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ブラインドリベットの選び方と指定——JIS B 1087 の試験、締結厚さ・下穴・材質の組合せ

この記事のポイント(結論先出し)
ブラインドリベット(現場では「ポップリベット」とも呼ばれる)は、片側からマンドレルを引き抜いて胴部を変形させ、裏側に手が入らない板どうしを留める部品である。JIS にあるのは機械的試験の方法を定めた JIS B 1087(ISO 14589 と一致)で、製品そのものの寸法や強度の JIS ではない。なお JIS B 1215 はセミチューブラリベットの規格で、ブラインドリベットとは別物である。強さは「最小せん断荷重・最小引張荷重」で示されるが、これは硬い鋼の試験板で測った値で、実際の継手の強さは板の厚さ・強さ・下穴・縁からの距離で変わる。発注では種類・頭部・呼び径・締結できる厚さの範囲・胴部とマンドレルの材質・下穴径・装着工具を決め、異種金属の組み合わせでは卑な側の腐食を見込む。
目次
ブラインドリベットとはどういう部品か
ブラインドリベットは、中空の胴部に、先端が中空穴の径より大きいマンドレルと呼ぶ心棒を通した構造で、マンドレルを引き抜くことでリベットが軸方向と径方向に塑性変形して締結する。片側から複数の部材を締結できるので利便性が高く、工業部品や建築部材に広く使われている[3]。板金の筐体やカバー、裏側に工具が入らない箱物の組立で、ねじやナットの代わりに使われることが多い。
この部品の JIS は、機械的試験を定めた JIS B 1087(ブラインドリベット-機械的試験)である。2004 年 3 月 20 日に ISO 14589:2000 を翻訳して技術的内容を変えずに制定され、2023 年 10 月 20 日に確認されている。適用範囲は 10〜35 ℃の環境温度で実施するブラインドリベットの機械的試験の方法で、せん断試験、引張試験、マンドレル頭部の保持性能試験、装着前のマンドレルの耐プッシュアウト力試験、マンドレル破断荷重試験の五つを含み、呼び径が 6.4 mm 以下のリベットに適用する[1]。
品番の検索で「JIS B 1215」と出てくることがあるが、JIS B 1215 は鋼製・黄銅製・銅製・アルミニウム製のセミチューブラリベットの規格で、頭部の形状によって薄丸・トラス・平・さら・丸の 5 種類に分けている[2]。マンドレルを持つブラインドリベットとは構造も使い方も違うので、発注書の規格欄に JIS B 1215 と書くと、別の部品を指定したことになる。
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種類——マンドレルと胴部の形で分かれる
JIS B 1087 は、試験の条件を決めるためにブラインドリベットの種類を挙げていて、引抜きマンドレル、引張破断マンドレル(延長形を含む)、引張非破断マンドレル、心部を中実とするプラグ形引張破断マンドレル、心部を中実とする固着性強化形段付き引張破断マンドレル、押込みピンを用いるものがある[1]。マンドレル頭部の保持性能試験は、密閉形胴部・割り形胴部・溝付き形胴部のリベットと押込みピンを用いるリベットには適用しないと書かれていて、胴部の形にも密閉形・割り形・溝付き形といった区別がある[1]。頭部は突出し頭と皿頭に分かれ、試験に使う板の厚さもこの二つで変えている[1]。
種類の違いは、締結後に何が残るかの違いでもある。マンドレル頭部の保持性能試験は、装着したリベットの頭部側から破断したマンドレル先端に荷重をかけ、マンドレルがリベットの胴部に対して動き出すまでの最大荷重を記録する試験である[1]。つまり引張破断マンドレルの種類では、マンドレルの頭部がリベットの中に残る。抜け落ちたマンドレルが装置の中で異物になる、マンドレルの材質が腐食の組み合わせに加わる、といった点は、この構造から来る。
強さの数字は「試験板で測った最小荷重」
ブラインドリベットの強さは、最小せん断荷重と最小引張荷重で示される。JIS B 1087 は、その値の測り方を決めていて、規定された最小せん断荷重又は最小引張荷重に達する前にリベットが破断したら不合格、とする[1]。最小値そのものは JIS B 1087 には書かれていない。製品の規格や製造業者の仕様で決まる値で、ブラインドリベットの締結強度を実験で調べた研究も、リベットメーカーがブラインドリベット自体の引張強度やせん断強度を開示していると書いている[3]。
試験の条件は厳しく決められている。日常試験の試験用板は 420 HV30 以上の硬さの鋼製、判定試験に使う試験用インサートは 700 HV30 以上に焼入焼戻しした鋼製で、荷重は 7〜13 mm/min の試験速度で破断するまで連続的に加える。リベットは、リベット製造業者が推奨する装着手順で決められた工具及び工具ヘッドで装着するのがよいとされている[1]。試験用板の厚さは種類と頭部で決まり、たとえば引張破断マンドレルのリベットでは、突出し頭なら 0.5d 以上、皿頭なら 0.75d 以上である(d は呼び径)[1]。試験用すき間穴(下穴)の径は、呼び径ごとに次のように決まっている[1]。
| リベットの呼び径 d(mm) | 試験用すき間穴の径 最小(mm) | 同 最大(mm) |
|---|---|---|
| 2.4 | 2.55 | 2.60 |
| 3.2 | 3.35 | 3.40 |
| 4 | 4.15 | 4.20 |
| 4.8 | 4.95 | 5.00 |
| 6.4 | 6.55 | 6.60 |
表の値は試験用の穴で、製品の下穴の指定ではない。実際の部品の下穴径は製造業者の推奨値で決めるのが基本で、前述の研究も、穴径をリベットメーカーの推奨値の上限を基準に 3 %・6 %・9 % 小さくした条件で軸力やトルクを比べている[3]。下穴の径は締結の状態を左右するので、板金品を外注するときは、図面の穴径を「リベットの推奨下穴径」に合わせて指定する。
実際の継手の強さは板で決まることがある
試験は硬い鋼板で行うので、リベットそのものが壊れる値を測っている。実際の継手では板の側が先に負けることがある。高強度鋼板を使った薄鋼板の重ね継手の研究では、引張せん断試験で板厚 1.2 mm の継手はリベット抜けで破断し、板厚 2.0 mm や 1.6 mm の 980 MPa 級・1470 MPa 級鋼板ではリベットの芯部の破断になった。十字引張試験ではリベットの芯部の破断はなく、下穴が広がってリベットが抜けた[4]。同じ研究の続報では、L 字引張試験でリベット中心とフランジ端部の距離が 10 mm を下回ると、距離が短くなるほど継手強度が下がった[5]。
強度が問題になる箇所では、カタログのせん断荷重だけで設計を終えず、実際の板の材質・厚さ・縁からの距離で継手の試験をして確かめる必要がある。締結強度の研究も、静荷重の破壊モードはリベットか板の強度不足によるのでそれぞれの材料の強度が分かれば検証できるが、動荷重の下では微細振動によるフレッチング摩耗など動的な原因で破断する事例があり、締結後の部品や製品レベルでの強度試験や振動試験で検証しているのが実情だと書いている[3]。
締結できる板の厚さの範囲を指定する
ブラインドリベットは、品番ごとに締結できる板の合計厚さ(グリップ範囲)が決まっている。JIS B 1087 も、試験の供試締結体の全厚さは、供試リベットに対して規定される最大締結長さを超えてはならないとしている[1]。最大締結長さが短いリベットの試験では、試験用板の組み合わせ厚さを最大締結長さに等しくし、試験用板が先に破断したときの判定を場合分けしている[1]。
a) リベットが破断するまで試験用板が残れば、記録した最大荷重がリベットの荷重で、最小値以上なら合格。b) リベットが残り、試験用板が最小値以上の荷重で破断したら合格だが、リベットの極限荷重は決められない。c) リベットが残り、試験用板が最小値未満で破断したら、受入れについて供給者と使用者の間で協議するのがよい。d) リベットが最小値に達する前に破断したら不合格[1]。短いリベットを買う場合は、この協議の扱いを先に決めておくと受入で揉めない。
購買の実務では、板厚が設計変更で変わったのにリベットの品番が変わっていない、塗装や板金の公差で合計厚さが範囲の端に寄る、といったことが起きる。板金品の公差の指定はプレス・板金の公差の記事で扱っている。合計厚さの最大と最小の両方が品番の範囲に入っていることを、図面か部品表で確かめる。
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材質の組み合わせと腐食
ブラインドリベットは、胴部とマンドレルの材質の組み合わせで品番が分かれる。前述のとおり引張破断マンドレルの種類ではマンドレルの頭部が残るので、胴部と板だけでなく、マンドレルの材質も腐食の組み合わせに入る。
異なる金属が接触すると、腐食電位の卑な側が腐食しやすくなる。アルミニウム合金部材のボルト連結部の異種金属接触腐食を約 10 年かけて調べた研究は、アルミニウム合金はステンレス鋼より腐食電位が卑であることを前提に、耐久性が要求される環境でステンレスボルトをアルミニウム合金部材の連結に用いる場合は、異種金属接触腐食を防ぐ表面処理や絶縁が必要だと結論している。同じ研究は、絶縁ブッシュは有効だがゆるみが出ると効果が減ること、雨で付着塩分が洗い流されない部位の方が腐食が早く進むことも報告している[6]。
リベットはボルトよりも小さく、ボルトのように絶縁ブッシュを挟む余地も少ない。屋外や結露のある環境で、アルミニウム合金の板をステンレス鋼のリベットで留める、あるいはその逆の組み合わせを使う場合は、設計者に材質の組み合わせと環境の前提を確かめ、品番の材質を図面か部品表で固定する。同等品への切り替えで材質が変わると、この前提が崩れる。
発注書・図面に書くこと
1. 種類と頭部
マンドレルの種類(引張破断・引抜きなど)、胴部の形(密閉形など)、頭部(突出し頭か皿頭か)。防水や異物の点で密閉形が要るかどうかは設計の判断である。
2. 呼び径と締結できる厚さの範囲
呼び径と、締結する板の合計厚さの最小・最大。品番で指定する場合も、その品番の締結範囲が板厚の範囲に入っていることを確かめる。
3. 胴部とマンドレルの材質、表面処理
材質と、めっきなどの表面処理の有無。相手の板の材質と使用環境を設計者と共有する。
4. 強さの要求と試験方法
最小せん断荷重・最小引張荷重を要求する場合は、試験方法を JIS B 1087 と書き、判定試験の扱い(日常試験か判定試験か)と、短いリベットの協議の扱いを決める[1]。
5. 下穴径と装着工具
部品側の下穴径は製造業者の推奨値に合わせ、装着は製造業者が推奨する工具と工具ヘッドで行う[1]。組立を外注するときは、工具の指定も作業の条件に入れる。
ブラインドリベットの代わりに、板にねじ穴を作ってねじで留める方法もある。薄板へのねじの留め方はねじ穴とインサートの記事、小さなねじの指定は小ねじの記事で扱っている。
受入で確かめること
受入では、品番・材質・呼び径・長さが発注どおりかを包装と現品で確かめる。強度の確認が必要なら、ロットごとの試験成績で最小せん断荷重・最小引張荷重を満たしていることを見るか、JIS B 1087 の方法で抜き取り試験をする。組立後の部品を受け入れる場合は、頭部の浮き、リベットの傾き、マンドレルの残り具合、板の割れを外観で見る。外観の合否基準の決め方は外観基準の記事で扱っている。
よくある質問
Q. 「JIS 品のブラインドリベット」で発注できるか。
A. JIS にあるのは試験方法の JIS B 1087 で、製品の寸法や強度の JIS ではない。品番と、必要なら試験方法として JIS B 1087 を指定する。
Q. カタログのせん断荷重を、そのまま継手の強さとして使ってよいか。
A. 使えない場合がある。カタログの値はリベットの値で、試験は硬い鋼の板で行う。薄い板や縁に近い位置では、板の側が先に壊れることが研究で示されている[4][5]。
Q. 振動する部品に使ってよいか。
A. 設計で確かめる。動荷重の下ではフレッチング摩耗などで破断する事例があり、製品レベルの振動試験で検証しているのが実情とされている[3]。
鉄骨の高力ボルトは高力ボルトの記事、インチ系のねじはユニファイねじの記事で扱っている。装置の配管部品は管用ねじの記事と油圧ホースの記事にまとめている。
まとめ
ブラインドリベットの JIS は試験方法の JIS B 1087 で、JIS B 1215 は別物のセミチューブラリベットである。強さを示す最小せん断荷重・最小引張荷重は硬い試験板で測った値なので、実際の継手は板厚・板の強さ・下穴・縁からの距離で変わり、振動を受ける箇所は製品で確かめる。発注では種類・頭部・呼び径・締結できる厚さの範囲・胴部とマンドレルの材質・下穴径・装着工具を決め、異種金属の組み合わせでは卑な側の腐食を見込んで材質を固定する。
出典・参考資料
- JIS B 1087:2004 ブラインドリベット-機械的試験(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2004 年 3 月 20 日制定・2023 年 10 月 20 日確認)
- JIS B 1215 セミチューブラリベット(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1976 年 3 月 1 日制定・2024 年 10 月 21 日確認)
- ブラインドリベットの締結強度に関する実験的検証(笠井裕貴ほか/日本機械学会 関東支部総会講演会講演論文集/2017 年)
- ブラインドリベットによる薄鋼板重ね継手の機械的性質(崎山達也・宮崎康信/溶接学会全国大会講演概要/2011 年)
- ブラインドリベットによる薄鋼板重ね継手の機械的性質(第 2 報)(崎山達也・宮崎康信/溶接学会全国大会講演概要/2012 年)
- アルミニウム合金部材のボルト連結部の異種金属接触腐食に関する耐久性研究(伊藤義人・兼子彬・小嶋柾道/構造工学論文集 Vol.67A・土木学会/2021 年)
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