粉体塗装の指定——JIS K 5981 の水準記号で性能を書く、膜厚・塗らない部分・めっきの上 | newji
品質・加工の困りごとの相談

その不具合、
どこに頼むかから一緒に。

課題の整理と進行は newji、測定・解析・試作は専門の会社。見積のご提示までは無料です。

相談できることを見る技術課題の解決のページへ

投稿日:2026年10月17日

粉体塗装の指定——JIS K 5981 の水準記号で性能を書く、膜厚・塗らない部分・めっきの上

この記事のポイント(結論先出し)

工業部品の粉体塗装は、JIS K 5981(合成樹脂粉体塗膜)で、素地・塗装前処理・粉体塗料の種類と、耐食性(S1〜S5)・促進耐候性(W1〜W5)などの品質の水準を記号で指定できる[1]。ただし品質の項目は受渡当事者間の協定で選ぶもので、膜厚も協定した値とされている[1]。注文書では、使う水準の記号、膜厚の値と測る場所、塗らない部分(ねじ・はめ合い面)を書く。塗料の種類によっては素地を高温に加熱する。溶融亜鉛めっきの上に高温で塗る場合は、めっき層の酸化や合金化で密着が落ちることがあるので[4]、二重防食を頼むときは工程まで確かめる。

粉体塗装を「粉体塗装」とだけ書くと何が決まらないか

🛠 この記事のような品質・検査・規格の課題は、ご相談ください。規格の調べ物、仕入先への品質要求づくり、検査・試験先の手配まで一緒に進めます(相談は無料)。相談の例を見る →
相談する →

この記事は、金属の工業部品・設備部材の粉体塗装を発注する話である。JIS K 5981 は、鉄鋼・亜鉛めっき・アルミニウムなどの金属素地に、脱脂・研磨・ブラスト・化成皮膜処理・有機皮膜処理などの塗装前処理をし、熱硬化性・熱可塑性の合成樹脂粉体塗料を塗装して加熱形成させた製品の塗膜について、種類・品質・試験方法を定めている[1]。図面の加工方法記号は JIS B 0122 の粉体塗装(SPAP)である[2]。

記号の SPAP は処理の名前を示すだけである[2]。どの樹脂の粉体塗料か、前処理は何か、膜厚はいくつか、どの品質の試験に合格すればよいかは、別に書かないと決まらない。塗装の仕様全般(膜厚・色・光沢・付着性の測り方)は塗装の仕様の決め方で扱ったので、この記事は粉体塗装ならではの指定に絞る。

📄 実務で使うなら — 原価のつかみ方(全 5 章・無料サンプルあり)

JIS K 5981 の 3 つの種類で「何に、何を」を決める

JIS K 5981 は塗膜の種類を 3 つの軸で分けている[1]。

1. 素地による種類
鉄鋼、鋳鉄、亜鉛めっき、アルミニウム、アルミダイカスト、ステンレス鋼、その他。

2. 塗装前処理による種類
脱脂、研磨、ブラスト、りん酸亜鉛化成皮膜、りん酸鉄化成皮膜、クロメート化成皮膜、その他の化成皮膜、有機被膜、その他。

3. 粉体塗料による種類
熱硬化性(エポキシ樹脂系、エポキシポリエステル樹脂系、ポリエステル樹脂系、アクリル樹脂系、その他)と、熱可塑性(ポリオレフィン樹脂系、ポリ塩化ビニル樹脂系、ポリアミド樹脂系、ポリエステル樹脂系、その他)。

規格は、送り状や荷札などに粉体塗料の種類(小区分を含む)や塗装前処理の種類などを表示しなければならないとしている[1]。注文書でこの 3 つを書いておけば、届いた荷の表示と突き合わせられる。前処理にりん酸塩を使うときの指定は同じ束のりん酸塩処理(パーカー処理)の指定で扱う。

🛠 発注の管理なら — 発注書の作成から送付、進捗の確認までをひとつの画面で行える Newji one(製造業の見積・発注クラウド/サービス資料は無料)

品質は水準の記号で指定する。ただし項目は協定で選ぶ

JIS K 5981 は品質の各項目に水準を設けている。主なものを抜き出す[1]。

項目 水準の記号 試験時間など 合格の条件
耐食性(中性塩水噴霧) S1・S2・S3・S4・S5 48・120・240・500・1 000 h カット線からのはがれ幅 3 mm 以下
促進耐候性(サンシャインカーボンアーク) W1・W2・W3・W4・W5 120・240・500・1 000・2 000 h 光沢保持率 70% 以上、色差 ΔE 4 以下、はがれ・膨れ・割れなし
耐湿性 R1・R2・R3・R4・R5 48・72・150・240・500 h 碁盤目・膨れ・外観の条件
耐アルカリ性・耐酸性 N1〜N4・M1〜M4 48・120・240・500 h 膨れ・割れ・はがれ・軟化の条件
引っかき硬度(鉛筆) H1〜H6 — H1 は 6B 以下、H6 は 3H 以上

ほかに付着性(A1〜A6、碁盤目試験の評価点で区分)、耐おもり落下性(熱硬化性は G1〜G3、熱可塑性は F1〜F3)がある[1]。注意したいのは、規格が「品質項目は,受渡当事者間の協定によって選択することができる」としている点である[1]。つまり「JIS K 5981 による」と書いただけでは、どの項目のどの水準を満たせばよいかが決まらない。屋外の部品なら「耐食性 S3、促進耐候性 W3」のように、使う項目と水準を記号で並べて書く。

耐食性の評価は、試験片 2 枚にカット線を入れて試験し、試験後に水洗・放置してからセロハン粘着テープではがし、カット線の周りの片側のはがれ幅の最大値で見る[1]。促進耐候性はサンシャインカーボンアーク灯式の試験機で行い、受渡当事者間の合意でキセノンランプ法によってもよいとされている[1]。どちらの試験機で試験するかも決めておく。耐候性試験の試験機の違いと指定のしかたは耐候性試験の指定で扱う。塩水噴霧試験の結果をどう読むかは塩水噴霧試験の条件の指定を参照してほしい。

試験片は製品から取るのが原則

規格は、製品から試料を取れる場合は通常、製品の平面部位から 150×70 mm の試験片を作るとし、取れない場合は製品と同じ材質・厚さの金属板を同じ条件で前処理・塗装・加熱乾燥して試験片にするとしている[1]。小さな部品や曲面だけの部品は製品から取れないので、同時処理の試験板で品質を確かめることになる。どの試験板を何枚、どのロットで塗るかを発注時に決めておく(提案)。

膜厚は「協定した値」。測る場所と塗らない場所を決める

JIS K 5981 は塗膜の厚さを「受渡当事者間で協定した値」とし、測定は最低 2 か所、その平均値を塗膜の厚さとする、測定位置は受渡当事者間で決めることができる、としている[1]。規格が数字を持っていないので、注文書に数字と測る場所を書かないと、何も決まっていないのと同じである。

粉体塗装で膜厚と塗る範囲を細かく決めている規格の例に、JIS G 5528(ダクタイル鋳鉄管内面エポキシ樹脂粉体塗装)がある。この規格は、塗装する範囲と試験する範囲を図で分け、試験範囲の塗膜の厚さを 0.3 mm 以上とし、厚さは長さ方向の任意の 2 か所で円周上の 4 点を測るとしている[3]。ゴム輪が入る部分などは別の扱いを図で示している[3]。部品の発注でも、このように「塗る範囲」「判定に使う範囲」「塗らない範囲(マスキング)」を図面で分けると、仕入先との食い違いが減る。

粉体塗装では、JIS G 5528 の例のように 0.3 mm 以上といった厚い膜を求めることもある[3]。ねじ・タップ穴・はめ合い面・通電させる接点にまで膜が乗ると組み立てられない。塗らない部分は図面に示し、マスキングの方法(栓・テープ・後加工で除去)を仕入先と決めておく(提案)。

ピンホールを見るなら試験方法と電圧まで書く

JIS G 5528 は、管の塗膜に火花が発生するようなピンホールがないことを品質とし、ホリデーディテクタで試験すること、電圧は探触子が真ちゅう製のワイヤなどのブラシ状なら 1 000 V、導電性ゴム板状なら 2 000 V とすること、ピンホール検査は全数行うことを定めている[3]。防食が目的の厚い粉体塗膜で「ピンホールなきこと」を求めるなら、この例のように試験機・電圧・全数か抜取りかまで書く。電圧を書かないと、検査の厳しさが仕入先任せになる。

焼付けの温度と素地:溶融亜鉛めっきの上に塗るとき

粉体塗料は加熱して溶かし、塗膜にする。JIS G 5528 は、塗料製造業者の指定する温度に予熱した管に粉体塗料を吹き付け、塗膜を十分に硬化させるとしている[3]。焼付け(予熱)の条件は塗料で決まるので、使う塗料の指定条件を仕入先に出させ、部品の熱処理条件や組み込まれた部品と照らす(提案)。熱処理した部品の扱いは熱処理を図面で指定するも参照してほしい。

とくに確かめたいのが、溶融亜鉛めっきの上に粉体塗装をする二重防食の組合せである。通信設備の鋼製構造物について報告した論文は、熱可塑性ポリエステル樹脂の粉体塗装では溶融温度に対応した高い熱処理温度が必要で、亜鉛めっき層の酸化劣化や合金化によるぜい化が生じ、塗膜とめっき層の密着力が低下することが問題だったと書いている[4]。この研究では基板を 573 K(約 300℃)に加熱して流動浸漬で塗装し、加熱時にめっき表面にできる酸化物を研磨で取り除く方法で密着を確保した[4]。めっき層を残したうえで塗膜が切れても亜鉛が犠牲防食で鋼を守る、という二重防食の効果自体は同じ論文で示されている[4]。

ここから言えるのは、「めっきの上に粉体塗装」と頼むだけでは足りないということである。どの粉体塗料を、どの温度で、めっき面にどんな処理をしてから塗るかを、仕入先の実績のある工程として出させ、試作で密着を確かめる(提案)。溶融亜鉛めっき側の指定は溶融亜鉛めっきの指定で扱った。

メタリック色を指定するときに仕入先が気にすること

静電粉体塗装は、数十 kV〜100 kV の高電圧で塗料を帯電させて吹き付ける工程で、静電気放電による粉じん爆発・火災が懸念されている[5]。労働安全衛生総合研究所の報告は、ドライブレンドタイプのメタリック系粉体塗料が数 mJ の小さい静電気放電でも着火する危険性があることを示し、アルミニウム顔料の混合比が 6 wt% から 8 wt% の間に着火しやすさが急に増すしきい値があるとしている[5]。

これは仕入先の工程の安全の話で、発注側が条件を決めるものではない。ただ、メタリック色を指定したり、色を後から変えたりすると、仕入先は塗料と設備の安全の確認をやり直すことになる。色の変更は単純な見た目の変更ではなく、事前に相談すべき変更として扱う(提案)。

受け取るときに確かめること

JIS K 5981 は外観の試験を、拡散昼光の下で目視し、ピンホール・膨れ・割れ・はがれ・しわ・色むら・つやむら・はじき・つぶなどがなく、見本品と比べて色・つやの差が少ないときに正常とする、としている[1]。受入では次を見る。

1. 表示と種類
送り状の粉体塗料の種類と前処理の種類が、注文どおりか[1]。

2. 膜厚
決めた場所で、決めた値に入っているか。塗らない部分に膜が乗っていないか。

3. 外観
見本品と比べて、上の欠陥がないか。外観の基準の決め方は外観の合否基準を仕入先と決めるで扱った。

4. 品質の試験の記録
指定した水準の記号(S・W など)の試験を、どの試験片(製品か、同時処理の試験板か)で行ったか。

注文書の書き方の例

決まった様式があるわけではない。発注側として書いておきたい内容を例にまとめる。

「表面処理:粉体塗装(SPAP)、JIS K 5981 による。素地:鉄鋼。塗装前処理:りん酸亜鉛化成皮膜。粉体塗料:熱硬化性ポリエステル樹脂系。品質:耐食性 S3、促進耐候性 W3(試験機はサンシャインカーボンアーク灯式)、試験片は同時処理の試験板とする。膜厚:○○ μm 以上(図面指示の 4 点で測定し平均と最小を記録)。図面に示すねじ部・はめ合い面は塗装しないこと。塗料・前処理・焼付条件・色の変更は事前承認を要する。」

例の水準と数字は書き方の例である。部品の使い方から設計が決める。

よくある質問

「JIS K 5981 による」と書けば品質は決まりますか

決まらない。規格は品質項目を受渡当事者間の協定で選べるとし、塗膜の厚さも協定した値としている[1]。使う項目と水準の記号(S3・W3 など)と膜厚の値を書く。

溶融亜鉛めっきの部品に粉体塗装を追加できますか

できるが、工程を確かめる。高い温度で塗る粉体塗料では、めっき層の酸化や合金化で塗膜の密着が落ちたという報告があり、その研究では加熱後にめっき表面を研磨して密着を確保している[4]。仕入先の実績のある工程を出させ、試作で密着を確かめる。

粉体塗装と電着塗装はどう使い分けますか

比べる軸は三つある。一つ目は形で、電着塗装は部品を電極にして袋の内側まで塗れるが、内側は外側より薄くなる。粉体塗装でどこまで塗れるかは部品の形と塗り方で決まるので、内側にも塗膜が要る部品は試作で切断して確かめる。二つ目は膜厚で、粉体塗装は JIS G 5528 の例のように 0.3 mm 以上の厚い膜を求めることもできる[3]。厚い膜が要るなら粉体が候補になる。三つ目は使う環境で、電着の塗膜は日光で劣化しやすいとされるので、屋外では上塗りの要否まで含めて比べる。粉体塗装なら促進耐候性の水準(W1〜W5)で指定できる[1]。電着の指定は同じ束のカチオン電着塗装の指定で扱う。最後は形・膜厚・使う環境から設計と決める。

まとめ

粉体塗装は JIS K 5981 で、素地・塗装前処理・粉体塗料の種類と、耐食性 S1〜S5、促進耐候性 W1〜W5 などの品質の水準を指定できる。ただし品質項目は協定で選び、膜厚も協定した値なので、使う記号と膜厚の数字、測る場所を注文書に書く。試験片を製品から取れない部品は、同時処理の試験板を決めておく。ねじやはめ合い面など塗らない部分を図面で示す。ピンホールを見るなら試験機と電圧まで書く。焼付けの温度は塗料で決まり、溶融亜鉛めっきの上に塗る場合はめっき層の劣化で密着が落ちることがあるので、工程を確かめてから発注する。

同じ束では、りん酸塩処理(パーカー処理)、カチオン電着塗装、亜鉛フレーク皮膜、フッ素樹脂コーティングの発注も扱う。

出典・参考資料

  1. JIS K 5981:2006 合成樹脂粉体塗膜(JIS 検索)(日本産業標準調査会/2006 年 2 月改正・2025 年 10 月確認)
  2. JIS B 0122:1978 加工方法記号(JIS 検索)(日本産業標準調査会/1978 年 2 月改正・2023 年 10 月確認)
  3. JIS G 5528:2014 ダクタイル鋳鉄管内面エポキシ樹脂粉体塗装(JIS 検索)(日本産業標準調査会/2014 年 11 月改正・2024 年 10 月確認)
  4. 篠崎聡ほか「亜鉛めっき鋼板上へのポリエチレンテレフタレートホモポリマー粉体塗装とその防食特性」材料と環境 54 巻 8 号(腐食防食学会/2005 年)
  5. 崔光石「静電粉体塗装用塗料の着火性に関する研究-静電気放電によるメタリック粉体塗料の着火性-」労働安全衛生研究 4 巻 1 号(労働安全衛生総合研究所/2011 年)

粉体塗装を含む部品の生産先を、塗装の条件から選ぶ

newji の OEM/ODM 生産では、品質要求・数量・納期・コストに合わせて、国内外のサプライヤーネットワークから案件ごとに生産先を選定しています。対応する表面処理には、焼付塗装・粉体塗装・電着塗装・UV 塗装などの塗装を含みます。試作で寸法・外観・機能を確かめ、量産に向けた課題を洗い出します。

OEM/ODM 生産について見る

WHITE PAPER

この記事の理解を深める
無料ホワイトペーパーをプレゼント

製造業の現場で使える実務資料(PDF)を無料でお届けします。"こんな資料が届きます" ↓ 下のボタンからどうぞ。

AI 一次診断(無料・お名前の入力なし)

この症状の原因を、AIが分析します

材料・加工方法・条件と、起きている症状を書いてください。考えられる原因、まず確かめること、切り分け方、専門の会社に聞くことを AI が整理します。

1 日 3 回まで0 / 1,500 字

社外秘・機密情報・個人情報・図番など、公開できない情報は書かないでください。

AI の回答は可能性の整理で、原因を断定するものではありません。入力内容は AI 診断と改善のため 30 日間保存し、その後削除します(プライバシーポリシー)。

AI を使わずに直接相談する →

📄 取引先から受け取った仕様書の要求を、1 件ずつ一覧にします — 仕様書の要求事項一覧(無料・社数限定)

𝕏NEWJI総研は、調達・品質・設計の知識を X でも発信しています — @newji_souken をフォロー

NEWJI総研

購買・調達や設計・品質の実務を、
研修テキストと実務書式にまとめています。
無料サンプルで中身を確かめられます。

NEWJI総研の資料を見る

OEM/ODM 生産委託

アイデアはある。作れる工場が見つからない。
試作1個から量産まで、加工条件に合わせて最適提案します。
短納期・高精度案件もご相談ください。

加工可否を相談する

AI/DX支援

見積・発注、紙・FAX、品質記録など、
人に頼って回っている業務を、AIと仕組みで回る形に。
まずは無料でご相談ください。

AI/DX支援を見る

見積・発注クラウド Newji one

受発注が増えるほど、入力・確認・催促が重くなる。
受発注管理を“仕組み化“して、ミスと工数を削減しませんか。
見積・発注・納期まで一元管理できます。

機能を確認する

You cannot copy content of this page