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投稿日:2026年10月1日

鋳物の発注で決める材質と内部欠陥の受入基準

この記事のポイント(結論先出し)

鋳物の発注で揉めるのは、材質の値と内部の巣(鋳巣)である。材質は JIS の規格番号と材料記号だけでなく、機械的性質をどこから採った試験片で確かめるかまで書く。内部欠陥は「巣なきこと」では受入基準にならない。検査方法の規格、等級分類の規格、合格とする等級、対象の部位、検査の数をそろえて書く。JIS の試験方法は欠陥を等級に分類する手順を定めているが、どの等級を合格とするかは発注側が使用目的から決めるものだ、という点が要である。切断して見る内部欠陥の確認は抜取りによる確率的な保証で、1 個ずつを保証するものではない。機械加工の後で巣が出たときの扱いも、発注の時点で決めておく。

鋳物で保証すべき項目を分けて考える

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鋳物は、溶かした金属を型に流して固める。形の自由度が高い代わりに、材質のばらつきと、内部にできる空洞や異物という、外から見えない品質の問題を抱えやすい。鋳造工学会の講演で室蘭工業大学の清水らは、鋳物で保証すべき項目として材質、欠陥の有無、外観、寸法、化学成分を挙げ、それぞれを種々の手法で検査して要求に合うかを判断する必要があるとしている[3]。発注書でもこの項目ごとに分けて書くと、抜けが見つけやすい。

保証すべき項目 [3] 発注書・仕様書に書くこと(提案) 受入で確かめるもの
材質 規格番号・材料記号・規格の年版、試験片の採り方 機械的性質の試験成績、組織(球状化率など)
化学成分 規格どおりか、追加の上限があるか 溶解ロットごとの分析値
欠陥の有無 検査方法・等級分類・合格等級・部位・数 非破壊試験の記録、切断検査の記録
外観 鋳肌の状態、ばり・湯口跡の仕上げ 外観基準・限度見本との比較
寸法 鋳放し寸法の公差、削り代 寸法の実測

鋳造法そのものの選び方(鋳造か鍛造か)は鋳造と鍛造の選び方の記事、ダイカストの欠陥が生まれる仕組みはダイカストの不良発生メカニズムの記事で扱っている。この記事は、発注書に何を書き、受入で何を確かめるかに絞る。

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材質の指定——規格と記号だけでは足りない

規格番号と年版を書く

鉄系の鋳物では、ねずみ鋳鉄品(FC)は JIS G 5501、球状黒鉛鋳鉄品(FCD)は JIS G 5502、炭素鋼鋳鋼品は JIS G 5101 が材料の規格である。日本産業標準調査会の JIS の一覧で、G 55 で始まる鋳鉄品の規格はねずみ鋳鉄品からダクタイル鋳鉄管の塗装まで 10 件が並ぶ[6]。同じ一覧の登録情報では、JIS G 5502 は 2024 年 3 月 21 日に改正の登録があり、閲覧資料には本体のほかに追補が並ぶ(2024 年に追補が出ている)。JIS G 5501 の最新改正は 1995 年 7 月 1 日である。改正があれば、同じ材料記号でも要求の中身が変わりうる。図面の材質欄には材料記号だけでなく、規格番号と年版(追補が出ていればそれも)まで書いておくと、どの版の要求で作るのかが仕入先と食い違わない(材料記号の細かな書き方は規格本文で確かめること)。

海外の仕入先で JIS 以外の規格の材料に置き換えたいと言われた場合は、同等とみなしてよいかを発注側が判断して記録する必要がある。その手順は同等材の指定と承認の記事にまとめた。

機械的性質を「どこから採った試験片」で確かめるかを書く

鋳物の機械的性質は、同じ溶湯から鋳込んでも、肉厚や冷え方によって部位ごとに変わる。清水らは、鋳造品の場合は ISO に準拠して定められた JIS によって材料試験法および供試材、試験片の採取方法が規定されていると述べている[3]。鋳鉄品を作る企業の講演でも、機械的性質は材質の仕様として重要で、実際の製品から、または製品とは別に採取して試験を行っていると報告されている[4]。

試験片を製品とは別に鋳込んだ物から採ったのか、製品に付けて鋳込んだ物から採ったのか、製品そのものから切り出したのかで、同じ材料記号でも値の意味が違う。規格の要求が満たされているかを見るなら規格が定める採り方でよいが、厚肉の部位の強度が設計上大事なら、その部位から採った値を別に求めることになる。どちらにするかは発注側の判断なので、仕様書に書いておく(当方の提案)。

この企業の講演は、鋳鉄品の製品仕様に織り込まれるのは、実態を反映した機械的性質や顕微鏡組織に関する境界値であるべきだとも述べている[4]。規格の最低値だけでなく、部品の使われ方から見て本当に必要な値を考えて書く、ということである。

球状黒鉛鋳鉄の組織

球状黒鉛鋳鉄は、黒鉛の形が球に近いことで強さと伸びが出る材料である。清水らは、鋳鉄は基地組織に黒鉛が分散した複合材料で、黒鉛組織によって機械的・物理的性質が大きく影響を受けるとし、球状黒鉛鋳鉄について JIS が黒鉛球状化率の測定方法を定め、その値を 80% 以上と規定していると説明している[3]。この講演は 2012 年のもので、JIS G 5502 にはその後 2024 年に追補が出ているため、球状化率の要求と測定方法は現行版の本文で確かめてほしい。発注側としては、球状化率の値をどの部位で、どの方法で確かめたものかを成績書に書いてもらう。ミルシートの区分と同じく、証明の値がどの物から採ったものかを確かめる考え方はEN 10204 の区分の記事で整理している。

内部欠陥——「巣なきこと」は受入基準にならない

欠陥の種類を名前で分ける

鋳物の内部と表面にできる欠陥には種類がある。鋳造品の非破壊検査を解説した松山は、鋳物の欠陥として、気孔(ピンホール・ブローホール)、引け巣(凝固の収縮で生じる空洞)、砂かみ、介在物、ケレン及び鋳ぐるみ、割れ、鋳肌不良(湯じわ、湯境い、鋳ばり、あばた)を挙げている[2]。「巣」と一口に言っても、ガスが原因の気孔と、凝固の収縮が原因の引け巣では、できやすい場所も、強度への影響も、対策も違う。受入基準は欠陥の種類ごとに書くのが原則である。

検査方法を選ぶ

松山は、表面の検査には目視、磁粉探傷検査(MT)、浸透探傷検査(PT)を使い、MT は表面だけでなく表面付近の欠陥も検出できるので優先し、ステンレス鋼やアルミニウムのような非磁性材料は磁化しないので PT による、と説明している[1]。内部の検査には放射線透過検査(RT)と超音波探傷検査(UT)があるが、一般に鋳造品は超音波の減衰が大きく UT の適用が難しいので、RT を主体とし、RT が使えない場合の代わりに UT を使うとしている[1]。そして、検査方法の選び方や組合せは、目的、材質、大きさ、形状、客先の要求、法規制などから決まると結んでいる[1]。

この解説は 1991 年のもので、その後、超音波の技術は進んでいる。2009 年の講演では、球状黒鉛鋳鉄の鋳物で超音波探傷による内部欠陥の検出を試み、欠陥と思われる箇所を切断してカラーチェック(浸透探傷)で確かめた結果を示したうえで、超音波探傷では微細な引け巣などが検出される場合があるが、実際に有害な内部欠陥として認識するには数多くの照合例を参考にしなければならないと述べている[4]。UT を受入の方法に使うなら、どの大きさの反射を不合格とするかを、切断した実物との照合で決めておく必要がある。

等級分類と合否は別のもの

発注書でいちばん抜けやすいのがここである。松山は、鋳造品の非破壊検査の規格には、試験方法に関するもの、等級分類に関するもの、構造物に対する合否に関するもの、それらを組み合わせたものがあると整理している[2]。鋳鋼品の放射線透過試験について当時の JIS G 0581 は、欠陥をブローホール、砂かみ及び介在物、線状の引け巣、樹枝状の引け巣、割れの 5 種類に分け、それぞれを試験視野内の欠陥の大きさや点数から 1 級〜6 級に分類し、割れはすべて 6 級とする手順を定めていた[2]。そのうえで、合否の判定はそれぞれの使用目的に従って行うことになるとし、例として発電用原子力設備の技術基準が、ブローホールから樹枝状の引け巣までの 4 種類について JIS の 1 級および 2 級を合格とし、割れ、ケレン、鋳ぐるみ、不完全な溶込みがないことを求めていると紹介している[2]。

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つまり JIS の試験方法に従って検査しても、それだけでは何級までを合格とするかは決まらない。発注書に「JIS G 0581 による」とだけ書けば、等級を分類した成績書は届くが、合否は決まっていない。日本産業標準調査会の一覧では、鋳鋼品の放射線透過について、JIS G 0581(鋳鋼品の放射線透過試験方法)のほかに JIS G 0585(鋳鋼品の放射線透過検査)が登録されており、鋳鋼品鋳肌の外観試験方法及び等級分類の規格(JIS G 0588)もある。どの規格を使い、何を合格とするかは、現行版の本文と顧客の要求で確かめて決める。

内部欠陥の受入基準に書く 5 つ(提案) 書き方の例 抜けると起きること
1. 検査方法と規格 放射線透過試験、規格番号と年版 仕入先の慣れた方法で、比べられない記録が届く
2. 等級分類の方法 欠陥の種類ごとに規格の等級で分類 「巣あり・なし」の 2 択になり判定が割れる
3. 合格とする等級 欠陥の種類ごとに「○級以内」、割れは不可 分類はされても合否が決まらない
4. 対象の部位 図で示した重要部位(加工面・耐圧部など) 全体に厳しい基準がかかり単価が跳ね上がる
5. 検査の数 初回ロットは全数、以後は 1 ロットにつき何個 誰も検査しない、または全数の費用が後から請求される

切断して見る検査の限界

非破壊試験を使わない場合、内部欠陥は製品を切断して断面を見て確かめることが多い。前出の 2009 年の講演は、内部欠陥については製品を切断してカラーチェックし目視で健全性を確認する方法が一般的だが、これは抜き取り検査による確率に基づく保証で、鋳物 1 個ずつを全数保証するものではないと述べている[4]。切断検査を受入の条件にするなら、何個に 1 個切るのか、どの断面を見るのか、切った数のうち 1 個でも欠陥があればロットをどう扱うのかまで決めておく。抜取りの考え方は抜取検査の記事で扱っている。

鋳物の品質は工程で決まる——量産の条件を押さえる

鋳造工学会の連載で佐藤は、鋳造では型・治工具、塗型、中子造型、鋳物砂、造型、溶解材料・溶湯、仕上げ・出荷検査といった工程ごとに品質システムを作り、管理工程図(QC 工程表)や標準作業書を整えて仕事をすることが「品質を工程で造りこむ」基本だとしている[5]。同時に、砂型造型では砂の性状や温度、金型、造型機、操作する人など変動要因が非常に多く、溶湯成分が規格から外れても不良になるとは限らない一方、すべての条件が管理規格内でも不良品になることがよくある、とも書いている[5]。

発注側にとっての意味は、出来上がった鋳物の検査だけでは品質をつかみきれないということである。量産を始める前に、方案(湯口や押湯の配置)、型、溶解の条件、検査の計画を確認し、それを変えるときは知らせてもらう約束をしておく。量産承認で何を出させるかは量産承認の記事にまとめた。鋳物に溶接で補修を加える場合や溶接構造と比べる場合は、溶接の指定の記事の項目も合わせて確かめる。

加工後に出てきた巣を、誰が負担するか

鋳物の取引で最も多い揉め事は、鋳物を受け取って機械加工したら加工面に巣が出た、というものである。鋳放しの受入検査では見えず、加工して初めて分かる。この不良品の代金、加工の費用、選別の費用を誰が持つのかは、発注の時点で決めていなければ揉める。

取適法(中小受託取引適正化法、2026 年 1 月施行)の適用を受ける取引では、公正取引委員会のテキストが、委託内容が明示されていなかったり検査基準が明確でなかったりして給付の内容が委託内容と異なることが明らかでない場合は受領を拒めないとし、発注後に検査基準を恣意的に厳しくして従来の基準で合格とされたものを不合格とすることも認めていない[7]。加工面に許す欠陥の大きさが決まっていなければ、「委託内容と異なる」ことを示せない。受け取った後で直ちに発見できない不適合についての返品の扱いは受領拒否・返品・やり直しの記事で、流出した不良の選別費の請求は選別費の記事で整理している。

実務では次を仕様書か取引基本契約に書いておく(当方の提案)。加工面ごとに許す巣の大きさと数、加工後に見つかった場合に連絡する期限、不良と判定したときの代品の扱い、加工費や選別費の負担の考え方、そして同じ型や同じ溶解ロットの他の品をどう扱うか。

よくある質問

Q. 図面に「巣・割れ等有害な欠陥なきこと」と書いてある。足りないか。
A. 足りない。何が有害かを決めるのは使用目的であり、それを知っているのは発注側である。重要な部位を図で示し、欠陥の種類ごとに許す範囲を書く。割れのように一切認めない欠陥は、そのことを明記する。

Q. 全数に放射線透過試験をかけるべきか。
A. 部品の重要度と費用で決める。耐圧部や破損すると安全に関わる部位は全数、それ以外は初回ロットと定期的な抜取り、という分け方が多い。全数を求めるなら、その費用を見積に含めてもらう。

Q. アルミの鋳物でも同じ考え方でよいか。
A. 考え方は同じである。材料の規格(アルミニウム合金鋳物なら JIS H 5202 など)と、使う試験方法の規格を、鉄系とは別に確かめる。非磁性なので表面の割れは浸透探傷で見ることになる[1]。

まとめ

鋳物の発注では、材質、化学成分、欠陥の有無、外観、寸法を分けて指定する。材質は規格番号と年版、材料記号に加えて、機械的性質をどこから採った試験片で確かめるかを書く。内部欠陥は、検査方法、等級分類、合格とする等級、対象の部位、検査の数の 5 つをそろえて書く。JIS の試験方法は欠陥を等級に分類する手順であり、何級までを合格とするかは使用目的から発注側が決める。切断による確認は抜取りの保証にとどまり、加工後に出た巣の扱いも先に決めておく。

出典・参考資料

  1. 鋳造品の非破壊検査及び評価技術(その 1)―各種非破壊検査法―(松山秀/鋳物 63 巻 8 号/1991 年 8 月)
  2. 鋳造品の非破壊検査及び評価技術(その 2)―試験結果の評価方法―(松山秀/鋳物 63 巻 9 号/1991 年 9 月)
  3. 鋳鉄の品質保証と管理(清水一道・鴨田秀一・鹿毛秀彦/鋳造工学 全国講演大会講演概要集 第 161 回/2012 年)
  4. 鋳鉄品の破壊試験から非破壊試験へ(山田聡・中山英明/鋳造工学 全国講演大会講演概要集 第 155 回/2009 年)
  5. 品質管理(連載「鋳造工学概論」)(佐藤万企夫/鋳造工学 87 巻 1 号/2015 年 1 月)
  6. JIS リスト(規格番号 G55 で始まる JIS)(日本産業標準調査会)
  7. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)

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