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調達課のDXが進まない本当の理由

この記事のポイント(結論先出し)
調達課の DX が進まない理由を「意識が古い」「IT リテラシーが足りない」で説明すると、打ち手が研修と掛け声にしか行き着かない。制度の側から見ると、止まっている場所は性質の違う4つに分かれる。①制度が要求しておらず投資判断でよいもの、②すでに義務なのに知られていないもの、③相手の合意が要るもの、④データはあるが保存の要件を満たせないもの。このうち②には、もう選ぶ余地がない。電子でやりとりした取引情報を出力書面で保存する措置は令和3年度の税制改正で廃止され、その出力書面は保存書類として取り扱わないこととされた。経過措置だった宥恕措置も、令和5年12月31日の期限到来で廃止されている。行政が実際に指摘している中身も、意識ではなく手続に寄っている。令和7年度の取適法違反の類型別件数14,115件のうち、発注内容等の明示義務違反が6,242件で、実体規定違反のうち最も多い支払遅延(3,787件)を上回っている。
目次
はじめに:なぜ調達課のDXは進まないのか
調達課のDX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれて久しいですが、現場目線で見るとその道のりは決して平坦ではありません。
多くの製造業では、依然としてFAXと電話、それにエクセルが幅を利かせています。
「DX推進プロジェクト」に予算はついたが、一向に成果が見えない。
それどころか、“DX疲れ”が現場に蔓延し、現状維持が最善という雰囲気すら生まれている光景も見られます。
本記事では、調達部門のDXがなぜ進まないのか、製造業現場で20年以上培った体験をベースに、アナログ文化が根強く残る背景や本当の課題、そして“昭和から抜け出す”ための根本的なアプローチについて深く考察します。
バイヤーを目指す方、サプライヤーの方にも、現場で役立つ視点としてぜひお役立てください。
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進まない理由は、4つに分けると見え方が変わる
「DX が進まない」という言い方には主語がない。何が進んでいないのかを分けないまま議論すると、打ち手は必ず意識改革に収束する。だが調達購買の業務を制度の側から見ると、止まっている場所は性質の違う4つに分かれる。分けたとたんに、急ぐべきものと急がなくてよいものが逆だったと分かることが多い。
| 止まっている場所 | 現場で起きていること | 誰が決められるか |
|---|---|---|
| ① 制度が要求していない | 紙の注文書をスキャンして捨てたい/承認印をワークフローに載せたい | 自社だけで決められる。投資対効果で判断してよい |
| ② 要求されているのに知られていない | メールで受け取った見積書・請求書を印刷して綴じている | 自社だけで決められる。ただし期限はすでに過ぎている |
| ③ 相手が対応できない | 取引先が受発注システムに接続できない・したがらない | 相手との合意が要る。求め方にも法的な線がある |
| ④ 記録の要件を満たせない | データは残っているが、検索も改ざん防止も整っていない | 自社だけで決められる。猶予が効く範囲がある |
現場で最も抵抗が強いのは①と③である。①は「紙のほうが早い」で止まり、③は「取引先が困る」で止まる。どちらも相手のいる話に見えるので、議論が長くなる。一方②と④は抵抗というより認識の問題で、担当者が知れば動く。ところが多くの推進計画は、①と③に時間を使い、②と④を後回しにする。順番が逆になっている。
失敗しがちなDX推進の“よくある誤解”
DX=IT導入ではない
「うちも流れに乗って最近○○システム入れましたよ」「RPAで一部自動化しました」という声をよく耳にします。
しかし、これで本当の意味でDXが進んでいるかというと、答えはNOです。
新しいITツールやシステムを導入しただけで、“変革”が起きるわけではありません。
現場の業務フローや意識、部門間の壁などはそのままに、見かけだけデジタル化した結果、かえって余計な手間や二重処理が増えた、という現象が日本の工場で多発しています。
“現場ファースト”が抜け落ちている
調達や購買部門にありがちなのが、システム導入を情報システム部門や経営企画本部が旗を振って主導し、“現場の声”が充分に活かされていないケースです。
現場では、「また業務フローが変わる」「従来のやり方でも問題は起きていない」「サプライヤーさんも困るだろう」といった心理が働き、新ツールやスキームについて行きたがりません。
この温度差こそ、DXが空回りする最大の要因です。
昭和のまま止まる調達業務のリアル
なぜ紙・ハンコ文化は根強いか
調達購買の現場では、いまだに「注文書はFAX」「見積の依頼も返信も電話」「承認には紙とハンコ」が基本です。
なぜこれほどまでにアナログが根強いのでしょうか。
その最大の理由は、商習慣とリスクヘッジです。
何か問題が起きたとき、「証拠が残る」「責任の所在が明確になる」ことを重視するあまり、FAXや紙の“正式文書”が心の支えになっています。
また、サプライヤーとのコミュニケーションにおいても「顔が見える」「ニュアンスを伝えやすい」ことが重視されていて、形式的なデジタル化では信頼関係までカバーできないと考える担当者が多いのです。
エクセル万能主義と“属人化”
調達部門で働くベテランバイヤーの間では、エクセルは万能ツールです。
マクロやVLOOKUPを駆使し、自分だけの管理表を組み上げて日々の業務をさばいています。
しかし、これは“個人のノウハウの塊”でもあり、システム化とは逆行するものです。
「Aさんしか使えない」「急な退職で大混乱」「業務標準化が進まない」
こうしたリスクを現場は肌でわかっているものの、変化への漠然とした不安もまた根強く、このジレンマが昭和的な業務スタイルを温存させています。
「紙で保存する」という選択肢は、制度からもう消えている
ここまでの話は、どれも「変えるか、変えないか」を自分たちで選べる前提で書かれている。ところが②の領域だけは、その前提が外れている。意識の問題ではなく、期限のある義務だからである。
電子帳簿保存法は、所得税(源泉徴収に係る所得税を除く)及び法人税の保存義務者が取引情報を電磁的方式により授受する取引を行った場合には、その取引情報を電磁的記録により保存しなければならない、という制度である[1]。ここでいう取引情報とは、取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう[1]。調達購買が日常的に扱っている書類が、ほぼそのまま並んでいる。
かつては、この電子データを印刷した書面で保存することも認められていた。国税庁の一問一答は、令和3年度の税制改正前はそのデータを出力した書面等により保存することも認められていたが、改正後は当該出力した書面等の保存措置が廃止され、当該出力した書面等は保存書類(国税関係書類以外の書類)として取り扱わないこととされた、と明記している[1]。さらに、令和4年度の税制改正で経過措置として整備された宥恕措置も、適用期限である令和5年12月31日の到来をもって廃止された[1]。
いま残っているのは、令和5年度改正で設けられた猶予措置である。ただしこれは「保存しなくてよい」制度ではない。税務署長が、要件に従って保存することができなかったことについて相当の理由があると認め、かつ保存義務者が税務調査等の際に電子データとその出力書面の提示又は提出をすることができる場合に、保存時に満たすべき要件が不要になる、というものだ[1]。一問一答は、その電子データの保存に代えて出力書面のみを保存する対応は認められないと注意している[1]。事前の申請は要らない一方で、システム等や社内のワークフローの整備が整っており要件に従って保存できるにもかかわらず、資金繰りや人手不足等の理由がなく保存していない場合には、猶予措置の適用は受けられない[1]。整備が終われば、猶予も終わる。
ここで限定を足しておく。対象になるのは、あくまでデータでやりとりしたものである。国税庁のパンフレットは、紙なら保存が要る書類に相当するデータが対象になるとしたうえで、保存の義務がかかるのはデータで授受したものに限られ、紙で受け取ったものをわざわざ電子化する必要はない、と明記している[2]。紙で届いた注文書を紙のまま綴じ続けること自体は、いまも認められている。問題は、完全に紙だけで回している調達部門がもう存在しないことのほうにある。見積の PDF が一通メールで届いた時点で、その取引は電子取引に入る。
保存の具体的な要件——改ざん防止の措置、検索、見読可能性の3つと、専用システムを入れずに満たす方法——は電子帳簿保存法の対応|システムなしで満たす方法と、5,000万円以下の緩和で整理している。なお、紙で受け取った原本をスキャンして捨てられるかどうかは別の制度(スキャナ保存)で、こちらは選べる制度である。紙の注文書をスキャンして捨てられるかを参照してほしい。①と②を混ぜないためには、この線を先に引いておくとよい。
発注の出し方と、出したあとに何をどう残すかを一冊で通して押さえたい場合は、NEWJI総研の研修テキスト「発注の出し方と電子化」にまとめてある。
FAXを使っていても、すでに電子取引をしていることがある
「うちはまだ FAX だから電子帳簿保存法は関係ない」という説明を、現場ではよく聞く。これは半分しか合っていない。
一問一答は、電子取引に該当する具体例として、いわゆる EDI 取引、インターネット等による取引、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む)、ペーパーレス化された FAX 機能を持つ複合機を利用した取引、インターネット上にサイトを設け当該サイトを通じて取引情報を授受する取引等を挙げている[1]。複合機が受信内容をファイルとして扱う使い方をしていれば、名前が FAX でも中身は電子取引である。「FAX か、システムか」で線を引いていると、この一群がまるごと視界から外れる。
紙とデータの両方を受け取っている場合の扱いも、思われているほど単純ではない。一問一答は、電子データと書面の内容が同一であり、書面を正本として取り扱うことを自社内等で取り決めている場合には、当該書面の保存のみで足りるとしている[1]。ただし同じ項目の中で、書面で受領した取引情報を補完するような取引情報が電子データに含まれているなど、その内容が同一でない場合には、書面及び電子データの両方を保存する必要があるとしている[1]。請求書は紙で届くが、送り状のメール本文に「今回の分から単価が変わります」と書いてある——という受け取り方をしていれば、後段に当たる。
つまり「紙を正本と決めておけば済む」という運用は、条件つきでしか成立しない。そして条件が外れる場面のほうが、実際の調達購買では多い。ここは意識の話ではなく、社内で交わした取り決めが実態に合っているかどうかの話である。
なお、取適法(中小受託取引適正化法)の側でも FAX は2つに分かれるが、あちらは発注内容を明示する手段としての区分で、判定の基準も根拠となる規則も違う。混ぜると社内の説明が破綻するので、発注はメールで出してよい——電子化の条件が変わったと分けて読んでほしい。
ハンコを求めているのは、法令ではない
①と③がいちばん混ざりやすいのが、承認印と押印である。「ハンコがないと通らない」が社内の話なのか法令の話なのかで、打ち手はまったく変わる。
取適法第4条第1項は、委託事業者は中小受託事業者に対し製造委託等をした場合は直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、給付の内容、代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を、書面又は電磁的方法により明示しなければならないと定めている[3]。条文が求めているのは「明示」であって、相手の押印でも署名でもない。実際、取適法の条文にも、明示の方法を定める明示規則にも、押印・記名・署名・捺印を求める規定は置かれていない[3][4]。明示規則が定める電磁的方法は、受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信を送信する方法と、電磁的記録を記録した記録媒体を交付する方法の2つである[4]。
むしろ、押印をもらう運用のほうに別の負担がついてくる。公正取引委員会・中小企業庁のテキストは、4条明示の書式例について、単に委託事業者から中小受託事業者に対して一方的に取引条件等を通知するとともにその作業を依頼するために作成される文書(いわゆる発注書)であって、契約の成立を証明する文書には該当しないことから課税文書には該当しない、としている[5]。そのうえで注記として、中小受託事業者が署名又は押印の上返送する場合や「承諾した」旨の記載をした上返送する場合には、依頼文書(発注書)に対して承諾文書(請書)を作成・交付したこととなり、この承諾文書(請書)が印紙税法上の課税文書となって中小受託事業者が印紙税の納税義務者となる、と書いている[5]。慣行として押印つきの返送を求めていた分だけ、相手側に納税義務が生じていた可能性がある、ということである。
ここで言えるのは、取適法が4条明示の要件として押印を求めていない、というところまでである。社内の決裁印をどう扱うかは会社が自分で決める範囲の話で、法令が禁じているわけでもない。ただ、決めているのが自社であるなら、それは③(相手との合意が要る領域)ではなく①に属する。取引先の顔色をうかがう必要がない場所だと分かるだけでも、着手の順番は変わる。印紙税そのものの判定は文書の性質で決まるので、注文書に収入印紙は必要かにまとめてある。
本当の課題は“業務プロセス”と“人”の変革
業務フローの“暗黙知”を可視化できない
調達購買の業務には、公式マニュアルだけでなく、実は膨大な“暗黙知”=経験則にもとづく手順や判断基準が存在します。
たとえば、「このサプライヤーは早めに督促しないと納品が遅れやすい」「コストダウン交渉は●月が効きやすい」など、数値では表現しづらいノウハウです。
これらが明文化・標準化されていないと、どんなITツールも“骨抜き”になってしまいます。
DX化は単なるデジタル化ではなく、こうした“現場の知恵”を可視化し、合理的な業務プロセスへ再設計する覚悟が必要になります。
“心理的安全性”をどう確保するか
新たなシステムや業務プロセスの導入には、「自分のやり方が否定される」「評価されなくなるかもしれない」という現場の不安を伴います。
特に調達購買現場は、中堅層・ベテランの経験値に大きく依存しているだけに、この抵抗は思った以上に強いものです。
“失敗できる余地” “皆で学び合う文化”といった心理的安全性がなければ人とプロセスの変革は前に進みません。
よくある“うまくいかないDX施策”の実例
トップダウン型「システム入れ替え」失敗ケース
経営側主導で、「今度からクラウド型の発注・請求プラットフォームに切り替えます」と告知したものの、現場から「またやるのか…」「どうせ前と同じだ」と冷ややかな空気。
サプライヤー各社への説明会も不十分で、“うちはしばらくFAXでお願いしたい”と妥協案が乱立。
気づけば従来の紙・エクセルとの二重入力が発生し、「かえって手間が増えたぞ」と現場から総スカン状態、結局従来方式に戻したという事例を多く見てきました。
IT部門主導「パッケージシステム」形骸化の現場
IT部門が主導してパッケージERPを導入。
しかし、調達現場の“クセ”を吸い上げきれず、「この操作では普段の納期調整がやりにくい」「発注先ごとのイレギュラー処理がパソコンでできない」といった不満噴出。
現場は結局「裏でエクセル管理」を続け、システムの利用率が上がらず、投資効果も不明瞭に終わる――。
このような現場の声を無視したDX失敗例が、銀行や公的機関のみならず、ものづくり現場でも後を絶ちません。
行政が実際に指摘しているのは、意識ではなく手続である
ここまで挙げてきた失敗例は、どれも「使われなかった」という話である。では、外から見たときに調達購買の何が問題として指摘されているのか。公正取引委員会が公表した令和7年度の取適法の運用状況を見ると、指摘が集中している場所がわかる。
同年度の措置件数(勧告又は指導を行った事件の件数)は8,300件、違反行為の類型別件数の合計は14,115件である[6]。1つの事件において複数の違反行為類型について勧告又は指導を行っている場合があるため、類型別件数の合計と措置件数は一致しない[6]。
| 違反行為の類型(令和7年度) | 件数 | 比率(分母) |
|---|---|---|
| 手続規定違反 小計(第4条・第7条・第12条) | 6,887 | 48.8%(類型別件数の合計14,115件) |
| うち 発注内容等の明示義務違反 | 6,242 | 90.6%(手続規定違反6,887件) |
| うち 書類等の作成・保存義務違反 | 644 | 9.4%(同上) |
| うち 虚偽報告 | 1 | 0.0%(同上) |
| 実体規定違反 小計(第5条) | 7,228 | 51.2%(類型別件数の合計14,115件) |
| うち 支払遅延 | 3,787 | 52.4%(実体規定違反7,228件) |
| うち 製造委託等代金の減額 | 1,323 | 18.3%(同上) |
| うち 買いたたき | 1,006 | 13.9%(同上) |
数字はすべて同じ表から取っている[6]。目を引くのは、発注内容等の明示義務違反の6,242件が、実体規定違反のうち最も多い支払遅延の3,787件を上回っていることである。買いたたきや減額のように交渉の巧拙が問われる類型よりも、「決められた項目を、決められた形で相手に渡したか」という手続のほうが、件数としてははるかに多く指摘されている。これらの指摘が、申告や立入検査からどう始まって勧告や公表に至るのかは取適法に違反するとどうなるかにまとめてある。
これは推進の順番に直接効く。書面にするか電子にするかを選ぶ前に、明示すべき項目がそもそも揃っているかを見るほうが先である。逆に言えば、明示する項目と記録の残し方を先に固めてしまえば、選ぶべきシステムの要件はそこから自動的に決まる。要件を決めずにシステムを見に行くから、機能一覧の比較で議論が止まる。記録の側に何を書いてどう残すかは取適法が求める記録——何を書いて、2 年間どう残すかで扱っている。
ロールモデル事例と“突破口”の見つけ方
現場と二人三脚のDX推進
とある大手製造業では、若手・現場リーダーを巻き込んだワークショップを重ね、調達業務の“つまずきポイント”を徹底掘り下げしました。
「本当に困っている現象」「サプライヤーと合意できる運用」をベースに、IT部門がプロトタイプを何度も修正。
こうすることで、新業務フローの定着率が格段に上がったのです。
現場主導のモチベーション醸成と、現状の課題解決が両立した“強いDX”の好例です。
小さな成功体験をコツコツ積み重ねる
DX化=一気に全部システム化、ではありません。
たとえば「見積依頼だけ電子化」「受領確認だけメール連絡」など、現場の負担も少なく成果が見えやすい部分から着手し、成功体験を共有するのが有効です。
「このやり方なら効率が上がった」「サプライヤーさんも喜んでいる」――こうした“小さな前進”を現場と一緒に積み重ねることで、大きな壁も乗り越えることができます。
現場発想の「これからの調達DX」戦略
人とデジタルが両輪で進む柔軟な設計
今後の調達部門に求められるのは、“全自動化”ではなく、“人とデジタルのベストミックス”です。
たとえば、重要な調整や異常発生時は経験豊富なバイヤーが介在し、日常的なプロセスはデジタルツールに任せる、といった住み分けが現実解です。
また、現場で“誰かのノウハウに依存しない仕組み”を作ることで、イレギュラーに強い組織となります。
サプライヤーとの「協創」で業界標準を作る
調達DXは、発注側だけでなくサプライヤー側の協力が不可欠です。
「御社ではこういう仕組みが便利ですか?」「こんな運用なら導入しやすいですか?」と対話しながら、お互いが納得できるUXを目指しましょう。
この対話を業界横断で進めば、昭和的な商習慣や「紙&FAX文化」からも脱却しやすくなり、ひいては新しい業界標準の創造にもつながります。
よくある質問
猶予措置があるうちは、紙のままで大丈夫ですか
猶予措置は、保存時に満たすべき要件を不要にするものであって、電子データを保存する義務そのものを免除するものではない。一問一答は、電子データの保存に代えて出力書面のみを保存する対応は認められないとしている[1]。加えて、システム等や社内のワークフローの整備が間に合わないといった事情が解消された後に行う電子取引には、猶予措置は適用されない[1]。つまり「整備が終わるまでの間」の措置であって、整備をしない理由にはならない。
取引先が電子に対応できません。こちらだけ先に進めてよいですか
自社の中で完結する部分——受け取った電子データを保存すること、社内の申請と承認、記録の残し方——は、相手の対応を待たずに進められる。上の4分類でいえば①②④がそれに当たる。相手にシステムを使わせる部分だけが③で、そこには求め方の線引きがある。断られたときに何ができるかは取引先に「システムは使えない」と言われたらで整理している。
紙とデータを両方もらっているので、紙を正本にすれば済みますか
内容が同一で、書面を正本として取り扱うことを自社内等で取り決めている場合には、その書面の保存のみで足りるとされている[1]。ただし内容が同一でない場合——たとえばメール本文に書面を補完する条件が書かれている場合——は、書面と電子データの両方を保存する必要がある[1]。取り決めを作るなら、実際にどんな形でデータが届いているかを先に数えたほうがよい。
どこから手をつければよいですか
本記事は「なぜ止まるのか」を分けるところまでを扱っている。着手の順番と、効果をどう測るかは調達管理における購買部門のDX推進成功の秘訣で扱っている。
まとめ:本当の“変革”は現場の痛みとともに進む
調達課のDXが進まない本当の理由は、“アナログ文化への固執”や“ITリテラシー不足”だけではありません。言い換えると、進まない理由を人と文化だけで説明すると、打ち手は研修と掛け声に戻ってしまうということです。制度がすでに決めてしまっている範囲を先に切り出し、そのうえで残った部分を人の問題として扱う——この順序が要ります。
そのうえで残るのが、現場の知恵と習慣、業務の暗黙知、そして人の心理的安全性や時代を超えた“つながり”へのこだわりです。
電子で受け取ったデータを電子のまま残すことも、発注の内容を明示して記録を 2 年残すことも、現場の合意を待つ話ではありません。そこを先に済ませたうえで、「現場と共創する変革」「人・業務・デジタルを繋ぐ最適解」を模索し続ける。順番を逆にすると、決まっているはずのことまで議論の対象になります。
小さな成功を重ね、業界の新たなDX地平を皆で切り拓いていきましょう。
止まっている場所を4つに分けておくと、次の一手が決まりやすくなる。①と④は自社だけで決められる。②は決めるまでもなく、選べる期限がすでに過ぎている。相手との合意が要るのは③だけである。推進計画が長く止まるのは、たいてい③の説得に時間を使いながら、②と④を「そのうち」にしているからだ。では、どの順番で手をつけるか——着手の順序は調達管理における購買部門のDX推進成功の秘訣で扱っている。
出典・参考資料
- 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(国税庁/令和 7 年 6 月)
- 電子帳簿保存法 電子取引データの保存方法をご確認ください【令和 6 年 1 月以降用】(国税庁/令和 5 年 7 月)
- 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
- 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
- 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
- 令和 7 年度における取適法の運用状況及び中小事業者等の取引適正化に向けた取組(公正取引委員会/令和 8 年 6 月 10 日)
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