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フッ素樹脂コーティングの指定——JIS K 6894 の PTFE・PFA の試験、焼付け温度と PFOA

この記事のポイント(結論先出し)
工業部品の「テフロンコーティング」は、規格では金属素地上のふっ素樹脂塗膜で、JIS K 6894 は PTFE・PFA・FEP・ETFE の 4 種類を対象に試験方法を定めている[1]。品質の項目と水準は受渡当事者間の協定で決めるので[1]、注文書には樹脂の種類、膜厚、非粘着性・非ぬれ性・ピンホールなど使う試験と合否を書く。PTFE の塗膜の鉛筆硬度は、規格の参考例で 25℃ の HB〜F に対し 200℃ では 4B〜2B 程度まで下がる[1]。焼付けは規格の標準板で 380℃・20 分の例があり[1]、基材の熱処理と照らす。橋梁などの耐候性の「ふっ素樹脂塗料」は別の系統で[2]、混同しない。PFOA とその塩は化審法の第一種特定化学物質に指定されている[4]。
目次
「テフロンコーティング」と書いた注文で、何が決まっていないか
この記事は、金型・ホッパー・シュート・ロール・薬液に触れる部品など、工業部品へのふっ素樹脂コーティングを発注する話である。調理器具の話ではない。テフロンは商品名に由来する通称で、規格の言葉ではふっ素樹脂(PTFE など)である。JIS K 6894(金属素地上のふっ素樹脂塗膜の試験方法)は、工業用・家庭用などに使う、金属素地上にふっ素樹脂を主成分としたふっ素樹脂塗料を塗装し焼き付けた塗膜を対象にしている[1]。
規格の対象になる塗膜の種類は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)の 4 つである[1]。「テフロンコーティング」とだけ書くと、このどれか、膜厚はいくつか、何の性能を保証するのかが決まらない。そして規格は、試験方法の項目と品質要件を受渡当事者間の協定によるとしている[1]。規格名を書いても合否の基準は決まらないので、項目と値を自分で書く必要がある。
削り出しや成形の PTFE 部品(シール・軸受など)を発注する場合はPTFE 部品の発注で扱った。この記事は金属の上に付けるふっ素樹脂の塗膜に絞る。
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耐候性の「ふっ素樹脂塗料」とは別のもの
同じ「ふっ素樹脂」の名前で、まったく別の目的の塗装がある。色材協会誌の解説は、塗料用ふっ素樹脂としてフルオロエチレン-ビニルエーテル交互共重合体(FEVE)が開発され、建築・土木構造物から輸送機、電気分野まで使われており、防食塗装の分野では高耐候性による美観保持と基材保護で塗り替え周期を延ばしてきたと書いている[2]。例として示された橋梁の塗替えの仕様は、エポキシ樹脂塗料の下塗り 2 層(各 40 μm)の上に、ふっ素樹脂塗料の中塗り・上塗り(各 25 μm)を重ねた合計 130 μm で、20 年後の光沢保持率が約 100% だった[2]。
こちらは日光と雨に長く耐えることが目的の塗料で、非粘着や離型を目的にした PTFE・PFA の焼付け塗膜とは別物である。図面や仕様書に「フッ素コート」とだけあるときは、離型・非粘着・耐薬品の焼付けコーティングなのか、屋外の耐候性の塗装なのかを最初に確かめる。屋外の塗装の仕様の決め方は塗装の仕様の決め方で扱った。
試験の項目を選んで、合否を書く
JIS K 6894 が定める試験は、外観、塗膜の厚さ、非ぬれ性、非粘着性、付着性、鉛筆引っかき硬度、耐摩耗性、ピンホールである[1]。主なものの中身は次のとおり。
1. 塗膜の厚さ
マイクロメータ・磁気誘導膜厚計・渦電流膜厚計のいずれかで、各試料 3 か所以上を測り、平均値を塗膜の厚さとする[1]。
2. 非ぬれ性
表面に液体が接触するとき、はじいてぬれない性質で、精製水の接触角で測る。1 枚の試験片で 5 か所を測って平均し、接触角とあわせて塗膜の表面粗さを試験結果に記載する[1]。
3. 非粘着性
物質がくっつかない、くっつきにくい性質で、規定の粘着テープを貼ってはがす力を測る[1]。食品の非粘着性の試験として、ホットケーキ生地を焼いてはがす力を測る方法が参考に示されている[1]。
4. 付着性
塗膜と金属素地との接着力で、描画試験法・碁盤目テープ試験法・ピール強度試験法のいずれかによる。描画と碁盤目の試験の塗膜の厚さは 60 μm 以下(下地処理の厚さを含まない)とされている[1]。
5. 鉛筆引っかき硬度
試験温度は室温又は実使用温度に近い温度で行い、試験方法と試験温度を試験結果に記載する[1]。
6. ピンホール
乾式(低周波高電圧パルス放電式の探知機)か湿式(電気抵抗式)で行い、試験機・印加電圧・電極は受渡当事者間で協定する[1]。
規格の附属書 C(参考)には、塗膜の種類ごとの代表的な品質水準の例が載っている。主なものを数字に直して抜き出す[1]。
| 塗膜の種類 | 塗膜の厚さ(例) | 非ぬれ性(接触角の水準) | 鉛筆引っかき硬度 |
|---|---|---|---|
| PTFE | 40 μm | Wr3(110° 以上) | 25℃ で HB〜F 以上、200℃ で 4B〜2B 以上 |
| PFA | 60 μm(厚膜の例 400 μm) | Wr2(90° 以上) | 25℃ で F〜H 以上、120℃ で 6B〜4B 以上 |
| FEP | 40 μm(厚膜の例 300 μm) | Wr3(110° 以上) | 25℃ で 2B〜HB 以上、120℃ で 6B〜4B 以上 |
| ETFE | 50 μm(厚膜の例 500 μm) | Wr1(70° 以上) | 25℃ で F〜H 以上 |
表は規格の附属書の「標準板の代表的品質水準例」を、水準の記号から数字に直したもので、部品の合否基準ではない[1]。厚膜の例(300〜500 μm)では、ピンホールなし(水準 P1)の例が示されている[1]。読み取れることは二つある。一つは、樹脂の種類で水のはじき方(接触角)が違うこと。もう一つは、温度が上がると塗膜が軟らかくなり、引っかきに弱くなることである。高温で使う部品なら、硬度や摩耗の試験を使う温度に近い温度で行うよう指定する。規格もそれを認めている[1]。
焼付け温度と基材:部品の熱処理と照らす
JIS K 6894 は焼付けを、金属素地上に塗料を塗布した後、高温に加熱し塗膜を乾燥・溶融・硬化する操作と定義している[1]。附属書 B(参考)の非粘着性試験の標準板は、アルミ板(A1050P)に下地処理と下塗りをした後、PTFE クリアー塗料又は PFA 粉体クリアー塗料を塗り、試験板温度 380℃ で 20 分焼き付けて作るとされている[1]。
実際の焼付け条件は塗料で決まるが、この例のように高い温度で焼くことがある。焼入れした鋼の部品、時効硬化させたアルミ合金の部品、ばね、ろう付けや接着で組み立てた部品は、焼付けの温度で性質が変わることがある。発注するときは、使う塗料の焼付け温度と時間を仕入先に出させ、部品の熱処理条件と照らしてから決める(発注側の提案)。熱処理の指定の書き方は熱処理を図面で指定するで扱った。焼付けで寸法が動く部品や、ねじ・はめ合い面がある部品は、塗る範囲と塗らない範囲(マスキング)を図面に示す。
PFOA などの化学物質の確認
ふっ素樹脂の製造に関係する化学物質には規制がある。厚生労働省・経済産業省・環境省の合同会合の資料は、ストックホルム条約の締約国会議でペルフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩、PFOA 関連物質が廃絶の対象に加えられたことを受け、これらを化審法の第一種特定化学物質に指定することが適当とされたと書き、PFOA の主な用途をフッ素ポリマー加工助剤・界面活性剤等、PFOA 塩の主な用途をコーティング剤・半導体製造用中間原料としている[3]。
環境省の資料によると、PFOA とその塩は先行して第一種特定化学物質に指定された(令和 3 年 4 月 21 日公布、10 月 22 日施行)[4]。PFOA 関連物質については、56 物質を特定して第一種特定化学物質に指定することが適当とする答申が令和 4 年 7 月に出され、あわせてコーティング剤などを含む製品の輸入制限を講ずることが適当とされている[4]。関連物質の指定の施行状況は、発注の時点で環境省の公表資料で確かめる。
発注では、使う塗料が規制の対象物質を含まないことを示す書類を仕入先に出させる(提案)。含有化学物質の調査の依頼のしかたは含有化学物質の調査の依頼で扱った。食品に触れる部品なら、食品衛生法の器具・容器包装の規制への適合も確かめる。PTFE 部品での確かめ方はPTFE 部品の発注に書いた。
受け取るときに確かめること
1. 外観
規格は外観を、ピンホール・膨れ・しわ・透け・流れ・にじみ・はじき・へこみ・むらの程度を目視で見て、限度見本品と比べて差がなければ正常とする[1]。限度見本を作って合意しておく。
2. 膜厚
決めた測定器で、3 か所以上の平均が注文の値に入っているか[1]。
3. 指定した試験の結果
非ぬれ性なら接触角と表面粗さ、硬度なら試験温度、ピンホールなら試験機と電圧が記録されているか[1]。
4. 塗料と工程
承認した塗料(樹脂の種類・製品名)と焼付け条件で処理されているか。規格は報告書に、規格番号、塗膜の種類、製造業者名、製造年月日、品質試験結果及び試験法を記載するとしている[1]。
注文書の書き方の例
決まった様式があるわけではない。発注側として書いておきたい内容を例にまとめる。
「表面処理:ふっ素樹脂塗膜(PFA)、焼付け。用途:粉体の付着防止。膜厚:○○ μm 以上(渦電流膜厚計で 3 か所以上を測定し平均と最小を記録)。試験:非ぬれ性(接触角 ○○° 以上、表面粗さを併記)、ピンホール(乾式、印加電圧 ○○ V、全数)。図面に示すはめ合い面は塗装しないこと。使用する塗料の焼付け温度・時間を事前に提出し承認を得ること。塗料が化審法の第一種特定化学物質を含まないことを示す書類を提出すること。塗料・下地処理・焼付条件の変更は事前承認を要する。」
例の数字は書き方の例である。部品の使い方から設計が決める。
よくある質問
図面に「テフロンコーティング」とあります。そのまま発注してよいですか
樹脂の種類(PTFE・PFA・FEP・ETFE など)と膜厚、保証する性能を確かめてから発注する。規格は試験項目と品質要件を受渡当事者間の協定によるとしている[1]。
高温で使う部品にふっ素樹脂コーティングをしても大丈夫ですか
使える温度は樹脂で違い、温度が上がると塗膜は軟らかくなる。規格の参考例では PTFE の鉛筆硬度が 25℃ の HB〜F に対し、200℃ では 4B〜2B 程度である[1]。使う温度に近い温度で硬度や摩耗の試験を行うよう指定する[1]。
屋外の設備の塗装に「ふっ素」と指定されています
耐候性を目的にした FEVE 系のふっ素樹脂塗料の可能性が高い。橋梁などで長期の耐候性の実績が報告されている系統で[2]、非粘着の焼付けコーティングとは別物である。どちらを求めているかを設計に確かめる。
まとめ
工業部品の「テフロンコーティング」は、規格では金属素地上のふっ素樹脂塗膜で、JIS K 6894 は PTFE・PFA・FEP・ETFE の 4 種類の試験方法を定めている。品質の項目と水準は協定で決めるので、樹脂の種類・膜厚・使う試験(非ぬれ性・非粘着性・付着性・硬度・ピンホール)と合否を注文書に書く。温度が上がると塗膜は軟らかくなるので、高温で使う部品は使う温度に近い温度で試験する。焼付けは高温になることがあり、部品の熱処理と照らす。屋外の耐候性のふっ素樹脂塗料とは別物として扱う。PFOA とその塩は化審法の第一種特定化学物質で、使う塗料が対象物質を含まないことを書類で確かめる。
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同じ束では、りん酸塩処理(パーカー処理)、カチオン電着塗装、粉体塗装、亜鉛フレーク皮膜の発注も扱う。
出典・参考資料
- JIS K 6894:2014 金属素地上のふっ素樹脂塗膜の試験方法(JIS 検索)(日本産業標準調査会/2014 年 3 月改正・2023 年 10 月確認)
- 高柳敬志「塗料用ふっ素樹脂 防食塗料への応用技術②」色材協会誌 88 巻 10 号(色材協会/2015 年)
- 第一種特定化学物質に指定することが適当とされたジコホル、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩及び PFOA 関連物質の個別の適用除外の取扱い及びこれらの物質群が使用されている製品で輸入を禁止するものの指定等について(案)(厚生労働省・経済産業省・環境省/2019 年 9 月 20 日)
- POPs 条約の附属書改正に係る化審法に基づく追加措置及び今後の予定について<PFOA 関連物質関連>(環境省 化学物質審査室・中央環境審議会資料)
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