を受ける面積で決まる。面積を小さくすれば静的応力は上がり、大きくすれば下がる。線図の上で、製品が耐えられる加速度より下に収まる静的応力の範囲を読み、その範囲に入るように面積を決める。面積を変えられないなら厚さや材料を変える。

この手順で使う 3 つの値のうち、製品が耐えられる加速度と落下の高さは、緩衝材の仕入先ではなく製品を出す側か受ける側が持っている情報である。だから、緩衝材の仕様を仕入先に「お任せ」にすると、だれも計算していない状態になりやすい。

製品が耐えられる加速度——JIS Z 0119 で求める

製品の衝撃に対する強さは JIS Z 0119:2002(包装及び製品設計のための製品衝撃強さ試験方法)で評価する。この規格は、包装設計と製品設計のために、製品の衝撃に対する強度を許容加速度、許容速度変化又はその両方による損傷境界曲線として評価する試験方法を定めている[3]。試験には許容速度変化試験(方法 A)と許容加速度試験(方法 B)がある[3]。

新しい製品や部品を初めて梱包して送るときは、この許容加速度が分かっていないことが多い。すでに出荷している製品なら、輸送で壊れなかった実績のある梱包を基準にできるが、梱包を変える(緩衝材を薄くする、材料を替える)なら、許容加速度を試験で求めておくと、変更の可否を数字で判断できる。

何 cm から落とすか——JIS Z 0200 の落下高さ

包装貨物の性能試験の一般通則である JIS Z 0200:2023 は、自由落下試験の落下高さを、供試品の質量とレベル(1〜4)ごとに示している。たとえば質量 10 kg 以下ではレベル 1 が 1,000 mm、レベル 4 が 400 mm で、質量が大きくなるほど落下高さは低く設定されている[4]。直方体の容器なら、質量 30 kg 以下では 1 角、3 りょう、6 面に、30 kg を超えると 1 角、3 りょう、5 面(面 1 を除く)に落とす[4]。試験計画は物流の過程で想定される危険から選び、試験レベルは受渡当事者間の協定によって変えてもよいとされている[4]。

緩衝材の設計で使う落下高さと、包装貨物の試験の落下高さは、同じ条件に合わせておくのが筋である。緩衝材の線図は等価落下高さ 60 cm を標準に描かれるので[1]、包装貨物の試験を 80 cm や 100 cm で行うなら、その高さで描いた線図があるかを仕入先に確かめる。

振動では別の特性が効く

落下の衝撃に合わせて選んだ緩衝材が、輸送中の振動に対しても最適とは限らない。東京国立博物館の和田らは、文化財の梱包によく使うポリエチレンフォームを加振して振動特性を調べ、静的応力が大きくなるほど固有振動数(伝達率のピーク)が低い周波数へ移ること、板厚が大きくなるほど同じく低い周波数へ移ること、入力の加速度が大きくなるほど固有振動数が下がり、その伝達率も下がることを報告している[5]。同じ論文は先行研究を引いて、衝撃の吸収に最適な静的応力を選ぶと振動の減衰が効果的でなくなる場合があり、衝撃と振動の両方から守る難しさがあるとも書いている[5]。

購買にとっての意味は、衝撃の線図だけで緩衝材を決めると、トラック輸送の振動で製品が共振する場合がある、ということである。精密な機器や、振動で緩みや摩耗が出る製品なら、包装貨物として振動試験も行うかを、振動・衝撃試験の記事の考え方で決める。

長く積んで保管するなら圧縮クリープも見る

緩衝材は、上に荷を積んだまま長く置くと、少しずつつぶれて厚さが減る。JIS Z 0235 の圧縮クリープ試験は、試験の荷重を包装物品の保管中に加わる荷重の最大値を想定して決め、試験の期間を包装物品が保管される期間として受渡当事者間の協定で決めるとしている[1]。報告は、時間を対数目盛にした圧縮クリープひずみ-時間線図で行う[1]。

倉庫で何段積むか、何か月置くかは、発注する側が分かっていることなので、条件として渡す。厚さが減った緩衝材は、落下の線図を描いたときの厚さより薄くなっているので、保管後に輸送する流れなら、その分を見込んで厚さを決める。

発注書と図面に書くこと

1. 材料の種類と見掛け密度
見掛け密度は JIS K 7222 による値で、範囲を書く[2]。

2. 形状・厚さ・製品を受ける面積
緩衝材の図面で決める。面積は静的応力を決める値なので、製品の質量とともに書く[1]。

3. 設計の前提
製品の質量、製品の許容加速度(JIS Z 0119 などで求めた値)[3]、想定する落下高さ[4]。

4. 緩衝性能の根拠
JIS Z 0235 による最大加速度-静的応力線図。何回目の値か、厚さはいくつか[1]。

5. 保管条件
積み段数と期間。必要なら圧縮クリープの線図[1]。

6. 包装貨物の試験
JIS Z 0200 のどの試験をどのレベルで行うか[4]。

7. 静電気・湿気の条件
電子部品なら緩衝材も静電気対策品にするか、乾燥剤を併用するか。

内容物に湿気をきらう製品なら、緩衝材も包装内の吸湿性の材料として乾燥剤の量の計算に入れるかを、仕入先と確かめておく。乾燥剤の量の決め方は乾燥剤シリカゲルの指定で書いた。粉体の原料を袋で受け取る場合はフレコンバッグの発注、製品の密閉を検査で確かめる場合は気密試験・リークテストの記事も参照してほしい。

よくある質問

Q. 緩衝材は厚いほど安全ではないか。
A. 厚さだけでは決まらない。同じ厚さでも、製品を受ける面積で静的応力が変わり、線図の上の位置(落としたときの最大加速度)が変わる。面積と厚さを線図で一緒に決める[1]。

Q. 仕入先が「何倍発泡」としか言わない。
A. JIS K 6767 の試験項目にあるのは見掛け密度なので[2]、見掛け密度の値を出してもらい、緩衝性能は JIS Z 0235 の線図で示してもらう。

Q. 製品の許容加速度が分からない。
A. JIS Z 0119 の許容加速度試験や許容速度変化試験で求める[3]。求めるまでの間は、輸送で壊れなかった実績のある梱包を基準にし、変える場合は包装貨物として JIS Z 0200 の試験を行って確かめる[4]。

Q. 衝撃では問題なかったのに、輸送後に部品が緩んでいた。
A. 振動で共振した可能性がある。ポリエチレンフォームの固有振動数は静的応力、厚さ、入力の加速度で変わる[5]。振動試験も条件に入れて緩衝の設計を見直す。

まとめ

ポリエチレンフォームの緩衝材は、材料と厚さだけでは性能が決まらない。JIS Z 0235 の最大加速度-静的応力線図を使い、製品の質量と受ける面積から静的応力を出して、製品の許容加速度(JIS Z 0119)を超えない範囲に入るよう面積と厚さを決める。落下の高さは JIS Z 0200 の質量とレベルで考え、線図の落下高さとそろえる。材料は見掛け密度で指定し、長く積んで保管するなら圧縮クリープ、振動に弱い製品なら振動特性も条件に入れる。

出典・参考資料

  1. JIS Z 0235:2002 包装用緩衝材料-評価試験方法(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2002 年 3 月 20 日改正・2022 年 10 月 20 日確認)
  2. JIS K 6767:1999 発泡プラスチック-ポリエチレン-試験方法(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/1999 年 10 月 20 日改正・2025 年 10 月 20 日確認)
  3. JIS Z 0119:2002 包装及び製品設計のための製品衝撃強さ試験方法(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2002 年 3 月 20 日改正)
  4. JIS Z 0200:2023 包装貨物-性能試験方法一般通則(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2023 年 1 月 20 日改正)
  5. 和田浩・今北憲・高木雅広・神庭信幸「文化財梱包の緩衝材に用いられるポリエチレンフォーム材の振動特性評価に関する研究」日本包装学会誌 Vol.27, No.5(日本包装学会/2018 年)

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