- お役立ち記事
- 発注ステータスは誰が動かすか——受領日だけは自社の都合で決められない
発注ステータスは誰が動かすか——受領日だけは自社の都合で決められない

この記事のポイント(結論先出し)
発注してからの進み具合が「電話とメールで確認しないと分からない」のは、状態を用意していないからではなく、その状態を誰が動かすのかを決めていないからである。発注 1 件は、発注側が動かす場面と取引先が動かす場面が交互に来る。下書きから確定までは発注側、受注の確認・手配・出荷は取引先、受領と検収はふたたび発注側、という並びになる。動かす側は、その事実を実際に起こした側に割り当てられている。そして取適法が日付を名指ししている状態は、そのうち発注側が動かすものだけである。受領した日は支払期日の起算日であり[2]、検査を完了した日・検査の結果・検査に合格しなかった給付の取扱いは 7 条記録の記載事項になる[4]。取引先が出荷した日を記録せよという規定は無い。だから状態を設計する順序は 2 つで足りる。第一に、法令が日付を求める状態を先に置く。第二に、残りは「動かせる人が実際にいるか」だけで足す。
目次
「いま、どうなっているか」を電話で聞いている理由
発注書を出したあとに担当者が使っている時間の大半は、状態の確認である。あの発注は受けてもらえたのか。手配は始まっているのか。今日届いた分は全部なのか。検査は終わったのか。請求書と数量が合わないがどの回の分か。どれも「いま何が起きているか」を聞いているだけで、新しい判断はしていない。
この問い合わせを減らそうとして、多くの現場はまず状態の一覧を作る。表計算に「発注済」「納期回答待ち」「一部入荷」「検査中」といった列を足す。ところが数週間で列は更新されなくなる。原因は入力の手間ではない。その列を誰が埋めるのかが決まっていないからである。「納期回答待ち」は取引先が回答したときに動くはずだが、取引先はその表を見ていない。「検査中」は検査部門が動かすはずだが、検査部門は別の帳票を使っている。誰の仕事でもない列は、必ず古くなる。
発注 1 件が複数のシステムのどこに載るのかという線引きは受発注・会計・在庫はどこで線を引くかで、状態ごとに何のデータを持つべきかは発注管理システムに要る機能で扱った。この記事はそのどちらでもなく、並んだ状態を誰が動かすかだけを見る。
調達現場で押さえるポイント
状態が古くなるのは、入力が面倒だからではなく、その状態を動かす人にとって、動かす理由が無いからである。発注側の都合で置いた状態は発注側しか動かさない。取引先に動かしてほしい状態は、取引先の側にも「動かすと自分が楽になる」形になっていないと動かない。
📄 実務で使うなら — 発注の出し方と電子化(全 5 章・無料サンプルあり)
発注 1 件の状態を、動かす側で並べ直す
製造業の受発注では、発注 1 件がたどる状態はおおむね決まっている。下書き、確定、確認済み、手配中、出荷済み、納品済み、検収完了。これに取消しが加わる。重要なのは名前ではなく、ひとつ先へ進める権限がどちらにあるかである。並べ直すと次のようになる。1 件の発注を複数回に分けて納める場合は、この状態が回ごとに動く。数え方は発注の分割と分納で扱っている。
| 状態が進む場面 | 動かす側 | 起きた事実 | 取適法での意味 |
|---|---|---|---|
| 下書き → 確定 | 発注側 | 発注を出した | 製造委託等をした日。4 条明示の義務がここで生じる[2] |
| 確定 → 確認済み | 取引先 | 受注を確認した | 記録事項として名指しされていない |
| 確認済み → 手配中 | 取引先 | 材料手配・製造に着手した | 同上 |
| 手配中 → 出荷済み | 取引先 | 出荷した | 同上 |
| 出荷済み → 納品済み | 発注側 | 受け取って自己の占有下に置いた | 受領した日。支払期日の起算日[2]/7 条記録の記載事項[4] |
| 納品済み → 検収完了 | 発注側 | 検査を終えた | 検査を完了した日・検査の結果・合格しなかった給付の取扱い[4] |
進む場面は 6 つ、うち発注側が動かすのが 3 つ、取引先が動かすのが 3 つである。数のうえでは半々だが、性質はまったく違う。
取適法が記録を求めている日付は、すべて発注側の行為の日である。記録規則第 1 条第 1 項を通して読むと、製造委託等をした日、給付を受領する期日、給付を受領した日、検査を完了した日、代金を支払った日、原材料等を引き渡した日と決済をした日、遅延利息を支払った日、といった具合に、発注側が何をしたかで日付が定義されている[4]。取引先が受注を確認した日や出荷した日を記録せよ、という規定はどこにもない。
ここから 2 つのことが決まる。ひとつは、発注側が動かす 3 つの状態は、社内の運用がどうであれ必ず置く必要があるということ。もうひとつは、取引先が動かす 3 つの状態は、置くかどうかも粒度も自社で決めてよいということである。前者を社内の都合で省くと法令の記録に穴が開き、後者を「あったほうが分かりやすいから」で増やすと、誰も動かさない列が増える。
4 条明示で先に決める日と、7 条記録で後から残す日
状態の設計をするうえで、いちばん取り違えやすいのが「期日」と「日」の関係である。取適法は同じ事柄について、発注時に決めて相手に伝えるものと、事実が起きてから残すものを別々に定めている。前者が第 4 条の明示、後者が第 7 条の記録で、規則もそれぞれ別にある[3][4]。後者に何をどう書くかは納品と検収の記録にまとめてある。
| 対になる事柄 | 発注時に明示する(明示規則 第 1 条第 1 項) | 起きたら記録する(記録規則 第 1 条第 1 項) |
|---|---|---|
| 納入 | 給付を受領する期日および場所(第 2 号) | 受領した給付の内容および受領した日(第 2 号) |
| 検査 | 検査をする場合は、検査を完了する期日(第 3 号) | 検査を完了した日、結果、合格しなかった給付の取扱い(第 3 号) |
| 代金 | 代金の額および支払期日(第 4 号) | 支払額・支払日・支払方法、増減額があればその理由(第 5 号・第 6 号) |
| 未定の項目 | 定められない理由と、定めることとなる予定期日(第 8 号) | 定められなかった理由、内容を明示した日、その内容(第 13 号) |
| 変更・やり直し | (明示の対象として置かれていない) | 変更・やり直しをさせた場合の内容と理由(第 4 号) |
この対応を状態に重ねると、役割分担がそのまま出てくる。期日は発注側が発注時に決めて相手に渡すもので、状態としては「確定」の時点で埋まっていなければならない。日は事実が起きたときに埋まるもので、状態を進める操作そのものが記録の行為になる。
いつ書くかについても規定がある。記録規則第 2 条第 1 項は、記載または記録はそれぞれの事項に係る事実が生じ、又は明らかになったときに、速やかに行わなければならないとしている[4]。月末にまとめて入力する運用は、この条文の想定と合わない。状態を進める操作をその場で行い、それが記録として残る形にしておくのが、いちばん近い。
あわせて、記録は 1 つの書類にまとめる必要はない。記録規則第 1 条第 3 項は、各事項をその相互の関係を明らかにして、それぞれ別の書類等に記載または記録することができるとしている[4]。検査記録は品質部門の帳票、支払記録は会計、というように分かれていてもよいが、その場合は発注 1 件と結び付いていることが分かる形にしておく必要がある。7 条記録に何を書いてどう 2 年保存するかは取適法が求める記録で扱った。
なお、条番号は 2026 年 1 月の施行で動いており、旧下請法の 3 条書面が 4 条明示、5 条書面が 7 条記録にあたる。社内の購買基本契約書や発注書の裏面約款、検査要領書に旧法の条番号が残っている場合は差し替えが要る。条文の対応関係と改訂箇所を一式で点検するなら法令・規格 改訂対応パック(中小受託取引適正化法)が使える。
「受領」を動かすタイミングは、こちらの都合では決められない
6 つの場面のうち、社内で最ももめるのが「出荷済み → 納品済み」である。検収が終わってから納品済みにしたい、という声が必ず出る。これは通らない。
取適法テキストは、製造委託または修理委託における「給付の受領」を、中小受託事業者の給付の目的物を検査の有無にかかわらず受け取り、自己の占有下に置くことと説明している[1]。検査を待つかどうかは関係がない。さらに、発注側の検査員が取引先の工場へ出張して検査を行う場合には、検査員が出張して検査を開始すれば受領となるとも書かれている[1]。物が自社の倉庫に入っていなくても受領が成立する場面がある、ということである。
同じ考え方は振興基準にも出てくる。経済産業大臣が定める振興基準は、納品の検査について、検査の実施にかかわらず当該目的物を自己の支配下に置いた日を受領日とすると明記している[1]。振興基準は受託中小企業振興法第 3 条第 1 項に基づくもので、同条第 2 項第 4 号は定めるべき事項として「対価の決定の方法、納品の検査の方法その他取引条件の改善に関する事項」を挙げている[5]。検査の方法は、行政が基準を示す領域として法律に書かれている。
状態の設計に翻訳すると、こうなる。「納品済み」は物が着いた事実であって、社内の承認が終わった事実ではない。検収印が押されるまで納品済みにしない運用は、支払期日の起算日を実際より後ろにずらすことと同じになる。
納期より前に届いたとき
例外的な扱いも定められている。取適法テキストの Q&A は、納期前に納品された場合、原則として納品された時点が受領日になるとしたうえで、中小受託事業者の要請に応じてあらかじめ定めた納期より前に納品を受けた物品について、これを仮受領として受け取った場合は、その時点を受領日とせずに納期を受領日としても問題ないとしている[1]。また、納期より前に検査を実施した場合は検査を終了した時点を受領日としてもよいが、検査中に納期が到来した場合には納期が受領日になる[1]。
ここで注意したいのは、仮受領という状態を置くなら、「誰の要請で仮受領になったのか」まで残らないと使えないということである。要件が「中小受託事業者の要請に応じて」なので、発注側の都合で早く届いたものを一律に仮受領にする運用は、この例外に乗らない。状態を 1 つ増やすなら、その状態に入った理由も一緒に持つ。
締め日で運用しているとき
月単位の締切制度についても、テキストは検収締切制度を採用する場合に触れている。検査に相当日数を要することがあっても、検査をするかどうかを問わず受領日から 60 日以内で、かつできる限り短い期間内に設定した支払期日に代金を支払う必要があることから、検査に要する期間を見込んだ支払制度とする必要があるとしている[1]。検収が遅れたぶんを支払期日で吸収する、という設計は成り立たない。締め日と支払期日の関係そのものは支払期日は受領日から 60 日で詳しく扱っている。
相手が動かさない状態を、催促で埋めない
取引先が動かす 3 つの状態は、実務でいちばん詰まるところでもある。受注確認が返ってこない、出荷連絡が来ない、という状況である。ここで督促の頻度を上げても長続きしない。相手にとってその操作は自分の業務ではないからである。そもそも発注書が相手のどこに届いているかは発注書の届け方で整理した。
設計として取れる手は 3 つある。
手 1:相手が動かせない状態は、そもそも置かない
取引先がシステムを使っていないなら、その取引先しか動かせない状態は空欄のまま残り続ける。受発注システムの中には、取引先側に利用者がいるかどうかを見て、利用者がいない取引先の発注では取引先しか動かせない区間を飛ばし、確定の操作だけで手配中まで進める作りのものがある。空欄を残して催促するより、状態の数を相手に合わせて変えるほうが現実的である。取引先が電子のやり取りに乗れない場合の考え方は取引先に「システムは使えない」と言われたときにまとめた。
手 2:発注側が代行し、代行だと分かる形で残す
取引先から電話やメールで連絡が来たとき、発注側がその状態を代わりに進める運用がある。このとき大事なのは、代行であることが履歴に残ることである。誰がどの状態からどの状態へ動かしたか、それが本人の操作か代行かが分かれば、あとから「聞いていない」の水掛け論にならない。逆に、代行と本人操作の区別が付かない記録は、取引先の確認を得た証跡としては弱い。
手 3:状態を進める操作と、相手の得になる操作を重ねる
納期回答を返すと自分の受注一覧が整う、出荷を登録すると納品書が出る、といった形になっていれば、相手は自分のために操作する。振興基準も、委託事業者は中小受託事業者に対する発注手続の事務の円滑化および明確化に努めるものとし、中小受託事業者の労働時間の短縮のため、その要請に応じて生産または配送システムの見直し等の取組を共同して行うよう努める、としている[1]。相手の手間を増やす方向の状態管理は、基準の想定とも合っていない。
調達現場で押さえるポイント
相手が動かさない状態を見つけたら、催促する前に「この状態は誰の役に立つか」を確かめる。発注側の管理にしか役立たない状態は、発注側が自分で埋めるしかない。そう決めてしまえば、少なくとも空欄は残らない。
自社が動かさない状態は、相手の不利益になる
逆の方向も見ておきたい。取引先が動かさないことは業務の停滞で済むが、発注側が動かさないことは、相手にとって金銭の話になる。
振興基準は、委託事業者の働き方改革が中小受託事業者へしわ寄せされる不利益な事例を挙げており、そのなかに委託事業者自らの人手不足又は長時間労働の削減による検収体制の不備に起因した受領拒否又は支払遅延が入っている[1]。検収を進める人がいない、という社内事情がそのまま不利益事例として名指しされている。同じ一覧には、無理な短納期発注に対する納期遅れを理由とした受領拒否又は減額も並ぶ[1]。
この基準に罰則は無いが、位置づけは弱くない。受託中小企業振興法第 4 条は、主務大臣が必要と認めるときは、中小受託事業者または委託事業者に対して、この基準に定める事項の指導・助言と、適切な具体的措置をとるべき旨の勧奨を行うものとしている[5]。
そして受領と検収が滞っても、支払期日は動かない。第 3 条は、検査をするかどうかを問わず受領した日から起算して 60 日の期間内かつできる限り短い期間内に支払期日を定めなければならないとし、第 2 項で、支払期日を定めなかったときは受領した日が、60 日を超えて定めたときは受領日から 60 日を経過した日の前日が、それぞれ支払期日とみなされるとしている[2]。状態が止まっている間も、期限だけは進む。
執行の実績で見ると
令和 7 年度の運用状況では、勧告 39 件、指導 8,261 件、原状回復は委託事業者 177 名から中小受託事業者 5,165 名に対して総額 25 億 5698 万円相当となっている[6]。勧告の対象となった違反行為類型の内訳は次のとおりで、1 件の勧告に複数の類型が計上される[6]。
| 違反行為類型(令和 7 年度・勧告 39 件の内訳) | 件数 | 状態との関係 |
|---|---|---|
| 不当な経済上の利益の提供要請 | 31 | 状態の外側の話 |
| 製造委託等代金の減額 | 6 | 検収から支払までの間で起きる |
| 返品 | 6 | 受領したあとに引き取らせる行為 |
| 不当な給付内容の変更等 | 1 | 確定後に内容を変える/やり直させる |
| 買いたたき | 1 | 確定より前の話 |
返品と不当な給付内容の変更等は、どちらも状態がある地点を過ぎたあとに、前へ戻そうとして起きる類型である。受領してから引き取らせれば返品、確定したあとに内容を変えさせれば変更、受領したあとに直させればやり直しになる。線がどこに引かれているかは受領拒否・返品・やり直しはどこまで許されるかで整理した。
取消しは、どの状態まで戻せるか
状態の設計で必ず決めることになるのが、取消しをどこまで認めるかである。決め方は 2 つの制約に落ち着く。ひとつは出荷済み以降は取り消せないこと。もうひとつは取消しは発注側しかできないことである。取り消せる範囲と、取り消したときに誰が費用を持つかは発注の変更・取消はどこまで許されるかで詳しく扱っている。
前者の理由は法令の側にある。取適法第 5 条第 1 項第 1 号は、中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに給付の受領を拒むことを禁じている[2]。出荷されたあとに発注を取り消せば、届いた物を受け取らないことになりかねない。第 5 条第 2 項は、責めに帰すべき理由がないのに給付の内容を変更させ、または受領した後に給付をやり直させることを、中小受託事業者の利益を不当に害してはならない行為の 1 つとして第 3 号に挙げている[2]。つまり、状態が進むほど発注側が単独でできることは減る。システムで取消しを止めているのは操作ミス対策ではなく、法令上できないことを操作でもできなくしていると読むほうが実態に近い。
後者、取消しを発注側に限る理由は、取引先が勝手に取り消せると発注そのものが無かったことになり、4 条明示との対応が付かなくなるためである。取引先が受けられないときは、取消しではなく、発注側に断りを入れて発注側が取り消す。この順序だと、7 条記録に残る「発注した事実」と「取り消した事実」が両方そろう。
なお、発注後に納期が守れなくなる原因が発注側にあることもある。振興基準は、発注後における発注内容の変更、追加発注、支給材の支給の遅延等によりあらかじめ定めた納期が中小受託事業者にとって無理なものとなった場合には、中小受託事業者の不利益にならないようその納期を変更する等の措置を講ずるものとしている[1]。納期を動かさずに状態だけ「遅延」にする運用は、原因が自社にあるときには成り立たない。
状態を細かくしすぎると何が起きるか
状態は多いほど正確になりそうに見えるが、増やすと確実に 3 つの問題が出る。
第一に、動かす人がいない状態が生まれる。「検査待ち」と「検査中」と「検査完了」を分けると、「検査待ち」から「検査中」へ動かす人が誰なのかが決まらない。検査を始めた瞬間に操作する人はいないからである。動かす行為が業務のどこにも対応していない状態は、置いた時点で古くなることが決まっている。
第二に、同じ事実が 2 か所に入る。「入荷登録」と「受領」を別に置くと、どちらが受領した日なのかが分からなくなる。取適法が求めているのは受領した日であって、社内の入力日ではない。2 つ置くなら、どちらが法令上の受領日かを決めておかないと、後から検査を受けたときに説明できない。
第三に、記録の相互関係が説明できなくなる。記録規則は各事項を別の書類等に分けて記録することを認めているが、その場合は相互の関係を明らかにすることを条件にしている[4]。状態を細かく割って複数の帳票に散らすほど、この条件を満たす手間が増える。
粒度を決めるときの問いは 3 つでよい。外形的に確認できる事実か。動かす側が一人に決まるか。法令か契約で意味を持つか。3 つのうち 2 つ以上が「いいえ」なら、その状態は独立の状態ではなく、備考欄で足りる。
役割分担を決めるときの 5 つの問い
状態の一覧を作る前に、社内で答えを持っておく項目を挙げる。ここが空欄のまま一覧を配ると、運用が始まってから同じ議論を繰り返すことになる。
問い 1:受領した日を、誰が、どの操作で入れるか
支払期日の起算日になる日である[2]。倉庫の入荷担当か、検査部門か、購買か。出張検査をする品目があるなら、検査を開始した時点が受領になる場合があることも含めて決めておく[1]。
問い 2:検査を完了する期日を、発注時に出せているか
検査をする場合は、その期日が 4 条明示の記載事項である[3]。品目ごとに検査の要否と所要日数が決まっていないと、この欄は埋まらない。受入検査と工程検査の役割分担は受入検査と工程検査の違いで扱っている。
問い 3:不合格分の取扱いを、どの状態で表すか
検査の結果と、合格しなかった給付の取扱いは記録事項である[4]。一部合格のときに発注 1 件を「検収完了」にしてしまうと、残りの扱いが記録から消える。行単位で状態を持つのか、備考で持つのかを先に決める。
問い 4:取引先が動かす状態に、動かす手段があるか
相手が見られない画面の状態は、相手が動かせない。手段が無いなら、その状態は発注側が代行するものとして設計し、代行であることが残る形にする。
問い 5:取消しと差し戻しを、誰がどこまでできるか
出荷済み以降の取消しは、受領拒否の問題になりうる[2]。状態を前に戻す操作を認めるなら、誰が・どの範囲で・どんな理由で戻したかが履歴に残ることが前提になる。
よくある質問
検収が終わるまで「納品済み」にしない運用は問題がありますか
社内の表示としてどう呼ぶかは自由ですが、支払期日の起算日を検収日にすることはできません。取適法第 3 条は、検査をするかどうかを問わず受領した日から起算して 60 日以内に支払期日を定めなければならないとしています[2]。取適法テキストも、製造委託・修理委託における給付の受領を、検査の有無にかかわらず受け取り自己の占有下に置くことと説明しています[1]。振興基準も、検査の実施にかかわらず自己の支配下に置いた日を受領日とすると明記しています[1]。したがって、検収の状態を別に持つのはかまいませんが、受領した日そのものは物が着いた時点で記録する必要があります。
取引先が受注確認を返してくれません。発注は成立していないのですか
取適法の義務は、取引先の確認とは切り離されています。第 4 条第 1 項は、製造委託等をした場合は直ちに給付の内容・代金の額・支払期日および支払方法その他の事項を明示しなければならないとしており、相手の確認を条件にしていません[2]。したがって、確認済みという状態は自社の管理のために置いているものです。返ってこないことが常態なら、その状態を発注側が代行して進めるか、置かないかを決めたほうが、催促を続けるより実務が回ります。
出荷した日は記録しなくてよいのですか
記録規則第 1 条第 1 項が挙げる日付に、取引先が出荷した日は含まれていません[4]。含まれているのは、製造委託等をした日、給付を受領する期日、給付を受領した日、検査を完了した日、支払をした日などです[4]。ただし法令が求めていないことと、業務上要らないことは別です。出荷日は納期遅れの原因を切り分けるうえで役に立ちますし、契約で報告を求めることもできます。法令の記録と業務の記録を分けて考えると、どちらを必須にするかの判断が付きます。
状態の更新を月末にまとめて行っています
記録規則第 2 条第 1 項は、記載または記録は、それぞれの事項に係る事実が生じ、又は明らかになったときに、速やかに行わなければならないとしています[4]。月末にまとめる運用は、この規定の想定と合いません。特に受領した日は、後から思い出して入れると実際の日付とずれやすく、ずれた日付は支払期日の計算をそのまま狂わせます。
受領と検収を 1 つの状態にまとめてはいけませんか
まとめると、受領した日と検査を完了した日が同じ日になります。両方とも記録事項なので、実際に同じ日であれば問題はありません[4]。ただし検査に日数がかかる品目でこの形にすると、受領日が実際より後ろにずれるか、検査完了日が実際より前になるかのどちらかが起きます。検査に相当日数を要する場合について、取適法テキストは検査に要する期間を見込んだ支払制度とする必要があるとしています[1]。日数がかかる品目では分けるのが安全です。
取引先が状態を動かした記録は、7 条記録として使えますか
7 条記録の作成・保存義務は委託事業者、つまり発注側にあります[2]。取引先の操作をそのまま自社の記録にできるかではなく、記録規則が求める事項が自社の記録として残っているかで判断してください。また電磁的記録で残す場合は、訂正・削除の事実と内容を確認できること、画面表示と書面出力ができること、中小受託事業者を識別できる事項と発注日の範囲指定で検索できることが要件になります[4]。
まとめ
発注してからの状態が分からないのは、状態が足りないからではなく、動かす人が決まっていないからである。発注 1 件が進む場面は 6 つで、発注側が動かすのが 3 つ、取引先が動かすのが 3 つ。そのうち取適法が日付を求めているのは、製造委託等をした日・受領した日・検査を完了した日という、いずれも発注側の行為の日である[4]。受領した日は支払期日の起算日で、検査をするかどうかを問わない[2]。
したがって設計の順序は決まっている。まず、発注側が動かす 3 つの状態を、誰のどの操作で動くかまで決める。次に、取引先が動かす状態は、相手に手段があるかで置くかどうかを決め、無ければ代行する前提で作り、代行だと分かる形で残す。最後に、それ以外の状態は「外形的に確認できるか」「動かす側が一人に決まるか」「法令か契約で意味を持つか」の 3 つで足すかどうかを判断する。
自社が動かさない状態は相手の不利益になり、振興基準は検収体制の不備に起因した受領拒否や支払遅延を不利益事例として挙げている[1]。状態が止まっている間も、支払期日だけは進む。役割分担を決めるというのは、突き詰めれば、止まったときに誰が困るかを先に決めておくことである。
出典・参考資料
- 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
- 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
- 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
- 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第七条の書類等の作成及び保存に関する規則(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
- 受託中小企業振興法(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
- 令和 7 年度における取適法の運用状況及び中小事業者等の取引適正化に向けた取組(公正取引委員会/令和 8 年 6 月 10 日)
いまどちらの番かを、電話で聞かずに済ませる
Newji one は、製造業の見積依頼から発注までをひとつにまとめる受発注プラットフォームです。発注 1 件ごとに、いま動かすのが自社なのか取引先なのかを状態から判定して表示し、進める操作はそのまま履歴に残ります。誰がいつ、どの状態からどの状態へ動かしたかが記録されるので、受領した日や検査を完了した日を後から思い出して入れる必要がありません。取引先にアカウントが無い発注では、取引先しか動かせない区間を発注元が代わりに進めることができ、その操作は代行として履歴に残ります。取引先はアカウント登録をせずに、届いたメールのリンクから見積に回答できます。登録から 14 日間はクレジットカードの登録なしで全機能を試せます。
この記事の理解を深める
無料ホワイトペーパーをプレゼント
製造業の現場で使える実務資料(PDF)を無料でお届けします。"こんな資料が届きます" ↓ 下のボタンからどうぞ。
PRODUCT — 製造業向け 調達・受発注クラウド
この記事の課題、
Newji one で解決しませんか?
Newji one は、製造業の調達・受発注に特化したクラウド/AIエージェント。見積依頼・発注書作成・進捗管理・承認をひとつの画面に集約し、AIが比較と異常検知を担当。最後の「GO」だけ人が押す仕組みです。
- 見積〜発注〜納期を一元管理。催促・転記のムダをゼロに
- AIが相見積もり比較と異常検知。あなたは判断だけに集中
- 取引先は「招待」で完全無料。自社コストだけで取引先ごとデジタル化
※ 取引先から招待された企業様は完全無料でご利用いただけます
