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投稿日:2026年10月16日

A7075(超々ジュラルミン)の発注での指定——T6とT73の選び方、応力腐食割れ・溶接・アルマイト

この記事のポイント(結論先出し)

A7075(超々ジュラルミン)は、板なら JIS H 4000、棒なら JIS H 4040 の材料で、質別まで書いて初めて強度の規格値が決まる。最大の強さを出す T6・T651 に対し、T73 は耐応力腐食割れ性を最大にするための過時効処理で[3]、解説は強度が T6 より 10〜15% 下がるとしている[4]。JIS の応力腐食割れ性の規定は、注文者が要求した場合だけ、厚さ 20 mm 以上の T73 系などに適用される[1][2]。だから厚い材料から削り出す部品で耐応力腐食割れ性が要るなら、質別と一緒に注文時に要求する。溶接は割れやすいので特別な場合以外は使われない、と解説されている[5]。試験成績書は求めたときに出るものなので[7]、注文時に求めておけば質別と機械的性質を照らし合わせられる。

A7075 は「合金番号+形状+質別」で注文する

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「材質 A7075」「超々ジュラルミン」とだけ書いた図面は、まだ材料が一つに決まっていない。JIS H 4000(アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条)は、合金番号と形状を表す記号の後に質別を示す記号を付けて製品記号とする、と定めている。7075 の板の記号は A7075P で、表面に 7072 を貼り合わせて耐食性を改善した合せ板は A7075PC として別に扱われる[1]。棒は JIS H 4040(アルミニウム及びアルミニウム合金の棒及び線)で、押出棒は A7075BE、引抜棒は A7075BD、寸法の許容差と形状を厳しくした特殊級はそれぞれ A7075BES・A7075BDS になる[2]。

JIS H 4000 は 2022 年 4 月 20 日、JIS H 4040 は 2023 年 12 月 20 日に改正されている[1][2]。JIS H 4000 の表 1 は 7075 を「アルミニウム合金中高い強度をもつ合金の一つ」とし、用途例に航空機用材とスキーを挙げている(参考)[1]。主な合金元素は亜鉛 5.1〜6.1%、マグネシウム 2.1〜2.9%、銅 1.2〜2.0%、クロム 0.18〜0.28% である[1]。

質別記号の体系そのもの(F・O・H・W・T の意味、T6 と T651 の違い)はアルミは合金番号と質別で指定するで扱った。この記事では、7075 で実際に選ぶことになる T6 系と T7 系の違い、そして 7075 に特有の応力腐食割れ・溶接・表面処理の扱いに絞る。

「超々ジュラルミン」という呼び名

超々ジュラルミンは、日本で開発された高力アルミニウム合金 ESD の名称である。軽金属学会誌の解説(1989 年)によると、ESD は 1938 年に零式艦上戦闘機の主桁などへの採用が決まり、7075 合金の開発(1943 年)よりかなり前に開発されていた。同じ解説は、ジュラルミン(2017)・超ジュラルミン(2024)に続けて「超々ジュラルミン(ESD, 7075)」と並べており、その後に開発された 7075 は ESD の No.2 合金より亜鉛を減らしてマグネシウムを増やし、マンガンの添加を抑えた成分だ、とも書いている[4]。呼び名と合金番号が一対一に決まっているわけではないので、注文の場で「超々ジュラルミン」と言われたら合金番号を確かめ、注文書には呼び名ではなく製品記号を書く。

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T6・T651 と T73・T7351 は、何を優先するかで選ぶ

JIS H 0001(質別記号)は、T6 を溶体化処理後に人工時効硬化処理したもの、T7 を最大強さを得る人工時効硬化処理条件を超えて過時効処理したもの、と定めている。そのうち T73 は「溶体化処理後耐応力腐食割れ性を最大にするため過時効処理したもの」、T76 は「溶体化処理後耐はく離腐食性を良くするため過時効処理したもの」である。T7351 は、溶体化処理後に引張加工で残留応力を除き、T73 の条件で過時効処理したものを表す[3]。

なぜ 7075 にだけこの選択が付いて回るのか。先の解説は、7075-T6 などの従来の 7000 系合金で最大の問題は ST 方向(厚さ方向)の耐応力腐食割れ性が低いことで、1960 年代にこれらの合金で応力腐食割れの事故が頻発したと述べている。その対策として T6 より過時効させた T73 処理が開発され、T73 処理は 7075 の ST 方向の応力腐食割れの防止に非常に効果的である一方、T6 材に比べて強度が 10〜15% 低下する、とも書いている[4]。同じ解説は、厚板の厚さ方向や鍛造材のメタルフローに垂直な方向の耐応力腐食割れ性は著しく劣ること、大型鍛造品が残留応力とメタルフローの関係で応力腐食割れを起こすことが多いことも挙げている[4]。

つまり選び方の軸は、強さを最大にするか、厚さ方向の割れにくさを取るかである。どちらにするかは部品の荷重のかかり方と使用環境で決まるので、図面の責任者(設計)が決める。購買の側でできるのは、図面に「A7075-T6」としか書かれていない厚肉の削り出し部品を受けたときに、T73 系を検討したかどうかを設計に確かめることである。これは規格の要求ではなく、発注側の確認の提案である。

規格値で比べると、どれだけ違うか

次の表は、JIS H 4000(板)と JIS H 4040(押出棒)に定められた 7075 の機械的性質(下限値)のうち、厚さまたは径が 25 mm を超え 50 mm 以下の区分を抜き出したものである[1][2]。ほかの厚さの区分と伸びの値は、それぞれの規格の表 3 で確かめる。

質別 JIS H 0001 の意味 板(H 4000)引張強さ/耐力 N/mm² 押出棒(H 4040)引張強さ/耐力 N/mm² 応力腐食割れ性の規定
T6・T651(棒は T6・T6510・T6511) 溶体化処理後に人工時効硬化処理 530 以上/460 以上 560 以上/500 以上(6 mm 超 75 mm 以下) 対象外
T73・T7351(棒は T73・T73510・T73511) 耐応力腐食割れ性を最大にする過時効 475 以上/390 以上 475 以上/405 以上 注文者が要求した場合、厚さ 20 mm 以上に適用
T76・T7651 耐はく離腐食性を良くする過時効 表 3 は 12.5 mm 以下まで(6 mm 超 12.5 mm 以下で 490 以上/415 以上) 規定なし 板は注文者が要求した場合、厚さ 20 mm 以上に適用
O 焼なまし 275 以下/145 以下(上限) 275 以下/165 以下(上限) 対象外

表の 25 mm 超 50 mm 以下の板で比べると、T7351 の耐力の下限は T651 より 70 N/mm² 低い。強さだけを見て「T6 の在庫が無いから T73 で」と置き換えると、強度計算の前提が崩れる。逆の置き換え(T73 指定の部品に T6 を使う)は、規格値の上では強くなるが、T73 を選んだ理由である耐応力腐食割れ性を失う。どちらの方向の置き換えも、設計の承認を通して記録に残す。

応力腐食割れ性は、注文時に要求しないと保証の対象にならない

JIS H 4000 の 5.5 は、応力腐食割れ性は注文者の要求がある場合にだけ適用するとし、対象を厚さ 20 mm 以上の材料に限っている。7075 で対象になる質別は T73・T7351・T76・T7651 で、ASTM G47 による試験で応力腐食割れの形跡を示してはならない。ただし試験の頻度と試料の採取条件は受渡当事者間の協定による[1]。JIS H 4040 も同じ形で、対象を合金番号 7075 の T73・T73510・T73511 の厚さ 20 mm 以上の材料とし、試験は JIS H 8711 または ASTM G47 により、試験試料の採取条件は受渡当事者間の協定によるとしている[2]。

ここから、発注で押さえるべき点が三つ出てくる。第一に、T73 系の材料を買っても、注文時に要求していなければ応力腐食割れ性の規定は適用されない。第二に、厚さ 20 mm 未満の材料にはこの規定がそもそも無い。第三に、協定で決める項目が板と棒で違う。板(JIS H 4000)は試験の頻度と試料の採取条件が協定、棒(JIS H 4040)は試料の採取条件が協定なので、要求するならそれらも一緒に合意する。

ロットの受入れは導電率と機械的性質で行う

応力腐食割れの試験は時間がかかるので、JIS は各ロットを、試験の前に引張試験と導電率試験で受け入れる手順を定めている。JIS H 4000 の表 7 では、A7075P の T73・T7351 は導電率 40.0 IACS% 以上で機械的性質が表 3 を満たせば受け入れ、38.0 IACS% 以上 40.0 IACS% 未満なら、耐力が表 3 の下限値に 82 N/mm² を加えた値以下であることも求めている。T76・T7651 は導電率 38.0 IACS% 以上で、導電率が 36.0〜37.9 IACS% の範囲にある場合は熱処理が疑わしいと判断し、はく離腐食の試験をするか再熱処理して再判定する[1]。JIS H 4040 の T73 系の受入れ基準は、導電率 39.7 IACS% 以上、または 37.9 IACS% 以上 39.7 IACS% 未満で耐力が下限値に 85 N/mm² を加えた値以下、である[2]。

板と棒で数値が違うので、成績書を読むときはどちらの規格で受けているかを先に確かめる。T73 系で応力腐食割れ性を要求した材料なら、成績書に導電率の値が載っているかを見る。

はく離腐食性の規定も、要求したときだけ

JIS H 4000 の 5.6 は、はく離腐食性も注文者の要求がある場合にだけ適用するとし、7075 では T76・T7651 の材料を、厚さ 1/10 の表面で ASTM G34 によって試験し、規格に示す写真の程度より小さくなければならないと定めている[1]。T76 を選ぶ理由がはく離腐食への対策なら、ここも注文時に要求しないと保証の対象にならない。

熱処理を自分で行う場合(O 材から T62 にする)

成形しやすい O 材で買って、成形後に注文者側で溶体化処理と時効をする使い方もある。JIS H 4000 は、O 材は T42 または T62 の材料の基礎になるもので、注文者の要求がある場合は T62 の機械的性質を保証しなければならない、としている。T62 の機械的性質は、注文者が O 材を溶体化処理後に人工時効硬化処理した場合に適用するもので、注文者が溶体化処理の前に冷間加工や熱間加工をした場合は規格値より低くなることがある、とも書いている[1]。

成形品で強度を保証したいなら、O 材を買う段階で T62 の保証を要求するかどうかを決め、成形の後の熱処理を誰がどの条件で行うかを決めておく。T62 の規格値は、加工を挟んだ後の部品の強度までは約束していない。熱処理の指定の書き方は熱処理を図面でどう指定するかを参照してほしい。

7075 は溶接に向かない

溶接学会誌の概説(1984 年)は、7000 系は熱処理合金で、亜鉛・マグネシウムのほかに銅も含む A7075 などの高力合金は溶接割れ感受性が高いので、特別な場合以外は溶接には用いられない、と書いている。同じ概説は、A7N01 や A7003 は中強度だが比較的溶接性がよい、としている[5]。

図面に 7075 の溶接構造が描かれていたら、仕入先が引き受ける前に設計に戻す。溶接で組みたいのであれば溶接に適した合金に替えるか、ボルトやリベットによる接合に替えるかは設計の判断になる。溶接を含む部品で何を指定するかは溶接を含む部品の発注で指定することで扱った。

表面処理は、陽極酸化を前提に条件を書く

7075 の部品には、陽極酸化(アルマイト)をかけることがある。実務表面技術の解説(1988 年)は、硬質アルマイトの被処理材料として、展伸材では A1100(純アルミニウム系)、A5052(アルミニウム-マグネシウム系)、A6063(アルミニウム-マグネシウム-ケイ素系)、A7075(アルミニウム-亜鉛-マグネシウム系)が初期から主流だったと書いている[6]。7075 に陽極酸化をかけること自体は一般的である。

陽極酸化の規格は、通常の皮膜が JIS H 8601、硬質皮膜が JIS H 8603 で、どちらで頼むかによって指定する項目が変わる。加工業者に渡す情報(材質と質別、有効面、等級、封孔の有無など)は表面処理の種類と図面の記号にまとめた。陽極酸化の規格が、加工業者が注文者から得る情報としてアルミニウム材料の仕様(材質・質別など)を挙げていることも、同じ記事で触れている。7075 の部品を処理に出すときは、材質と質別を処理業者まで伝える。部品メーカーが処理を外注する場合は、その先まで伝わっているかを確かめる。

受け入れるときに確かめること

JIS H 4000 と JIS H 4040 は、要求事項に適合した製品に、規格番号と製品記号(記号と質別)、寸法、製造番号などを表示するよう定めている[1][2]。受入では、現品の表示の製品記号が注文と一致しているか(質別の文字まで)を見る。

試験成績書について、両規格の検査の一般事項は JIS H 0321(非鉄金属材料の検査通則)による。JIS H 0321 は、製造業者は注文者の要求があったときに、試験の成績、製造番号、製造年月、注文寸法、数量、現品納入状態などを記載した明細書を提出しなければならない、としている[7]。つまり成績書は求めたときに出るものなので、注文時に求めておく。成績書が届いたら、次の順で見る。

1. 製品記号と規格
A7075P か A7075BE か、質別は注文どおりか。T6 で注文して T651 が載っている、またはその逆になっていないか。

2. 機械的性質
その質別と厚さ(径)の区分の規格値に入っているか。板と棒で同じ質別でも規格値が違う。

3. 導電率
T73 系・T76 系で応力腐食割れ性やはく離腐食性を要求した場合、受入れ基準の導電率と耐力の上限を満たしているか。

4. 化学成分
7075 の成分範囲に入っているか。海外規格の材料で受ける場合は、登録の合金番号と同じかを確かめる。

成績書の種類(EN 10204 の 2.2・3.1 など)を指定する考え方はEN 10204 のミルシート区分を、海外の材料で受けるときの承認の手順は同等材の指定と承認を参照してほしい。

注文書の書き方の例

規格の書式ではなく、発注側の書き方の提案として例を挙げる。

「材質:A7075P-T7351(JIS H 4000)、厚さ 40 mm。JIS H 4000 の 5.5 による応力腐食割れ性を要求する(試験の頻度と試料の採取条件は別途協定)。試験成績書を添付し、質別・引張強さ・耐力・伸び・導電率を記載すること。質別の変更と他規格材への置き換えは事前承認を要する。」

押出棒なら規格番号を JIS H 4040、記号を A7075BE(特殊級なら A7075BES)に替え、応力腐食割れ性の要求は JIS H 4040 の 5.6 として書く。棒では協定するのは試料の採取条件だけなので、括弧書きも「試料の採取条件は別途協定」にする。押出形材の寸法の許容差はアルミ押出形材の寸法許容差(JIS H 4100)で扱った。

よくある質問

T7351 と T73 の違いは何ですか

T7351 は、溶体化処理後に引張加工で残留応力を除いてから T73 の条件で過時効処理したものである[3]。T6 と T651 の関係と同じで、削り込む部品での残留応力の考え方はアルミは合金番号と質別で指定するで扱った。

薄い板の T73 で、応力腐食割れ性の試験を頼めますか

JIS H 4000 と JIS H 4040 の応力腐食割れ性の規定は厚さ 20 mm 以上の材料が対象なので[1][2]、それより薄い材料には規格としての規定が無い。必要なら、試験方法と合否を当事者間で別に取り決めることになる。

7075 を溶接して強度を出すことはできますか

解説は、A7075 などの高力合金は溶接割れ感受性が高いので、特別な場合以外は溶接に用いられないとしている[5]。溶接構造が要るなら、溶接に向く合金への変更か、機械的な接合への変更を設計と相談する。

T73 は T6 よりどれくらい弱いのですか

解説は T6 材に比べて強度が 10〜15% 低下するとしている[4]。規格値で比べると、厚さ 25 mm 超 50 mm 以下の板の引張強さの下限は T651 が 530 N/mm²、T7351 が 475 N/mm² である[1]。強度計算に使うのは、使う厚さの区分の規格値である。

まとめ

A7075(超々ジュラルミン)は、板は JIS H 4000 の A7075P、棒は JIS H 4040 の A7075BE・A7075BD で、質別まで書いて初めて強度の規格値が決まる。T6・T651 は最大の強さ、T73・T7351 は耐応力腐食割れ性を最大にする過時効で、解説によれば強度は 10〜15% 下がる。応力腐食割れ性の規定は、注文者が要求した場合だけ、厚さ 20 mm 以上の T73 系などに適用されるので、厚肉の部品で必要なら質別と一緒に注文時に要求し、板なら試験の頻度と試料の採取条件、棒なら試料の採取条件も合意する。O 材から熱処理するなら T62 の保証を要求するかを決める。溶接は特別な場合以外は使われない合金なので、溶接構造の図面は設計に戻す。陽極酸化は一般的だが、材質と質別を処理業者に伝える。成績書は求めたときに出るので、注文時に求めておき、製品記号・機械的性質・導電率・成分の順に確かめる。

同じ束では、工具材料の選び方をハイス鋼 SKH51 の指定で、もう一つの軽量材料であるチタンの種類の選び方をチタンの種類(JIS H 4600)の選び方で扱う。

出典・参考資料

  1. JIS H 4000:2022 アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2022 年 4 月 20 日改正)
  2. JIS H 4040:2023 アルミニウム及びアルミニウム合金の棒及び線(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 12 月 20 日改正)
  3. JIS H 0001:1998 アルミニウム,マグネシウム及びそれらの合金-質別記号(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1998 年 11 月 20 日改正)
  4. 馬場義雄「超々ジュラルミン(ESD)とその後の航空機用アルミニウム合金」軽金属 39 巻 5 号(軽金属学会/1989 年 5 月)
  5. 内田彰「アルミニウム合金溶接技術・概説」溶接学会誌 53 巻 3 号(溶接学会/1984 年 4 月)
  6. 秋本政弘「硬質アルマイト」実務表面技術 35 巻 6 号(表面技術協会/1988 年 6 月)
  7. JIS H 0321:1973 非鉄金属材料の検査通則(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1973 年 3 月 1 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)

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